Road : つれtakeロード
■ 好評連載!
宮島永太良、Road 沖縄3部作 第1弾!
「ギャラリー天描」
宮島永太良が早春の沖縄を旅した印象を、3回にわたって書き綴ります。
宮島独自の視点を楽しんでいただければ幸いです。
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関東ではまだ寒気がおさまらない3月上旬、宮島永太良は既に春の暖かさがやってきていた沖縄の地を、再び訪れた。 今回まず訪れたのは、那覇市の隣、豊見城市の豊崎にある「ギャラリー天描」。 ここは宮島と親交のある画家・大城清太さんの作品の常設ギャラリーである。 地域のショッピングセンター「TOMITON」のちょうど裏に位置する。 木のぬくもりを感じるギャラリー空間は、大城さん自身によってレイアウトされており、作品とともに神秘的かつ安らぎを与えられる場所となっていた。
沖縄県糸満市出身の大城さんは点描の技法を使い「命と自然」をテーマに描いている画家で、2010年に宮島が企画を担当する銀座のミーツギャラリー(当時の名称はピローズギャラリー)で個展を開催したことがあった。 その作風は、沖縄の古の神秘を思わせる、不思議な動物や人間たちの姿。 その姿が無数の点で構成されている画面に圧倒される。 ちなみに点描とは、線を引くことなく、点の集合だけで絵を作っていく方法である。 大城さん自身、それは天から授けられた技法と信じているからだろうか、ギャラリー名が「点描 」ではなく「天描」となっているのも興味深い。
今年で作家活動十周年という大城さん。 実績のわりには短い感じもするが、それまでアートとの関係はどうだったのだろうか。 話を聞いてみた。 「プロの点描画家になると決める以前には、『ブランドプロデューサー』『デザイナー』『飲食プロデューサー』の三つの顔を持っていて、点描の絵はあくまでも趣味で描いていました。」 そう、プロの点描画家となって十年ということであり、その美的感覚は前職の時期からすでに磨かれていたと言えるだろう。 では、なぜプロになることを決心したのだろうか。 それは、「CTスキャンがビートルズの遺産だった」ということを知ってからだったそうだ。 これはどういうことだろうか。
「僕はビートルズの曲が好きで昔からよく聴いていたんです。 彼らは自分のやりたい音楽をやって世界中の人々を感動させたんで凄いと思っていました。 でも、それだけじゃなかった。 彼らは自分たちの音楽で得た莫大な印税を、当時スタートし始めていたCTスキャン開発チームに投資していたのです。 『これだ!』と思ったんです。 僕もこれからは自分が好きなこと、得意なことで世の中の役に立ちたいという決心につながりました。」
そして、大城さんが点描を自分の天職としようと決めたのには、今は亡き祖母の影響もあったのだという。 幼い頃、神人(かみんちゅ=沖縄の言葉で神職者)だった祖母と一緒に沖縄の聖地の数々を巡り、「自然の神々」の話を聞いたことが今も大きな制作テーマにつながっている。
「祖母が亡くなる直前のことですが、突然『お前は幸せになりたいか?』と聞かれました。 もちろん『なりたい』と言うと、では何か得意なことはあるかとさらに聞かれました。 当時サッカーが好きだったので、サッカーが得意と答えたら、だったらそれを心行くまで 突き詰めなさいと言ってくれたんです。 好きなこと、得意なことをこつこつとやっていれば、周りの人はそれを認め、応援してくれるようになる。 応援してもらえれば、その気持ちが、必ず恩返ししたいという気持ちに変わり、その行為はさらに多くの人々の役に立ちたいという気持ちに育って行くのものだ。 祖母の最後の言葉は、好きなことを信じてやり続ければ、きっと世の中の役に立つ、という思いを確実なものにしてくれました。」
サッカーへの思いは今点描へと到達。 そんな彼の確かな志は、世界にも視野を広げている。 2006年から計画している「ワールドツアー」があるという。 「十年ごとに活動・発表の場を移していこうというものであり、まず最初の十年は地元に根差す。 次の十年は世界に進出しよ う、という計画です」この計画によると、ちょうど来年2016年は次のステップ開始の年となり、台湾、マレーシアへの制作活動がすでに決まっているという。 「18歳から22歳までいたハワイも、いずれは活動の場になれたらいいなと思っています。」
沖縄の「命と自然」を出発点としながら、その精神が場所を変えても理解され繋がっていく。 そんな予感が感じられる。 世界進出の第一歩・アジアへの進出が目前となっている大城清太さんの活躍に、ぜひ今後注目したい。
ギャラリー天描
〒901-0225
沖縄県豊見城市豊崎1-39-102号
TEL:098-987-1109
080-6491-8546
Open 13:00〜19:00
毎週水曜日・第2第4日曜日定休
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