Road : つれtakeロード
秋の松江を歩く…
10月初旬、宮島永太良が訪れたのは島根県の松江。県庁所在地でもあるこの場所は、宍道湖や多くの川に囲まれ、水の都と言われている。 まず飛び込んでくるのは、宍道湖のきれいな水の風景だ。 この時期の空気もあってか、周囲の風景が水面にきれいに映り込む姿が壮観だ。
JRの松江駅方面から宍道湖にかかる橋を渡って行くと、松江城の天守閣が見えてくる。 この松江城は、山陰地方では唯一天守閣が現存することでも知られている。 犬山城、松本城、彦根城、姫路城とともに天守が国宝指定された5城のうちの一つでもある。 完成は1611年(慶長16年)、堀尾吉晴とその孫の忠晴によって築かれた。 その後1638年(寛永15年)、 信濃国松本藩より松平直政が入封して城主となり、以後、明治維新まで続いている。
回りを緑に囲まれたその天守閣は、犬山城、熊本城にも見られる木造の壁が印象的である。 城内には松江神社があり、これは、上記のように1638年から城主となった松平直政を御祭神として、明治時代に創建されたものが始まりだという。 また神社の隣には、興雲閣という西洋風の建築が、この場所に異空間的な雰囲気を与えている。 明治後年、松江市工芸品陳列所として建てられたもので、後の大正天皇となる当時の皇太子の山陰道行啓の際には、御旅館、迎賓館としての役割もはたしたという。 現在は喫茶店となっているが、贅沢な雰囲気での喫茶が楽しめそうだ。
この松江城内で目についたのは、至るところに設置してある行灯だ。 ちょうど「松江水燈路アーティスト行灯展」の最中らしく、多くの個性あふれる色彩豊かな絵による行灯が見られた。
天守閣を降りた近くには県民センターがあり、大中小の各ホールでは、コンサートや映画上映、講演会などおこなわれ、市に文化の中心地となっている。
宍道湖の支流なのか、市内には川が非常に多い。中でも東京橋という橋のある川は、船頭さん付きの舟で、川下りもできるのがおもしろい。 またこの川沿いの一部の歩道はモザイクで飾られ、沿道には洒落た喫茶店やアクセサリー店などが並ぶ。 大きな和傘が象徴的な公園は、休日にはかなりの人が集まって来る。 カレーやフライドチキン等の屋台店も並び、川沿いでは若いミュージシャンによるライブも行われる。 そしてそんな人たちに背を向けた、不思議な人型のパブリックアートも気になるところだ。
お洒落な雰囲気を味わえる川沿いから一歩入ると、木造の家の並ぶ、古き良き時代の通りも姿を見せる。 造り酒屋らしい建物もある。 古風とモダン、両方の顔が見てとれるのも、この松江の醍醐味だろう。
そして再び宍道湖のほとりへ。ここで採れるしじみとノドグロは名産になっている。 宮島も、ここのしじみを入れた味噌汁を食す機会があったが、そのこくと旨みは抜群だった。 宮島は子供の頃からしじみの味噌汁は好きで、身まで「食べる派」であった。 特にこの宍道湖のしじみは身まで食べなければ勿体ないとつくづく思わせる。 もう一つ、蕎麦もこの松江の名物であるが、二段重ねの器で出されるのが特徴だ。 やくみやつゆを、好みの量かけて食べるやり方が、また旨さを誘う。
松江のある島根県は、出雲大社がある県としても有名だ。 昔から、毎年11月(旧暦10月)になると、日本中の神様が出雲大社に集まって総会を開くと言われるが、そうすると出雲大社以外の日本全国から神が姿を消してしまうため、11月(旧暦10月)を「神無月」(かんなづき)というそうである。 しかし、ここ島根だけが逆に「神在月」(かみありづき)というらしい。 この翌月は11月。 ぜひ日本中から神様が集まってくる島根県の様子も、いつか見てみたい。
(文・写真 / 宮島永太良)