TOPTalk : 対談

新しい画廊で銀ソーダさんと宮島永太良が語り合った…  後編

銀ソーダさんと宮島
 

銀ソーダさんプロフィール

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画家
1995年 福岡県福岡市生まれ
2018年3月 九州産業大学芸術学部デザイン学科ビジュアルアート領域卒業

個展
2019年9月 「REALIZE」/ Gallery Enlace (福岡)
2019年4月 INTERART7セレクション「LAST HEISEI –記憶の標本箱- NEXT HEISEI」/ space2*3,TK GALLERY (東京)
2018年6月 INTERART7セレクション「fragment」/ space2*3 (東京)

グループ展
2020年2月 「ニュースターアートコレクション」/ 松坂屋名古屋店 (愛知)
2019年8月 「ウムQ2019 九州産業大学芸術学部作品展」/ 上野の森美術館 別館ギャラリー (東京)
2019年7月 「GALLERY ART POINT EXHIBITION in Paris」/ galerie metanoia (パリ)
2019年6月 「ART POINT Selection U」/ GALLERY ART POINT (東京)
2018年2月 「九州産業大学 芸術学部卒業制作選抜展2018」/ 福岡アジア美術館 (福岡)

アートフェア
2020年3月 「3331 ART FAIR 2020」/ GALLERY ART POINT・3331 Arts Chiyoda (東京)
2019年9月 「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2019」/ GALLERY龍屋・ホテルオークラ福岡 (福岡)
2019年8月 「ART FORMOSA 2019」/ AN INC. & INTERART7 ・Eslite hotel (台湾・台北)

受賞歴
2018年2月「九州産業大学 芸術学部卒業制作作品展」デザイン学科 優秀賞

表現について
時や経験を積み重ねて生きる人間の姿に美しさを感じる。そこから、目に見えない人間模様を可視化させてみたいと思った。限りある命や時が経てば曖昧になっていく記憶を「氷」、過去の経験や周りの環境を「液体」に見たて、モチーフとして使用している。様々なものが混ざり合い、時の積み重ねによって生まれる美しさを主にアクリル絵具やメディウムを用いて表現している。


ターナー作品との出会いから…

◇対談は2020年2月にオープンしたばかりの Gallery TK2 で3月14日に行われました。

前号からの続き…
宮島永太良
(以後m):銀ソーダさんが影響を受けた人とか、好きな美術家はいますか?
銀ソーダさん(以後g):小さな時から強く憧れを抱いた人はいませんが、去年(2019)年の2月、私にとっては初海外のロンドンへ行った時、美術館でイギリス人画家ターナーの絵をたくさん観ました。教科書では観ていましたが、本物の作品は風景画なのに近くで観ると抽象的で荒い感じがしたんです。でも、少し離れて観ると繊細さもあり、空気感や匂いを感じられ、そこにいるような感覚になり「ターナーすごい!」って思い、その場から離れられなくなりました。その後、ターナーの作品の舞台でもあるリッチモンドヒルへ行く機会があったのですが、そこにはターナーが描いたままの世界が存在して、改めてその風景を表現できているターナーはすごいなって思いました。絵って視覚的な情報だけど、匂いだったり、陽の温かさ、空気感を表現できているターナーって本当にすごいです。それで私は写実ではないけれど、五感をフルで画面に表現できる画家になりたいなって思いました。

m:美術史の先生から聴いたんですが、それまで誰も描かなかった「ロンドンの霧」を、ターナーはあえて描いたそうです。それ以降、彼の作品の影響でイギリスの人たちにも意識も変わり、美的とされなかった霧や雨の見方に変化が生まれたそうです。
g:そうですか。ターナーが描いてきた作品は色々観たのですが、最初の頃は写実的で、内容にはけっこうダークなものもありましたが、綺麗なだけでなく歴史的背景とか心情を含めた美しさ、怖さを織り交ぜて描き、それが画面から伝わってくるのがすごいなと思いました。そこからターナーが、その時代を生きていた画家というのがよく分かりました。あれ以降、私も今を生きる画家として、この時代を生きたものを感じさせる作品を描いていきたいと強く思うようになりました。

