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青山恵世さん語る!   第二部「医療とアート」

第一部「茶杓」 ► 

青山恵世さん
 

◎青山恵世(あおやまえせい)さん プロフィール

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茶杓作家、社会福祉法人役員。
Meets Art Clubメンバー。
1972年2月29日、広島県生まれ、魚座、O型。
東京在住。






 

青山恵世さん、別の視点から「医療とアート」を語る…

月刊宮島永太良通信編集部(以後M):前半の茶杓とは、全く違う後半の話題「医療とアート」についてうかがいます。  さて、最初の質問ですが、青山さんの現在の仕事の内容と立場を教えてください。
青山恵世さん(以後A):現在は社会福祉法人の役員として、施設の運営や管理に携わっています。

施設外観

M :基本的な質問です。 社会福祉法人とは何でしょう?
A :社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として、設立される法人のこと。  地域社会において、各種の社会福祉サービスを提供し、地域福祉の充実と発展、つまり公益を目的とした民間組織です。  福祉サービスの対象者は、高齢者、児童、障害のある方など、生活する上で何らかの支援を必要とする方。  このように福祉サービスの対象は広範囲ですが、それぞれの社会福祉法人によって、高齢者福祉中心、障害者福祉中心といったように専門化する場合があります。  また、利益を目的としていないので、法人税上では公益法人等であり優遇措置があります。

M :青山さんが携わっている施設は?
A :「介護老人施設」になります。  まず、要介護認定を受けた人が利用でき、常に要介護状態で自宅での介護が困難な方や、寝たきりや認知症などの方々が入所し利用される「介護老人福祉施設」(「特別養護老人ホーム」と同意)、病状が安定していて入院治療の必要がなく、要リハビリテーションの方々が利用される「介護老人保健施設」、それに2015年には、内科の専門医を中心に、人工透析もできるクリニックを開設したので、介護と医療二分野の福祉サービスをご提供できる施設に携わっています。

人工透析室

M :現在、施設内でアートはどのようなポジションですか?
A :診療室をはじめ施設内には絵を展示していますが、それだけではなく、定期的に茶人の小笠原聖誉さんを招き、ロビーでお茶会を開いています。

M :お茶会ですか?
A :私の作った茶杓を使い、色々な作家さんが寄付してくれた茶器を用いてお茶を点て、入所者の方々と和菓子などで季節を感じながら楽しいひとときを一緒に過ごしています。  絵画鑑賞とは違いますが、お茶もアートだと思います。  春には、ロビーに大きな桜を活けていただき、その下でお茶会を開き、皆さまと良い時間を共有できました。

M :単に見るだけでなく、お茶会は参加型のようですね。
A :以前、宮島さんの勉強会「未来への医療とアート」で、バイオリンの流しているシーンの映像を見ましたが、お茶会は音楽会に近いかもしれません。  お茶をいただきながら、五感で味わう体験型のアートと言えるのではないのでしょうか。  評判は上々です(笑)。

M :ご年配の方々も、お茶という非日常の行為で良い感じの刺激を受けそうですね。  ところで絵の展示に関してはいかがですか?
A :絵などの平面作品も良いです。  こうした施設に入っているお年寄りは外に出る機会が少ないので、季節の移ろいがわからなくなってしまいがちです。  だから、施設内に季節ごと、イメージに沿った絵や写真を展示できるようになれば、入所者が四季を感じられるようになり良いのかなと思います。

青山恵世さん

M :青山さんのお話を伺っていると「医療とアート」には、色々な方法があると思い至ります。
A :私は自分が携わっている施設があるので、それをベースに考えると、将来における医療分野でのアートの可能性が色々考えられますよ。

M :例えば?
A :入所者向けの作品展示は大切ですが、アーティストには、それだけでなく見舞客にも見てもらうことを考えていただきたい。  つまり、こうした半公共的な施設を、美術館や画廊の代用と考え、作品やアートそのものをアピールする場として活用してもらいたいのです。  そうした存在があれば、アートへの関心が違う場所から高まり、見る機会がなかった人も、それを機に画廊や展覧会に足を運ぶようになるかもしれません。  そうなれば、アートに親しむ方々が、今以上になると思います。

入所者向けの作品展示

M :病院や施設内でのアートの存在はもちろん大切だけど、留まることなく、そこを起点にして社会に向けて広がれと、いうことですね。
A :はい、それに加えて施設内だけでなく、外でアートをアピールする手段も考えられます。

M :えっ、どのように?
A :例えば施設への送迎バスです。  単色で無個性な外観では面白くないから、アーティストに何か描いてもらえば、それだけで見て楽しい車体になると同時にアーティスト自身のアピールにもなります。  加えて、その絵は企業広告も可能なので、うまく優良スポンサーがつけば、経済的なバックアップも期待できるのではないのでしょうか。

M :青山さん、ユニークな見解ですね。  そのように視点の違う考えは、どこから来るのですか?
A :先程、少し触れましたが、社会福祉法人に身を置いているからだと思います。  アーティストと見方が違い、「自分たちの場所を少しでも良くしたい、『弱者救済』の意味を持つ社会福祉法人をみんなにも手伝ってもらいたい!」という気持ちが、強いからではないのでしょうか。  そのためにアートは大きな力を持っているはずです。  だからこそ、違うアイデアを思い付くのかもしれません。  何にせよ、これからアートは医療や介護の現場で重要な存在になると思います。

M :今日は、貴重なご意見をありがとうございました。  またの機会を楽しみにしています。

 
送迎バスの前で青山恵世さん
 
(構成・写真 関 幸貴)
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