TOPTalk : 対談

秋の宵、品川区内のアトリエで、
深作廣光さんと宮島永太良が出会いからアートまでを語った♪ 後編

前編 ► 

深作廣光さんと宮島永太良
 

◎深作廣光(ふかさくひろみつ)さん プロフィール

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アーティスト。
1963年11月15日、茨城県ひたちなか市生まれ、蠍座、A型。
鷹美術研究所卒業。
モダンアート会員。
・主な活動履歴
2001:ライブペインティング「灼熱の幻影」
2003:リキテックスビエンナーレ入選 ニカフ出展
2004:ライブペインティング怒濤の宴
   モダンアート「明日への展望展」 俊英作家賞
2008: モダンアート展会友佳作賞
2013:小磯良平大賞展入選
2014:公募団体ベストセレクション美術出品
2000、2002、2005、2008、2014年 個展開催
   以後も積極的に制作、発表を続ける。
 

答えが見えないアートの世界…

◇前号からの続き…

宮島永太良(以後 M):心ある作品を描けるようになるには、確かに時間が必要だと思います。  最近、やたら画商が集まると言われる大学の卒業制作展、展示作品の作家は概ね20代前半、彼らに良い作品を求めてもそうそうあるとは思えません。
深作廣光さん(以後 F):そう、画商が求めているような人材はそんなにいないと思いますよ。

M :深作さん、やはり経験や年齢を積み重ねないと良い作品はできないですか?
F :と言うか、私自身若い頃はすぐにできるつもりでいました。 でも、描けば描くほど「先がある、先がある!」の思いで、現在も制作しています(笑)。

深作廣光さんのアトリエで

M :しかし、今年になって、深作さんが作品に透明感を出すことが出来たと聞いています。  それって、制作に費やしてきた時間に関係していますか?
F :どうなのでしょう。  若くてもオリジナルなイメージやアイデアを思いつくかもしれないけれど、それを自分のモノにするのは相当難しく、熟成して良い作品にするには、やはりそれなりの時間が必要だと思いますね。

M :そうですね。  前言と矛盾するかもしれませんが、美大を卒業したばかりで、中には魅力的な作品を描く人はいるだろうし、40代、50代になった時にもっと良くなる場合もある。  それとは逆にダメになって行く場合もある。  でも、確率で考えると若い方が可能性は少ないのかもしれませんね。
F :年齢を重ねることで考えると、以前、「富岡鉄斎展」を見て、あの人は80代が一番素晴らしいと思いました。  作品を見ていると、豊かな年輪を感じ心に響きました。

M :現代にも鉄斎のような方もいるのでしょうね。
F :鉄斎は90歳近くまで生きたそうですが、作品的には最後まで上がって行く感じでした。

M :年齢を経ての成熟、アートの世界はそれが可能ですが、スポーツの世界では無理。  文章書く人もある程度の年齢になると視力に問題が生じ、大変そう。  でも、アートの世界なら90代で最も良い作品を生むことが可能だと思います。
F :ただし、描き続けていないとだめです。

深作廣光さん

M :例外的にアメリカの国民的画家グランマ・モーゼスのように75歳で描き始め、国中から注目され101歳で亡くなるまで約1600点の作品を残した方もいます。
F :しかし、モーゼスは技術とは違う世界の画家だと思います。

M :そう、プリミティブアートの画家と言えます。  だから、アートの世界って技術の積み重ねも大切だけど、技術がなくても成り立つ場合があり、それが怖いし、分からないところです。  「日曜画家」と呼ばれたフランスのアンリ・ルソーも絵の勉強を全くしていないけれど、凄い作品をたくさん残している。  彼らのように技術を積み重ねなくても才能が湧き出る場合もあるわけです。
F :そうですね。

M :身近な話題に移りましょう。 2014年の「花まつり」に出していただいた深作さんの仏像画は抽象と具象の間に位置する感じでインパクトがありました。 ご自分ではいかがでしたか?
F :描くには描きましたが、自分の中では背景をどうするかという問題もありました。 あの時は終わりの感じがしたけれど、今思えば、「たらしこみ」の上に描いたら面白かったのかもしれません。

宮島永太良

M :その作品も見たい気がしますが、仏像って結構透明感があり、後ろに必ず光輪や後光があったりする。  あれって、和洋を問わず共通でキリスト像の背景に光が描かれていることは多いですね。
F :神仏像の背景は問題です。  で、話は少し横道に入りますが、見る人が見れば、後光って人間にもあるらしいですよ。

M :その話、知り合いから聞いたことあります。  稀に小さな子どもには見えるらしいけれど、オトナには無理。  「百聞は一見に如かず」と言いますから、私も見てみたい気がします。  見るといえば、以前深作さんは、写真を撮るために日本全国を自転車で旅したとか?
F :それ、ちょっと違います。私の目的は写真撮影ではなく北海道から沖縄まで自転車で日本縦断することでした。

M :では、写真はいかがですか?
F :旅だけでなく作品素材の意味もあり、ずっと撮り続けています。

M :被写体は主に何を選んでいるのですか?
F :自然です。  中でも20数年前から気になる岩や岩壁が興味の対象です。

深作廣光さんと作品

M :岩のきっかけを教えてください?
F :昔、作品化が目的でなく、純粋に谷川岳に登り一ノ倉沢を撮り、そのできあがった写真を見て、触発され抽象画を描いたのが最初でした。  その後、描くことを意識して伊豆へ向かい城ヶ崎を撮影、それも作品にしました。

M :岩のどのあたりに興味を覚えるのですか?
F :カタチです。

M :自然の造形美?
F :ええ、他に撮影している雲にしても、波にしても人の力が及ばないモノに惹かれているのかもしれません。  そして、それを抽象画にできればと考えていますが、なかなか難しいのが現実です。

M :今回のお話で、ほんの少しだけ深作さんのアートへの思いが見えた気がします。  まだまだ語りつくせないので、またの機会にお話を伺えればと思います。  よろしくお願いいたします。  今日はどうもありがとうございました。

おわり

 
宮島永太良と深作廣光さん
 
(構成・写真 関 幸貴)
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