Story : 詩と作品
連載61回 愛の劇場
愛の劇場
「私はあなたが好きです」
そんな声が、今日もどこからか聞こえる。
「私もあなたが好きです」
ためらいもなく、返事も聞こえてきた。
実に微笑ましい。微笑ましい。
すると
「それは本当ですか?」
と、どこからか疑問の声が。
宙に浮いたハートは、
その実態を収める場もないまま
自分の行方を危惧している。
「人生とは劇場の模倣」
そんなことを誰かが言っていた。
相手に気持ちを伝えることは、
言葉を探すよりも難しい。
なのに、いつの間にか台詞と化していた。
愛する者たちには、
必ず別れの時がやってくる。
その時あなたは泣けますか?
「愛の劇場」
宮島永太良