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Road : つれtakeロード

 

ユーカリが丘

今回の「つれTAKEロード」は、千葉県佐倉市にあるベッドタウン「ユーカリが丘」を訪れた。京成本線の駅としても、その印象に残る名前でよく知られている。

ユーカリが丘駅

このユーカリが丘、平成時代からの「ニュータウン」「ベッドタウン」と呼ばれる最も代表的な場所の一つであるが、特筆すべきは、民間の不動産関係企業「山万株式会社」一社によって街の企画から運営までが成されていることだろう。

コアラ像

京成線でユーカリが丘駅を下車し北口を出ると、見えるのは近隣とあまり変わらない印象の街並みと言えども、高架の立体歩道がなぜかとても印象的である。「何か彫刻がある」と思ってよく見ると、それはコアラの親子の像であった。そう、ユーカリと言えばコアラの大好物、それにちなんでのシンボル彫刻が、駅周辺に何点か見られる。「ユーカリが丘」という地名も山万が命名したものらしく、空気を浄化する作用のあるユーカリの葉から名付けられたらしい。実際、約20本のユーカリの木も、この街の近隣に植樹されている。

駅周辺

さらに目を引くのは、京成線の線路よりさらに上部に位置するモノレールの駅と車両だ。このモノレール「山万ユーカリが丘線」も、名前の通りやはり山万によって開発・運営されているもので、地元の人々の足となって久しい。駅の北側約2キロメートル向こうに伸びる、マンションや一戸建てなどの住宅群と結ばれている。

モノレール

乗車にはスイカ、パスモ類は使えず、一律200円の切符。近隣住民は定期券だろう。普通の鉄道と違うのは、途中からは一方向にしか走らなくなるのが特徴だ。ちょうど団扇型を描くように走るので、団扇の柄にあたる部分には上下線があるものの、その後グルっと一周するため、出発点の「ユーカリが丘駅」を出てそのまま降りなければ、終点も「ユーカリが丘駅」に着いてしまうという構造だ。しかし、それをやるとしたら地元の住民でなく、ただの物見遊山の人だろう。何を隠そう宮島もこの日、途中の井野駅で下車して、再び乗車している。入場した駅で出場はできないので。

モノレール車内

印象的なのは駅名だ。この路線の駅名を見ると、まさに地元の人向けといった感じだ。出発点の「ユーカリが丘駅」はもとより「地区センター」「公園」「女子大」「中学校」「井野」そしてまた「公園」と続く。具体的地名の「井野」を除けば、他の地にも存在する「名称」が駅名となっている。地元の人たちの間では「公園」といえばあの公園しかない、といった暗黙の了解が駅名になっている感じなのだ。以前、鶴見線の「国道」という駅を取材したことがあるが、その駅名をも思い出す。

車窓から

モノレール沿線には、まだ開発がされていない土地であろう雑木林なども見える。また千葉県の他の土地でも印象的な田んぼの姿が、大変広い範囲で見ることができる。自然と住環境がほどよくマッチした過ごしやすい沿線、というのがモノレールを一周してみて感じる印象である。

沿線の住宅

再びユーカリが丘駅に戻る。あらためて駅前を見ると、そこにはホテルがあり、映画館を含んだショッピングビルもある。駅を中心にコンパクトに並んでいるところが、計画的に作られた都市らしい。ただ、駅中以外にコンビニがほとんどないのが不思議である。

夕焼け

きっとこの周辺の住民の生活環境には、コンビニは必要ないのではないかと見た。このことからもわかるように、このユーカリが丘は、客を招き入れる土地というより、人が住む土地という需要が大きいのではないかと感じる。では駅前のホテルとは? おそらく、ユーカリが丘に用があって来た人が泊まるというより、例えば近くの成田空港に行く人が、あるいは近隣に多くあるゴルフ場へ行く人が泊まる、ということが多いのだろう。と勝手に解釈した。ということは、駅前のホテルに泊まってモノレールに乗るという組み合わせは極めて少ないのだろうか。

バス停

自然にできた街というより、人々が作り上げて来た街。その実例を興味深く見せてくれるユーカリが丘という場所は、これからも注目したい。民間企業による都市開発・運営というのは今後も増えて行くかもしれないが、だからこそ自然と人とを意図的に共存させてくれる利点もある。叶うものなら、50年後もまた来てみたい!

(文・写真 宮島永太良)

 
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