Road : つれtakeロード
■ 好評連載!
日常生活を離れた宮島永太良が気ままに小さな旅をします♪
第3回:銀座
9月下旬の祭日/午後4時過ぎ、たくさんの人々が行き交い、秋風が吹き始めた銀座の歩行者天国を、宮島永太良は6丁目から4丁目の書店を目指していた。
目的は‘教文館’で開催中の‘藤城清治さんの光と影の動物園展’の会期を確かめるためだ。
「昔から藤城さんが描く作品には影響されています。
友の会にも入っていて、かつて私の個展を見に来てくれた時には感動しました。」と、宮島永太良は嬉しそうに笑った。
表通りから、宮島が壁画を描いた‘健康院’や、普段から通っているお蕎麦屋さん、エスニックなカレー屋を巡り、今年になってから見つけたと言う、日比谷公園寄りの不思議な通りに向かった。
そこは線路のガード下にあり、外光が遠くに見えて商店街風の通路は長く、ほとんどがシャッターを下ろしている。
「休日だからではなく、平日でしたがこんな感じでした。私が仕事で銀座に通い始めてから10年以上経ちますが、ここをみつけたのは最近です。
あの時は、こんな場所が銀座にあるなんて意外な感じを受けました。 東銀座にもう一ヶ所、ここに似た雰囲気の通路があるので行ってみましょう。」
夕闇が迫る中、銀座4丁目を過ぎ、次の通路のある歌舞伎座方面を目指す。 歩きながら、宮島に銀座への幼い頃からこれまでの思いを聞いてみた。
「子どもの頃、小田原から親に連れられて東京へ来る場合は必ず銀座だったと思います。 それで、デパートの屋上で遊ぶ…。 それから、昔は晴海で開催されていた‘モーターショー’の帰りに寄ったりしましたね。 当時からウィンドー内に車が飾られていた4丁目の日産ギャラリーは印象的でした。 でも、別に意味もなく中学校から25歳頃までは銀座から足が遠のきました。 そして、26歳になって久しぶりに銀座を再訪した時は、街の佇まいが昔と変わらず、初めて銀座に感動しました。 その後、興味がわいたので、銀座について色々調べたら中央通りに都電が走っていたことが分かり、歩行者天国時には、かつて都電が走っていた経路を歩き、ひとりで疑似体験を楽しんでいます。」
三越と三原橋交差点の中間辺り、目指す地下通路辺りに到着したが、目的地がナカナカ見つからない。 裏に回って、やっと発見した。 ガード下と比較するば小規模だが、ここも営業しているのは飲み屋さんが一軒あるだけ。 かつて営業していた映画館も今春に閉館。 時代の移ろいが、ここまで影響しているのかもしれない。 短時間だが、かなり歩き喉が乾いたので映画館跡の2階にあり、宮島が何度か入ったことのある居酒屋で夕刻の街をみながら話を聞いた。
「銀座へは仕事で、ほぼ毎日のように通っています。だから、私にとっては特別な存在ではありませんでした。
でも、ガード下の光景に出会った時、銀座にも新宿のような人間臭さを感じさせるレトロな場所があることを知り、心の中にあった銀座との距離が一気に縮まった気がしました。
不思議ですね(笑)。
そして、これからもこの街に通い続けるワケです。 また、面白い出会いが期待できそうです。」
そう言うと、宮島は、グッと生ビールを飲んだ。