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アートが気になるインタビュアーが宮島永太良を探る!

 

「宮島永太良研究」第18回 モチーフV

=アートが気になるインタビュアー/A=宮島永太良

:前回は、宮島さんがこれまで描かれてきたモチーフを見てみるということで、「花まつり」のテーマにもなった「Miracle Spring」という作品に入りました。画面中央にある太陽のようなものが「仏陀」(注※)を象徴しているというのは驚きですね。
:仏陀の姿を描写的に描くという方法もありましたが、そうするとどうしても「仏画」のようになり、「花まつり=仏教」が語っている宇宙調和や世界平和のことが限定的になってしまう感じがして、このような象徴的な描き方をしました。


「Miracle Spring」

:他に人の姿や水、火のように見えるものもありますね。
:この絵自体は仏教で説かれる「六道」を描いています。「天道」「人間道」「修羅道」「畜生道」「餓鬼道」「地獄道」の六つの世界です。かいつまんで言うと、絵の中にある人型は「人間道」において普通に生きていたり、一つ上の「天道」を望んでいたりする姿。また花の実のようなものは、飢餓で苦しむ「餓鬼道」に施すものを表しています。火はまさに「地獄道」の象徴です。

:先ほど、仏像そのものをあえて描かなかったというお話があるましたが、仏像そのものを描いた作品も過去にありましたよね。
:まず「生気あふれるガイコツ」という作品では、観音菩薩の姿をそのまま描いています。ここでは、先述の「Miracle Spring」とは若干違うメッセージを持っています。仏教でいう宇宙観というより私自身の郷愁のようなものです。

:それはどのようなものですか。
:幼いころ住んでいた家の近くに本当に観音菩薩像(以下 観音像)があり、よく家族とお参りに行ったのですが、そのような故郷の中に見える日本の日常を、この時(2002年)には描きたかったのだと思います。

:「Miracle Spring」より、こちらのが制作は前ですよね。
:「Miracle Spring」が2004年の作品なので、約2年の間に仏教的なメッセージがかなり抽象化(普遍化)してきたのでしょう。


「生気あふれるガイコツ」

:それは興味深いですね。
:つまり仏教的な描写を入れなくても、そのメッセージのみを伝えるような心境に動いたのかもしれません。ちなみに生気あふれるガイコツの主役(?)であるガイコツも、観音像の横に描いています。

:絵の主役でありながら、これはいったい何なのですか。
:これはこの近くにあった森の風景を象徴しています。実際にガイコツはいませんが、どこか怪しげでありながら、その怪しさに愛着が持てる森だったのです。さらに隣にいるのはイチョウの木がハードロックのギタリストに扮していますが、森の木々から怪しげな音楽を感じたこともあったことからです。しかしながらこの一連の怪しい森は、とても生き生きとしていたので「生気あふれるガイコツ」の誕生に至ったのだと思います。

:ガイコツと言えば「死」の象徴として扱われることが多いのに「生気あふれる」とは不思議だな、と思っていましたが、そういう意味だったんですね。そうするとガイコツが持ち上げているケーキも、実はバースデーケーキで、「生きる=年を重ねる」ことを意味しているとか?
:全くその通りです。よく解釈いただけました。

:宮島さんの作品は、そうしたイコノロジー(象徴図像)的な意味も多いのですか。
:大学のゼミで、歴史画の中にある象徴の探し方のような勉強もしたので、影響は受けているかもしれません。

:もう一つ、仏像をそのまま描いている作品として、「仰天」というのがありますね。
:この作品は「Miracle Spring」より5年も後に描いたものですが、これもまた仏教的メッセージというより、高層ビルよりも高い、仏の視点を描いたと言えるでしょう。


「仰天」

:「仏の視点」ですか。
:はい、仏像そのものは高層ビルよりずっと低いですが、天の声を象徴している存在として、この上へ伸びて行く現代の都市の姿を懸念しているのです。

:何かまた意味深さを含んでいそうですね。では、先の「生気あふれるガイコツ」、そしてこの「仰天」とも、宮島さんは詩を付けられているので、次回はその二つを紹介したいと思います。


注※
ここでは釈迦のことを仏陀と言い表しているが、仏陀というのは本来、釈迦自身の名前ではなく「悟りを開いた人」の意味。したがって、釈迦以外にも仏陀になれる可能性がある。


  

 

  
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