TOPTalk : 対談

Art Lab TOKYOで菅間圭子さんがコロナ禍の生活を宮島永太良に語った…

菅間圭子さんと宮島


◇菅間圭子(かんまけいこ)さんプロフィール  
菅間圭子はインスタレーションやパフォーマンス、写真、絵画、映像、サウンドといったメディアで制作し、1997年からはヨーロッパ、アメリカ、カナダ、アフリカ、日本などのアート/パフォーマンス・フェスティバルにたびたび招待出品。欧米やアジア各所の街でとらえた「アート」を感じさせる瞬間をカメラによって切り取るコンセプチュアルな「’Ready-Made’Phenomena」シリーズのほか、具象と抽象のキワをゆく絵画なども。2007年ニューヨークで個展。京都の寺や奈良の平城宮跡での野外展示、渋谷ヒカリエなどでも数回展示。2019年3月には米国・イーストンで2人展(IF Museum)。アートラボ・トーキョーのディレクターとしてキュレーションも。2020年東京都の「アートにエールを」企画で、無観客ライブにて行ったサウンドと映像とライブペインティング作品「BEYOND COVID-19」が選出された。2021年東京ビエンナーレ「優美堂再生プロジェクト・にくいほどやさしい千の窓展」出品。
BEYOND COVID-19 → https://www.youtube.com/watch?v=tVZHoez3V2U

 

コロナ禍、菅間圭子さんの日常生活と作品制作は…

菅間圭子さん


宮島永太良
(以後Q):今日はよろしくお願いします。菅間さんにお会いするのは、今年1月のアートバースディ以来だと思いますが、お元気そうで何よりです。さて最初の質問ですが、2年目も終わろうとしているコロナ禍での動きについてお聞かせください。まず日常生活で何か変わったことはありますか?
菅間圭子さん(以後A):コロナ禍、私は徹底して他者との接触を避けていたので、興味深い美術展で中止にならなかった2020年開催の横浜トリエンナーレ、今年、東京国立博物館で開催された特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」にも自発的に行かなかったのはとても残念に思っています。

Q:コロナ禍での外出方法は?
A:電車は使わず、もっぱら車と徒歩での移動になりました。今日も自宅からここまで車を運転してやってきました。あと2〜3駅は平気で歩くようになりました。

Q:外出した時の街の印象は?
A:そもそも外出を極端に避けていたので、街中の変化に関してあまり承知していません。でも、時期や場所にもよっては人通りは確かに少なくなっていた印象は受けますね。また、アートラボ近辺のお店が変わった感じはします。飲食店もそうですが、細々と営業していたような小さな小売業のお店がなくなり、別のお店が開店するという現象を多々目にしました。

菅間圭子さんと宮島

Q:個人的には何か?
A:以前はショートカットにしていましたが、密が怖かったので美容院に行けず、コロナ禍になって初めて行ったのは1年3ヶ月後でした。その後、もう一度行きましたが、実はコロナ禍になってから一部分だけ伸ばしていて、コロナが終わったら、髪を切るパフォーマンスをしようと考えています(笑)。

Q:それはユニークな企画ですね。是非私も拝見したいです。さて、話は変わりますが、どんなメディアからコロナ情報を入手していましたか?
A:ネットニュース、テレビ、厚生労働省など公式機関の発表などです。特にコロナに関して特化した情報を海外の医療雑誌や論文から紹介しているyoutuberの医師の情報は、様々な状況を確認するうえでしばしばチェックしていました。しかし、ネットの一部には驚くほど無知なCOVID-19に関する、あるいはワクチンに関する陰謀論が渦を巻いていて、愉快犯とか再生数稼ぎとして看過できないものも多くあり、普段はネットの情報の精度にはあまりこだわらず距離を取るに留めていましたが、あらためて情報の質を見直すきっかけにもなりました。

菅間圭子さん

Q:コロナ禍での日常生活を送りながら、新たに考えたことはありますか?
A:ペストが中世ヨーロッパの社会変質を引き起こし、新しい時代へと進んでいったきっかけとなりましたが、今回のパンデミックはどのような社会変革を引き起こすのか、注意深く観察していきたいと思います。あとマスクですが、感染症の予防にもなるし、女性はお化粧を簡単に済ませることができるので、これは今後も習慣として残しても悪くないと思います(笑)。

Q:コロナ禍でテーマや作品制作に変化はありましたか?
A:予定していた展覧会が、自分がキュレーションを担当しているものもふくめていくつも中止を余儀なくされましたが、逆に平時とは違うペースで、今までの自分の活動を統括したり、今後の作品の方向を絞ったり、といった、忙しい時にはできなかった作業ができたのは良かったかな。

Q:コロナ禍を経験しながら、どのような作品が出来上がりましたか?
A:意外な作品シリーズが一つできました。それは風景画のシリーズで、パンデミックの時期に撮った風景写真を普通に油彩の風景画にして、そこに時期の情報を付加する体裁のもの。例えば「Early Spring, 2020 PANDEMIC」というように。

2021年制作「無題」 © 菅間圭子

*2021年制作「無題」 © 菅間圭子

Q:コロナ禍は、どのような影響をアートを含む現代社会に与えたと思いますか?
A:いろいろあると思いますが、リモートワークの普及によって、雇用形態が少しずつ変化していたり、あるいは国際的な流通を前提とした商品が品薄になったりということで、自給自足的な要素を持った業態があらわれたり(自給自足経済になるという意味ではない)、今まで当然とされていた形態が足元から変化してバラエティーが出てくると思います。そういうことが、社会の成員である私たちの意識にも変化を与えつつあると思うので、当然アートもその変化を受けて変わってくるだろうと思いますが、具体的には現時点ではよくわからないというのが正直な感想ですね。

Q:コロナ禍後のアートの役割とは?
A:コロナ前も後も、アートというのは、基本的に人間の不可避的な衝動に基づいていると考えているので、その「役割」に関して考察したことはありません。ただ、キュレーションをする側として考えると、パンデミックを経験した後では、その内容が変わってくる予感はします。たとえば、中断されていた私が企画していた展覧会ですが、当初の企画の通りに進めるのではなく、何らかの形でパンデミックの体験を反映した作品をあらためて各作家に要求しようと考えています。ただし、それも「役割」という観点からではなく、むしろ「反応」ということからです。

菅間圭子さん

Q:今日は貴重なお話をありがとうございました。次にお会いするのを楽しみにしています。よろしくお願いします。

 

終わり


*Art Lab TOKYO アートバースディ 2022年1月17日配信決定


取材日:2021年11月16日
*撮影時のみマスクを外しました。

(構成・撮影 関 幸貴)

 
Copyright © 2010- Eitaroh Miyajima. All Rights Reserved.