銀ソーダさん

m:では、ターナーが一番影響を受けた画家ですか?
g:はい。やっぱり生で観る作品と、日本の教科書で観るのとは全然違います。私、そんなに海外へは行っていませんが、今の年齢で最も衝撃を受けたのはターナーです。

m:去年はパリへも行ったそうですね。
g:モネの睡蓮も観てきました。

m:モネとか印象派の方がターナーより後の時代だけど、共通している感性がある気がします。もしかして印象派の画家たちもターナーの影響を受けたのかもしれません。
g:そうですね。色々共通して感じる部分はありました。やはり私は純粋美術のようなものが好きです。

m:ところで銀ソーダさんが、パリで出品した会場はどんなところですか?
g:ポンピドーセンター近くのギャラリーです。

m:何人ぐらいの作家さんが出品したのですか?
g:けっこういました。10人以上はいましたね。そのギャラリーも初めて海外作家を紹介する展覧でもあり、私も海外へ出したことなかったので大変でしたが、挑戦してみました。

m:パリのお客さんはどうでしたか?
g:まず環境的に例年以上に暑い7月、そのうえにギャラリーは古い石造りの建物でエアコンがないのでめちゃくちゃ暑く、加えて初日のレセプションパーティーでは来場されたフランスのお客さんたちは情熱的でワイン片手に熱く盛りがっていたけれど、私たち日本人は脱水症状気味でヘトヘトになっていました(笑)。でも、私の作品に興味を持ってくれた方は、青の中でも何故この青を使うんだとか、色々な質問をしてくれ、気に入った作品については積極的に質問してくれ、とても作品鑑賞に対しての情熱を感じました。

MEMORY07

 作品名:MEMORY07

m:僕もパリで個展をしたことがあるけれど、その時も日本のお客さんは作品のことを聴かないけれど、パリの人は絶対に何かを聴いてきました。あのふたつの姿勢が、日本と欧米のアートに対する認識の違いかもしれません。
g:確かにフランスの方は積極的な姿勢が多い印象でした。あとギャラリーオーナーである旦那様がフランス人、奥様が日本人、日本作品を結構取り扱い、日本文化を好きな方が集まるギャラリーなので居心地は良かったです。

m:日本の作品は昔のものに限らず現代ものもあるのですか?
g:はい、現代ものも含めて「ザ・ニホン」という作品も喜ばれます。

m:日本画のような?
g:そうです。あと墨を使ったもの。その中で私の作品は目に見えて日本とは分かりにくいけれど、藍色など、欧米とは一味違う透明感が気に入ってもらえ、興味を持ってもらえたようでした。

銀ソーダさんと宮島

m:では、これからも機会があったら海外で作品発表をしてみたいですか?
g:もちろんです。日本だけじゃなく世界に視野を広げて活動していきたいと思っています。

m:最後の質問です。ペンネーム「銀ソーダ」の由来を教えてください。
g:炭酸ナトリウムが由来です。高校入学してクリエーションアート同好会に入ったのですが、そこには新入生にあだ名をつける絶対的取り組みがあったのです。で、決められる時、本名の奈津美(なつみ)にちなんで、理系3年生の先輩が、「う〜ん奈津美か、じゃ炭酸ナトリウムかな、でも炭酸ではかわいそうだから、ソーダでいい!」と言われて、「何故だろう」と思ったら、炭酸ナトリウムの化学式がNA2CO3って表記するんですが、「ナツコさん」と語呂合わせで皆が憶え、そこに奈津美も隠れているからと言われ、まず「ソーダ」に決まりました。「いいな」と思ったんですが、「ソーダ」だけだとありふれているから唯一の名前を作りたいと私は考え、「ソーダ」に決まる前はペンネームが「銀」だったので、合わせて「銀ソーダ」に決めました。「銀」は当時好きな少年ジャンプの漫画「銀魂」からとりました。加えて、銀という言葉には品を感じ、「銀世界」や「銀色の空」など想像を膨らませてくれ、イメージ的に銀は果てしない感じを湛えていることが気に入っています。

m:青と共通しているかもしれない。
g:銀という言葉が素敵で自分を高めてくれる名前だなと思っています。それに「銀ソーダ」だと性別も分からないし、ミステリアスな感じだけど、透明感があって想像が膨らむような名前だし、自分の方向性を示してくれているんじゃないかと思いました。それでも一時期は本名で活動するかを悩みましたが、「銀ソーダ」でやって行くことに決めました。

銀ソーダさん

m:「銀ソーダ」、憶えやすいですよ(笑)。
g:気に入っているので、そう言ってもらえると嬉しいです。周りからは何度も良いのと念を押されましたが、今では「銀ちゃん」、「銀さん」、「ソーダさん」とも呼ばれています(笑)。

m:金よりいいです。
g:金はインパクトが強過ぎる印象です。銀は控えめだけど、しっかりした芯のある強さを感じます。加えて、銀は見えていない部分も想像できるし、それも描いていきたいです。最近は、「銀ソーダ」から私自身も作品をイメージするようになりました。

M:今日はどうもありがとうございました。

終わり

*取材協力 Gallery TK2 東京都中央区日本橋久松町4-6 杉山ビル4F

 

(構成・撮影 関 幸貴)

 
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