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Road : つれtakeロード

 

浜松

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早咲きの桜が満開となった3月末、宮島永太良は静岡県西部の都市・浜松を訪れた。浜松市は静岡県最大の都市であり、2007年には近隣の市町村と合併し、政令指定都市となった(2022年現在、県庁所在地の静岡市の人口は約68万人、浜松市の人口は約78万人)。
浜松市にはヤマハ、河合、日本楽器などの楽器メーカー、そしてスズキ、ホンダなどの自動車メーカーの会社、工場があることで、楽器と自動車の街としても知られている。

浜松
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そんな街を象徴するように、JR浜松駅を降りると、駅構内には誰でも弾けるピアノディスプレイがあり、また懐かしいスズキアルトの展示もある。加えて、街中のいたるところに楽器をモチーフにしたデザインが目立ち、駅南口近くの公道には、ピアノをイメージしたユニークなベンチの姿が見られる。

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浜松市で最も高い建造物であるアクトタワーは、地上45階、高さ212.77メートルを誇るが、ビル自体はなんとハーモニカの形をモチーフにしているという。宮島もかなり前から見ていたビルではあったが、そう聞くと新たな発見に感動する。このタワーはホテルにもなっているが、そのロビーらしきところに、これもユニークなデザインをしたヴァイオリンの彫刻があった。ピカソやブラックが描いたキュビスムの造形を連想させる。またアクトタワーを中心とした一帯は「アクトシティ」という施設で、コンサートホールや楽器博物館もあり、音楽の街・浜松を象徴している場所だ。

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JR浜松駅に隣接する形である新浜松駅は、遠州鉄道の出発点である。高架の駅が続く沿線は、モノレールを彷彿させるが、通常の鉄道である。新浜松から2つめの遠州病院駅は、浜松城の最寄り駅である。城の最寄り駅にもかかわらず病院の名が付いているところに、この病院の歴史が表れている。昭和13年設立という、浜松でも「老舗」の病院ということだ。

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そしてしばらく歩くと浜松市役所の向こうに浜松城天守閣が見えてくる。浜松城は、もともと引馬城という名であったが、徳川家康が岡崎城を嫡男・信康に譲ってからこちらへ移り居城とし、名も「浜松城」とあらためられた。今年の大河ドラマの主人公だけに、この日も観光客があとを絶たない。そしてこの日は絶好の花見日和でもあったからなおさらであろう。

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そう言えば、駅にも、街中にも、オリジナルキャラクター「家康くん」の姿があちこちにある。大河ドラマでも感じさせる親しみやすい家康がよりビジュアル化されたと姿と言える。家康の子は全部で16人いたと言われるが、そのうち2代将軍・秀忠を含む5人がこの浜松で生まれている。日本史上屈指の名君・徳川家康の歴史は、この浜松抜きには語れない。

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浜松の隣駅、高塚駅の近くには、スズキ歴史館がある。自動車メーカーのスズキが、自社製の自動車、バイクを中心にしながら、その歴史を紹介するミュージアムである。知っている人にとってはお馴染みかもしれないが、スズキはもともと織機を作る会社としとスタートした。創業社長、鈴木道雄氏の工夫と努力が、1909年の織機に始まり、1955年の日本初の軽自動車スズライトの開発に繋がって行くのがよくわかる。宮島はかつて、このスズライトの後継軽トラック、キャリイの絵を描いていたことを思い出した。

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そして浜松といえば浜名湖。普通、湖というと、海から長い川を進んで行き着く(水の動きからいうと逆だが)ものが多いが、この浜名湖は海から直接水が流入したような形をしている。そのため、淡水と海水が混ざった「汽水湖」となっている。そして何よりうなぎの産地として名高い。

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思い出してみれば宮島も、この浜名湖を題材とした絵を過去に描いており、その絵が発端となり「浜松の鰻展」という個展にまで発展してしまった。子供のころ、新幹線が浜松に停車すると入ってきた鰻弁当を食べたことがあり、それを前にした時の浜名湖の景色が忘れられず、絵に表現してみたかったのだ。鰻も好物の一つである宮島は、今回も本場の蒲焼を久々に食してみた。
空と湖に囲まれたこの場所で時を過ごせば、彼方に見えるアクトタワーから、ハーモニカの音色が聞こえてきそうだ。

(文・写真 宮島永太良)

 
 
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