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畳職人四代目が語る「畳の世界」! 後編

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仕事中の真壁一嗣さん
 

◎真壁一嗣(まかべかつじ)さん プロフィール

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真壁一嗣さんspace
畳職人四代目 
畳製作一級技能士(国家資格)
1975年 2月17日神奈川県小田原市生まれ 水瓶座 O型
茨城県畳高等職業訓練校 卒業


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「畳の世界」の今を畳職人四代目/真壁一嗣さんが語ります!

◇前号からの続き…

機械縫い

月刊宮島永太良通信編集部(以後M):
2年間の茨城県畳高等職業訓練校での日々は、いかがでしたか?
真壁一嗣さん(以後K):
遊びたい時期に親元を離れての寮生活、同期の仲間はいるけれど先輩との上下関係があり、それに馴染めないと大変な環境でしたが、私には面白い2年間でした。

M :訓練校では、どのようなことを習ったのですか?
K :最初に学科、材料や道具の勉強をしてから実作業へ、畳製作を体で知るのが基本ですから正に修行の場。  指導員からの講義を受け、1年生の時は毎日手縫いで、畳一帖作らされました。  当然、最初から上手く縫えませんから、畳糸を抜いて縫い直しもしました。  また2年生が我々1年生の作った畳を納品、その際の取引先の反応を伝えてくれるのですが、それに一喜一憂の日々でした。  小型ミシンのような機械も2年生にならないと使えず、かなり濃密な時間を過ごしました。

M :そうした中での思い出は?
K :年3回学期の終わりに課題があり、作品製作をして父母会で発表するので、毎回、学校と自宅用にするために同じ作品を2個ずつ作りました。  そして、卒業時には「畳神輿」を製作。  それは毎年、東京の科学技術館に展示されます。  とにかく畳製作に関して徹底教育をされた茨城での2年間でした。

手縫い針

M :訓練校を卒業したら畳職人として一人前と言えますか?
K :かつては10年で一人前と言われていましたが、亡くなる前に父が残した言葉「人間死ぬまで勉強だ!」に共感している私は、自分が納得するには一生かかると思っています。  国家資格を持っているからと言っても精進あるのみです。

M :ところで、現在の日本に畳職人はどのくらいいるのでしょうか?
K :日本全体は把握していませんが、1970年代中頃「神奈川県畳工業協同組合」発足当時、小田原を中心にした西湘地方2市8町に60数軒あったそうですが、今は半分以下の26軒。  後継者も少なく厳しい時代になりました。

M :減ったのは何が原因なのでしょう?
K :戦後、欧米の住宅文化が少しずつ入り込み、その流れで建築も変化、日本間が減ったのが要因でしょうね。  訓練校時代の同期も転業したと聞いています。

真壁畳店内からの風景

M :そうした現状にも関わらず、畳を通して真壁さんは色々な道を積極的に探っていると思いますが?
K :時代が変化したとは言え、父の時代はバブルだったので、宣伝をしなくても待って入れば仕事が来る状態でしたが、今はそうは行きません。  キチンと畳が作れなければいけないし、お客様との見積もり時にもしっかり対応できないといけない。  経営する上でも原価計算とか、ある程度全てができないと事業所としては成り立たないのです。

M :昔よりはハードルが高い?
K :そうです。  でも、お陰さまで私は商業高校を卒業しているので、数字に関しては、それが役立っています。

M :宣伝に関してはいかがですか?
K :最近の人はモノを買う時、最初にネットで調べるし、HPを持っていないと大丈夫かなと思っていたのですが、幸いなことに商工会の支援事業で作っていただくことができました。  また、Facebook等も宣伝ツールとして活用しています 。

畳縁ハンドメイドブック

M :HPからの受注はありますか?
K :ありますよ。  こちらから、畳や店に関する情報を発信することによって、お客様、発注側の判断材料も必然的に増えるので、それが功を奏しているようです。  例えば、「ネットで見た畳の縁を使いたい!」と言った具合に。

M :ネットがコミュニケーションツールですね?
K :そうなりますか(笑)。  コミュニケーションと言えば現実面でも、ここのところ毎冬、近所にある中学校の2年生が、丸1日職場体験をしにやって来ます。  畳屋には来ないと思っていましたが、PRも兼ね1日潰して始めてみたら最低でも3名、5〜6年やっていますが、お陰で地元の方には重ねて存在を知ってもらっています。  商売には地元の信用が一番、それがないと長続きはしません。

M :真壁さんにとって、畳職人の魅力は?
K :まず、仕入れたものを売るワケでなく自分の技術が重要になります。  そして、家によって条件が違うので採寸をしないと作れないし、全てがオーダーメイドだから、自分が作った畳を納品して喜んでもらえるので毎回充実しています。  加えて、お客様から次の方を紹介されることもあり、人との繋がりを感じることができるのは得難い経験です。

M :逃今後の展開を教えてください!
K :昨秋のアートフェア、「湯河原・真鶴アート散歩」に初めて出品しましたが、本を見ながら、娘の意見を聴きながら、色々な畳の縁で子ども用ポーチ、ペンケース、リボン、カードケース、髪留めを作っています。  販売目的ではなく、あくまでも畳のPR目的ですが、こうしたことがヒントになり新たな動きに繋がるかもしれません。  とにかく、私はこれからも「畳の世界」で生きて行きます!

M :今日はありがとうございました。

 
畳縁作品
 
(構成・写真 関 幸貴)
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