Story : 詩と作品
連載第27回 吹く風…
風のひとり言
「私は「風神」と呼ばれる、神の遣い。
太古の昔から、この大きな袋とともに生きてきた。
この袋の中身は減ることがない。
なぜなら、これは神が私に授けた義務が入っているからだ。
袋の中身は、地上多くの人間たちに、
時には嫌われ、時には好意を持たれてきた。
暑い夏の日、袋の中身をそっと出してやると、
彼らはなんと涼しげな顔をすることか。
時にはやりすぎたこともあり、ある時は、
大水とともに命を落としてしまう人間たちも出た。
しかし私は彼らを憎くて苦しめているのではない。
良い思いと悪い思いとを均等に与えることが、
神から義務づけられているのだ。
それにしても最近の人間は賢い。
彼らが、私の袋の中身と同じものを作れるほど賢くなれば、
私の存在すら危うくなるのだが、
こんな私にも、最後の機会をくれたようだ。
私の相棒に雷神というのがいるが、
最近人間たちは、私がこの袋から出したものを使って、
雷神が作るのと同じものを、自らの手で作っているようだ。
やっと袋の中のものの価値に気づいたのだろうか。
老いぼれそうな私も、また僅かに若返った気がする。
「風のひとり言」
宮島永太良