TOPTalk : 対談

コロナ禍、横田三良さんと日本の農を考えた…   前編

横田三良(よこたみつよし)さん
 

横田三良(よこたみつよし)さんプロフィール

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米農家、クレーンオペレーター
1964年 茨城県取手市生まれ、蠍座。
1984年 東京デザイナー学院 インテリアデザイン科卒業。
取手市と龍ケ崎市に大小12ヶ所に点在する田んぼ(総面積
4町弱=東京ドーム約3個分)を営む米農家4代目。
アーティスト/シモン楽騎(アキラ)さんや宮島永太良とは
旧知の仲。トローリング(海釣り)、スキー、音楽美術鑑賞
から骨董品収集などアウトインを問わず多趣味の持ち主。
小型船舶1級免許所持。

 

2020年コロナ禍の米作りを横田三良さんが語った!

横田三良さん


月刊宮島永太良通信編集部:
(以後M):今日はよろしくお願いします。まずお尋ねしたいのは、世界中がコロナで大変だった2020年の横田さんのお米の出来はいかがでしたか?
横田三良さん(以後Y):振り返れば、家族連れでたくさんの子どもたちが参加する「田植え体験会」が中止になったぐらいで、ウチの最終的な収穫量は一昨年とあまり変わリませんでした。また日本国内の総生産量も前年産から3.6万t減の722.5万tですから、平年並みと言えると思います。ただ、農林水産省のホームページを見てもらっても分かりますが、米の取引価格はかなり安くなってしまいました。

M:どれくらい安くなりましたか?
Y:毎年、基本的に米は玄米60kgで相対取引価格を決めるのですが、ウチの米は一昨年15,000円だったのが、昨年は大幅2,000円ダウンの13,000円になってしまい、ただただ驚くしかありませんでした。

M:何故安くなったのでしょう?
Y:詳しくは分かりませんが、コロナの影響で飲食関係が駄目、また海外からの観光客激減で、米の消費が減ったのが一因だと思いますが、やはり需要と供給のバランスの問題でしょう。さらに驚いたのは、10月16日に農林水産省は食料・農業・農村政策審議会食糧部会で、2021年産の主食用米の適正生産量は20年産より50万t少なくするなどの基本指針を諮問、部会では「衝撃的な数字」の意見も出たけれど、答申は諮問通りだったそうです。これは作付け面積にすると約10万haの削減になり、過去に取り組んだことのないすごい転作面積となります。

 
コレクションのラジオ

M:2021年、日本の米作りは大変な事態を迎えたのですね。コロナ情報は溢れていても、他の大切な情報がなかなか我々に届かない現状も問題です。他に米生産者として日頃から考えていることがあればお伝えください。
Y:まず農薬のことかな。僕は小学生の頃から同級生に農薬の話をしたり、若い時にはガールフレンドとレストランでの食事中にも話題にしてきたから、かなり身近な問題。で、知っておいてもらいたいのは農薬とは、農作物や観賞用植物など人が育てている植物に発生する害虫や病気を退治したり、雑草を除いたりするために使われる薬剤などのことです。僕が幼かった今から50年近く前は、ヘリコプターで農薬散布をしていたけれど、それで田んぼからザリガニとかドジョウが一気にいなくなったから、かなりの衝撃を受けました。それ以前、母が若かった頃はもっと強い農薬を使っていて人にも影響があったから、取扱いもかなり大変だったそうですよ。

M:最近の農薬散布はどうですか?
Y:今は個人に委ねられていてウチの田んぼにはザリガニは帰ってきました。それから一昨年くらいからはドローンでの農薬散布が行われていて、これからはそれが主力になりそうです。

 
自室にて

M:農薬散布、横田さんはどうしているのですか?
Y:僕は省農薬の米作りを心掛けているので、年1回だけ田植え機のに薬剤散布機に粒剤をセットして行っていますが、散布するのは除草剤だけです。

M:では、虫害はありますか?
Y:昨年、ウチはカメムシの被害を受けたけれど、近隣の農家さんでもっとひどかったと聞きました。どうも虫が地区を移動していたようです。

M:あの臭いカメムシですか!対処法は?
Y:カメムシを退治するために殺虫剤を使う農家さんもいますが、自分の体にも付く可能性があるので、ウチは使っていません。

 
ニッパー犬

M:カメムシがお米を食べるとどうなるのですか?
Y::省農薬のお米ほどよく起きるのですが、稲の中のお米がまだ柔らかい時にカメムシが食べると変色して黒くなってしまいます。食べられないわけではないけれど、見た目が良くないから、僕が個人的に売っているお米に関しては、広げて目立つヤツは取り除いています。まぁカメムシはそんな感じですが、それより恐ろしい害虫が日本に飛来したようです。

M:それより恐ろしい害虫?
Y:一昨年から南北アメリカ原産の農業害虫で、とうもろこし、さとうきび、野菜類等、80種類以上の作物に被害を与え、1世代で500km、1晩で最大100km移動するなど長距離飛翔することが知られているツマジロクサヨトウ(ガの仲間)が日本に入り込み、2019年末までに西日本を中心に21府県で発生が確認、農林水産省は蔓延防止の対策を実施しているそうです。とにかく葉っぱごと食べちゃう害虫だから、既に中国ではかなり被害にあっているみたいです。

M:虫害、恐ろしいです。心配しなければいけないことはコロナだけではありませんね。
Y:それ以上に大変なのが最近の異常気象です。とにかく気候がおかし過ぎます。この辺り、今年に入って雨が降らないからハウスで野菜を栽培しているのは良いけれど、露地で作っている農家さんは大変です。

 
横田三良さん

M:異常気象のお米作りへの影響は?
Y:ここのところ毎年、稲刈り時期はヒヤヒヤです。秋になれば台風は来るので覚悟しているけれど、最近はその通常レベルではありません。ここ10年の温暖化で平均気温はさらに上がりそうだから台風も半端ない大きさになって予測不能。昨年の集中豪雨もすごく、ひどいところは稲がベタって倒れてしまい苦労したようです。ウチの田んぼもほとんど倒れたけれど、まだ機械で刈り入れができたので助かりました。だから、異常気象下での米作をどうして行くかが、僕にとっては大問題です。

M:横田さんのお話を伺っていると、我々は未来のために生命の源である農業についてきちんと向き合わない時にきているのかもしれませんね。
Y:次は、「これからの農」について語り合いましょう。

 

後編に続く…

  

*2021年1月10日取材

 

(構成・写真 関 幸貴)

 
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