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青山恵世さん語る!   第一部「茶杓」

 
青山恵世さん花まつり展で宮島と
 

◎青山恵世(あおやまえせい)さん プロフィール

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茶杓作家、社会福祉法人役員。
Meets Art Clubメンバー。
1972年2月29日、広島県生まれ、魚座、O型。
東京在住。




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青山恵世さん、「茶杓」との出会い、その可能性を語る♪

月刊宮島永太良通信編集部(以後M):今回は、2つのテーマで青山さんにお話をうかがいますが、最初は茶席でお世話になる*「茶杓」の作り手としての思いをお聞かせください。  茶杓との出会いはいつ頃でしたか?
青山恵世さん(以後A):10年程前からお茶を習っているのですが、7〜8年前に井関宗修(いせきそうしゅう)先生に初めてお会いした時、茶道における茶杓の存在理由を、より深く知るために茶杓作りの手ほどきを受けました。

素材

M :初めての茶杓作りはいかがでしたか?
A :私の琴線に触れたのかもしれませんが、何故か作るのが面白くて、その日は、帰宅してから食事もとらず、眠らずに茶杓作りに没頭しました。

M :どこにそれほど魅力を感じたのでしょう?
A :困ったことに、それが今でも私自身わからないのです。

M :では、子どもの頃から図画工作や物作りは得意だったのですか?
A :茶杓作りをするようになってから「青山さんは手先が器用ですね」と言われますが、全然器用ではなく、子どもの頃、普通にプラモデルを作りましたが、物作りは得意ではありませんでした。  だから、自分自身でも理解できない心の奥底で竹や木を削って作る茶杓の面白さを感じていのかもしれませんね。

M :茶杓で「花まつり」などのグループ展にも参加されていますが、これまでに何本ぐらいお作りになったのですか?
A :200本位じゃないでしょうか。  茶杓作りに魅力を感じたもののそんなに多くは作っていません。  本格的に作り始めたきっかけは、6年前にあるグループ展を皆で始めたことでした。

グループ展花まつりで

M :そのグループ展とは?
A :私もグループ発足時のメンバーで、宮島永太良さんにもお力をいただき2012年7月、第1回を銀座のJトリップアートギャラリーで開催した「アトビバ展」です。  「アトビバ展」は「アート、ビバ」や「遊び場」の意味。  プロアマ問わず、絵画、陶芸、伝統工芸から音楽の生演奏、ひとり芝居のパフォーマンスまで様々なジャンルの作家さんが参加。  作品は展示販売され、収益の一部は「公益財団法人みちのく未来基金」(東日本大震災遺児たちの進学支援活動を行う団体)に寄付されてきました。  6回目を迎えた今でこそ参加者も増えましたが、初回はメンバーも少なく、事務局長だった私も出品せざるを得ませんでした。  それで、当時パールのネックレスの制作も習っていたので、その作品と茶杓を出品しました(笑)。

M :考えもしない展開です。  「アトビバ展」では、どんな茶杓を展示したのですか?
A :3点出しました。  茶杓は私の作ですが、それを収める筒には、知り合いのアーティストにお願いして、その方の思いを表現していただき、「銘」を付けていただいてから展示をしました。

茶杓作品

M :3名のアーティストはどなたですか?
A :絵を描いていただいたのは、陶芸家で料理研究家カズコ・ロッシュさん、宮島永太良さんのお二人、残る一つは俳句で、私の兄の作品です。

M :筒に絵を描くのは、従来からの手法ですか?
A :いいえ、私が始めたと言えます。  そして、それを「筒画」とよんでいます。

M :えっ、そうなのですか!  「筒画」についての質問は、この後に触れますが、「銘」とはなんでしょう?
A :私が作った茶杓を、そのまま茶席で使うことは、私に頭を下げさせることになり失礼にあたるので、必ず和尚様に「銘」を付けていただきます。  それを経て、茶席で使えるようになるのです。

M :どなたに「銘」を付けてもらうのですか?
A :代表的なのは、お茶で有名な京都/大徳寺の和尚様です。

京都

M :やはりお茶は深いですね。  ということは別の視点で見ると、青山さんの茶杓は個人というより、他のアーティストとのコラボレーション作品と言えますね。
A :はい。  私の作品には「銘」、「アーティスト名」、「青山恵世」の3つが必ず記されるので、そうなります。

M :アーティストとのコラボレーションで気を使うことはありますか?
A :基本的にはありません。  私は筒をお渡しして、そこに絵を描いていただき、それと合う茶杓を作ることに専念するだけですから。

M :少し話を戻します。  これまで誰もしなかった筒画を入れ始めた青山さんのお気持ちは?
A :絵を入れることでお茶をしている方々からは一定程度の反発、賛同も得ました。  しかし、茶席にこれまでとは違う風が吹く気がしたので、私としては挑戦してみたかったのです。  昨秋、南青山で行われた井関先生の古希を祝う二人展でも、私は中西達彦さんや池田元気さんとのコラボ作品を展示しましたが、共作だからこその喜びがありました(笑)。

青山恵世さん

M :将来的にはいかがですか?
A :振り返ってみれば茶杓は、時代に引き継がれている存在。  私が作っている筒画のある茶杓もそうなる訳で、将来的には制作された時代の爪痕を残し、未来の方々に過去のアートの片鱗を見せる存在になると思いますよ。  だから、何百年後かに、過去の遺産である筒画が見られる茶会が催されているのを想像しただけで楽しくなります。  そう、お茶がなくならない限り、筒画は残りますからね(笑)。

M :素敵な茶杓のお話ありがとうございました。  後半もよろしくお願いいたします。

続く

 

「茶杓」:お茶を点てるのに使用する茶道具のひとつ。抹茶を茶器からすくって茶碗に入れるための匙。普段は筒に収められており、筒には「銘」(その茶杓に付けられた固有の名前)を記す。

(構成・写真 関 幸貴)
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