Story : 詩と作品
連載第30回 火の向こうに…
燃える火の向こうに、
自分たちの姿を見ていた。
自分の都合を良くするために言った一言、
自分が良い思いをするためにやった些細な行動が、
つい人を傷付けてしまった。
こんな時、いったいどうしたら良いのだろう。
考えれば考えるほど、自分が嫌になってくる。
昔、ある恩師が教えてくれた。
「この世には、そうしたみんなの小さな失敗を、
代わって天に懺悔してくれている人がいるのだよ」
師はその場所を教えてくれた。
そこには火がともっていた。
火の中には、人の誰もが持つ貪欲や羨望、
無知などが燃えたぎっていたが、
それは汚れた姿ではなかった。
それらは浄化され、人がもっとも人らしく変われる、
そんな別の世界からのメッセージが伝わってくる。
「損なのか得なのか、それは今、
嘘なのか真実なのかに変わって
戻ってきている」
師の言葉を仰ぎながら、私たちは
燃える火の向こうに、自分たちの姿を見ていた。
「業 – GO」
宮島永太良
*再掲載作品