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宮島永太良とチバエリさんの対談 前編


チバエリさんと宮島永太良

◎チバエリさんプロフィール

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フォトグラファー 
1979年8月10日神奈川県茅ヶ崎市生まれ、A型。
東京デザイナー学院、東京写真学園卒業。
2児の母。

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宮島永太良とチバエリさんが、写真について語り合った!

宮島永太良(以下 Q):今日はよろしくお願いします。  最初から余談ですが、チバさんの地元、茅ヶ崎出身で兄弟のフォークデュオ“ブレッド&バター”をご存知ですか?
チバエリさん(以下 A):はい、名まえは知っています。  サザンオールスターズの一世代上で両親世代にはかなり人気があったと思います。  現在もイベント等で活動されているようですが?

Q :実は、今年11月にミーツギャラリーで開催する第1回“サンクスギビング展”の関連イベントでライブを行ってもらう予定になっているので、ついお話をしてしまいました(笑)。  では、本題に入ります。  イタリア人写真家 / マリオ・ジャコメッリにかなり影響を受けたそうですが、何に対してですか?
A :素晴らしい作品はもちろんですが、撮影以前に存在する彼自身の「生に対する真摯な思い」が、写真作品を媒体として直に伝わってくる気がしました。

Q :どのような思いですか?
A :「生と死」、「静と動」、独特の空気感です。  だから、少し抽象的かもしれませんが、彼の作風だけを真似ることなく、「写真に託す思い」を継承し、それを自らのフィルターを通して作品化できたら嬉しいです。

Q :チバさんとしては、表面を真似ることではなく、深層部分を引き継ぎたいのですね。
A :そうかもしれません。  独自の世界を見せている著名写真家に荒木経惟さんがいます。  そして、荒木さんのエッセンスを継いでいるのが、若手の大橋仁さんだと言われています。  そうした関係性が築けたら嬉しいです。

Q :話題は変わります。  私が見たチバさんの作品で印象に残っているのが、2013年に横浜アートランドで行われた第1回“ART de FUKKO”で、展示された「卵」です。  存在感のあるユニークな作品でした。

チバさんの作品「卵」
photo by eri

A :どうもありがとうございます。  ジャコメッリが「対比」で内容を展開しているので、その傾向も試みたいと考えています。

Q :「卵」はカラー作品ですか?
A :元はカラーですが、フォトショップで黄身の部分をカラーで残し、他を白黒にしたら、自分で言うのはおかしいけれど「何だ!」って言う作品になりました。  実は、そうした傾向の写真シリーズを現在構想中です。  現在のようなデジタル時代だからこそできる写真表現です。

Q :急に思い出しましたが、かつてカラーと白黒が入り混じった作品「男と女」と言う仏映画がありました。
A :何時頃の作品ですか?

Q :私が生まれた1960年代半ば。  クロードルルーシュ監督でテーマソングが、かなり印象的でした。
A :刺激を受けるので映画は好きだから、インターネットで調べ「男と女」を見てみます。

Q :では、チバさんの今後の課題はカラーと白黒を使い分けることですか?
A :写真には白黒が生きる作品、カラーが生きる作品があると思います。  だから、先程の補足になりますが、「卵」のようなワンポイントカラーの作品のシリーズを考えています。

Q :確か写真にはセピアもあったと思いますが?
A :セピアも過去に一度だけチャレンジしたことがあり、面白いかもしれません。  でも、私は強い配色をしたいので白黒をベースにしてゆきます。

Q :写真家にはモチーフで白黒とカラーを使い分ける方もいて、仏像は白黒が良いと聞いたことがあります。
A :光の関係で白黒の方が強く印象深く表現されることがありますね。

Q :見る人にとって白黒写真は、水墨画のように質感が想像できるのが良いのかもしれません。
A :何か描く時、私はたいてい白黒で、デザイン学校時代もデッサンの成績だけは良かったです(笑)。

Q :チバさんは、絵も描くのも好きなのですね!
A :描きます。 今日もネタで持ってきました。

 ここでチバさん、ハガキ大の作品3枚を宮島に見せる。

チバさんの点描画作品
by eri

Q :点描画ですね。  これは直に描いているのですか?
A :はい、ステッドラー社のピグメントライナーという水性サインペンを使っています。

Q :描くのに時間がかかりそうですね?
A :小さなサイズですが、下書きから考えるとかなり時間を要し、その間は無心になれます。  ただし、少女マンガのように描くのは得意ではありません。

Q :良い感じ、私も描いてみたいです。  作品内容はご自分で考えるのですか?
A :私の白黒写真の発想に近いかもしれませんが、濃淡、光のグラデーション、物語も考えています。  この3枚も「生から死」を表現したつもりです。

 ここでふたりは、チバさんの絵を見ながら濃密な作品談義。

Q :こうして見ていると、絵もチバさんの写真につながっていますね。
A :やっぱり絵の構図も写真同様、イメージが先にあります。

Q :これからは絵も発表したらいかがですか?
A :今年の「花まつり」で発表しようと考えましたが、制作時間が長過ぎるので諦めました。  でも、今後はガッツリ描き、発表したいと考えています。

 ここで宮島が、持参した写真作品をチバさんに見せる。


宮島永太良の写真作品

Q :私も自分が撮影した写真を持ってきました。  元々、抽象画が好きだったので、抽象的な写真を撮ってみたいと思っていたのです。  例えば、これは「グラスの底」です。

 ここでふたりは、宮島の写真を見ながら、再び濃密な作品談義。

A :視点が面白いですね。  自分では、あまり切り取らないシーンを宮島さんは撮影している感じがします。  私の好きな「何だろう?」がある写真ですね(笑)。

Q :これ以外にも違う写真があって10月に開催される「ガーリー展」に出品する予定です。
A :それは、どんな内容ですか?

Q :以前、女性に体操服やセーラー服を着せて撮ったコスプレ写真です。
A :現在、女子高生を被写体にした作品が話題になった青山祐企さんという方の写真も注目されているようです。  加えて、今夏の個展「6月の卒業式」で拝見した宮島さん独特の明るさが、秋には写真でも見られそうなので楽しみです。  あと質問ですが、撮影前に色々調べたりしますか?

Q :写り方が違うので調べることもあります。  また、全てがそうではありませんが、自分の中で「アート」、「報道」、「記念」等にジャンル分けして、撮影に臨みます。
A :それは被写体を見て、決めるのですか?

Q :そうです。  色々な状況がありますが、興味が沸く光の入り具合や反射を、一度自分にインプットすると、知らぬ間にその思いに突き動かされることがあります。
A :前号で載せていただいたクラゲの写真は、「海」をテーマにして先に展示が決まっていました。  それで江ノ島水族館へ行き、撮影をしました。

Q :水族館は良いですね。  私もイメージを受け、作品化したことがあります。  ただし、もっと厳密に言えば、印象的なサウナ屋さんの水槽でした(笑)。

 宮島、チバさんに作品を見せる。


宮島永太良の写真作品

A :サウナと言われなければ、わかりませんよ。  とても面白い作品ですね。

Q :では、海とか水はチバさんにとって被写体になりえますか?
A :そうですね。  海は私にとってかなり近い存在ですから。

次号に続く


チバエリさんと宮島永太良

(文・写真 関 幸貴)
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