Friends : 友達
Friendsには、ジャンルを問わず宮島永太良の友人知人が登場!
毎回、親しい視線と言葉で宮島の実像に迫ります。
◎ 前号に続き…優しさを紡ぎ出すアーチスト ‘ フジモト芽子 ’ さんが登場します♪
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◎フジモト芽子(まいこ)さん プロフィール
本名、藤本名子(ふじもとめいこ)。 大阪府堺市出身。 1963年12月5日生まれ、射手座、A型。 甲南女子大学文学部卒業。 大学卒業後、 姉の有子さんと雑貨店を経営、その後ベビー服店でアルバイト。 アーチストとしては、関西を拠点に1980年代後半から、 独特な優しい世界観を表現した作品を発表し続けている。 現在は個展の他に雑誌、新聞等に多数作品発表。 父君は、直木賞作家の藤本義一(ふじもとぎいち)さん。 |
前号からの続き…
フジモト芽子さんに創作面で大きな影響を与えた人物とは?
編集部(以下Q):誰ですか??
フジモト芽子さん(以下A):父の仕事関係で遊びに来ていたアーチストさんたちからも色々な刺激を受けましたが、日頃から知らぬ間に影響を受けたのは父方の祖母でした。
Q:お婆さまは、どんな方でしたか?
A:自分で何でも作る人でした。
Q:何でも?
A:はい、実は3歳上の姉がいます。
幼い頃、私は彼女の持っているものを何でも欲しがりました。
例えば、姉が小学校に進学したとき、時計や数え棒等の算数の教材をもらって帰って来たですが、私はそれを見ただけで、欲しくてたまりません。
でも手に入れるのは無理。
そんな私を見て、明治生まれで姉様人形なども器用に手作りしてしまう祖母が、お菓子の箱やら、マッチやら消しゴムを材料に工夫を加え、『ほら、姉ちゃんと一緒♪』と、言いながら、それらしいモノを作ってくれました。
Q:出来上がりは、いかがでしたか?
A:見た目は、ちょっと違うのですが、不思議な満足感が得られましたね(笑)。
だから、祖母の影響は強いと思います。『とりあえず、欲しいモノ、ないモノは自分で作ったら、ええねん』と言う心情が、私に伝わったのだと思います。
Q:お聞きすれば、創作活動はあくまでも個人的な楽しみだったようですが、展覧会等で発表を始めたのは何時からですか?
A:作品発表を意識したことはなく、初めて展覧会へ出品したのは20代中頃でした。
Q:そのときのエピソードをお願いします。
A:父の縁もあり、私が生まれた近所にある大阪府堺市の画廊‘花みつ’さんのお誘いでした。
内容的には、クリスマスのグループ展でした。
初めてなので『できひん!』と思いつつ、何をどうして良いか分からず、主催者に相談。
そうしたら、きれいに色を塗った木箱をくれ、『そこに何でも好きなモノをくっつけたら、それで作品』と、アドバイスを受けたので、心が決まって創作開始。
それで始めたら、最初は無理だと考えていたのが楽しくなり、自分でも新たな箱に色を塗り、コラージュも含めて予定以上に作品制作(笑)。
これがアーチストとしての本格的なスタートでした。
Q:その後、作品発表の割合は?
A:雑誌等のお仕事と共に、個展・父との二人展・グループ展を年に2度ぐらいのペースで開催しています。
そう言えば、数年前に‘花みつ’さんで個展を開かせていただきましたが、最初のときの作品、今もよく登場するお人形さんの最初の作品と再会しましたが、あまりにプリミティブで我ながらビックリしました。
作品も年々変化しますね。
Q:制作面で、きつかった事はありましたか?
A:最初から創作は何も考えず、自分の好きでやっていました。
それを発表し始めると、多くの方から言葉をいただきますが、中には、自分自身が咀嚼できないものもありました。
でも、根が真面目なA型だけに皆の期待に応えたくて、一時期は、何をどう作って良いのか分からなくなり迷いました。
Q:何時頃でした?
A:発表を始めて5年間ぐらいですね。
Q:同様の話を陶芸家の勝尾龍彦さんから伺いました。
何が転機でその状況を脱したのですか?
A:言葉にすれば、『開き直り』かもしれません。
色々やった結果、『もう、イイ!』と、思った同時に『これしかできひん。これが私!』と、思い至りました。
Q:山をひとつ越えた感じですね。
A:でも、今も道具の使い方が分からず、東急ハンズに聞きに行く私が、あるとき、芸大出身の人に『何でも上手く描けるから良いですね』と、言うと、『それはそうですが、それが大きな弱点かもしれません。
フジモトさんの様に自由に描きたいです』と、真面目に返事をされて驚きました。
きっと、その人は才能もあり、好きなことをしているのは間違いないのだけれど、習うことで得た理論とか技術に縛られ、本来の自分らしい表現が難しいのかもしれません。
技術があっても…
Q:技術があっても描けない。 大切なオリジナリティを失う怖さが、お父上が芽子さんに絵を習わせたくなかった答のひとつかもしれません。
A:はい、思えば、私は最初からオリジナル技法で描いています。
Q:楽しそうです。
A:そうですか(笑)。
でも、制作時、じっと家で作っているのはイヤ。
だから、作品も小さいので、喫茶店とかマクドナルドで作っていることもあります。
あと、マップ等の未経験分野の仕事を依頼されると、最初は、『無理!』と一旦断ります。
が、受けた後は、新分野だけに面白くて夢中になって作り始めます。 だから、創作は大変だけど確かに楽しい♪
*
Q:さて、話題が変わりますが、宮島永太良さんと最初に会ったのは?
A:約10年前、神戸のデパートでやっていた私の個展を見に来てくれたのが最初。
宮島さんのおニューのシャツと人を和ませるキャラクター、そして、育ちの良さが印象的でした。
Q:その後は?
A:2003年9月〜10月に、フランス人フラワーアーチスト / フランソワ・ガルニエさん、宮島さんと私の3人展『原風景展』を大阪の丸善さん2店舗で開催。
三者三様、それぞれ表現方法は違いましたが、心和む良い展覧会でした。
Q:宮島さんの作品についてはいかがですか?
A:お弁当やウサギのストラップも持っています(笑)。
浜松の鰻を描いた『とりっく』、ウルトラマンがお寺の上を飛ぶ作品等々好きです。
表現的には、印象に残っていることを大きく描き、内容的には、宮島さんの心の内から自然に湧き出て来た思いを描いているのではと、思います。
Q:心の内?
A:純粋さだけでなく、危うさも含めて心の中にある様々な心情を描いています。
例えば、小学校の遠足って楽しさと一緒に、バス酔いするかもしれない気持ちとか、目的地の海でお弁当を食べていると漂ってくる磯臭さとか、どこか居心地悪さもありますね。
そのマイナス因子と思えるモノも含めて宮島さんは描き込んでいる。
それが、彼独特の表現世界かもしれません。
Q:最後の質問です。将来の宮島さんに望むことは?
A:いつまでも変わらずにいてください。
今日はありがとうございました。
お知らせ
藤本義一・芽子作品展 “おやっこ展”
会期:8月14日(日)〜28(日)
会場:三木市立堀光美術館
〒673–0432 三木市上の丸町4–5
TEL:0794-82-9945
休館日:毎週月曜日、祝日の翌日
■画廊 花みつ
堺市西区浜寺昭和町4丁479番地 TEL&FAX 072-261-0160 Open:11:00~17:00 月曜休廊
南海本線「浜寺公園」または阪堺線「浜寺駅前」下車徒歩5分
◇撮影協力:松陰高等学校 大阪学習センター