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連載第10回 嵐の裏では…

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悲しき怒濤

 

今年もこの時期が来てしまった。
私の相棒に風神というのがいるが、
そいつがまた張り切っている。
「おい、雷神、今年もまた暴れるぞ!」
そう言って奴は毎年、
この私を誘って年に一回の大暴れをはじめる。
もちろんそれは我々に与えられた任務なので、
やらないわけにはいかない。

私はその昔から、天上で電気なるものを作り、
地上にばらまいてきた。
地上の者たちはそれにより私のことを恐れ、
ある時は命さえ落とすこともあったが、
私のことを恨みはしなかった。
そればかりか最近は、地上でよりよく生きるために、
私の電気をうまく使いこなしているようだ。

困ったのは相棒だ。
袋の中からあたりかまわず風を吹き出し、
地上の者たちの食料、すみか、ある時は命まで
逆に袋の中に吸いとってしまう。
「もうちょっと加減してはどうだ?」
そんな私の忠告も聞かず、奴はそれをしなければ
自分自身が無くなってしまうかのように夢中で暴れ回る。

皆から恐れられ、嫌われながら、こうして長きに亘り、
天の定めた任務を果たし続けるのは
正直言ってつらいものだ。
地上の者が賢くなればなるほど、
我々は老いぼれてくるのだから。
地上の者たちが我々を完全に
抹消してしまえるほど賢くなったとしたら、
我々も天の定めを全うできずに消えてゆくのだろうか。

space悲しき怒濤
「悲しき怒濤」

宮島永太良

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