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Friendsには、ジャンルを問わず宮島永太良の友人知人が登場!
毎回、親しい視線と言葉で宮島の実像に迫ります。


◎ 大橋美加さんとジャズを語る♪ 

大橋美加さんと宮島
 

◎大橋美加(おおはし みか)さんプロフィール

大橋美加 さんspace
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ジャズシンガー、シネマ・エッセイスト。
8月29日生まれ、乙女座・AB型・東京都出身。
父はマルチタレントの大橋巨泉さん、母はジャズシンガーのマーサ三宅さん。 長女は女優の大谷瑠奈さん。
短大在学中に東大ジャズ研にスカウトされデビュー。
1986年ファースト・アルバムをリリース。日本ジャズ・ヴォーカル賞新人賞を受賞。 以後、NY録音2枚を含むリーダー・アルバム10枚を発表。
加えて、シネマ・エッセイストとしても、これまでに3冊の著作を発表。
1996年4月よりNHK-FM生番組の構成、選曲、DJを足掛け10年間担当。
2005年11月6日よりFM東京のPCM放送『ミュージック・バード』のジャズ専門チャンネルで『美加のNice 'N' Easyタイム』(23:00 - 24:00)放送開始。 
現在は全国コミュニティーFM、インターネットでもオンエア中。
2012年12月5日、11枚目のリーダー・アルバム『By Special Request』を発売予定。
 

枯葉が舞い、音が澄む季節。
ふたりの話題も何時しかジャズへ…

宮島永太良(以後・E ):
改めて、美加さんご自身についてお聞かせください。  ジャズは、何時から歌い始めましたか?

大橋美加さん(以後・M ):
母が家でジャズヴォーカルのレッスンをしていたので、幼い頃からジャズソングに親しんでいました。  でも、歌い始めたのは12〜13歳頃です。

大橋美加さん
 撮影:松林政美

E:きっかけは?
M:母が年2回開催していた発表会のためでした。  発声練習は体に良く、英語の発音の練習もためになるので、私も『Too young』等、若い子が似合うナンバーを中学1年生から、年に2曲を覚えて歌っていました。  だから、ジャズは私にとって身近な存在。  その魅力に気付いたのは映画に惹かれた2年後の大学時代でした。  そして、東大のジャズ研からスカウトされ、ジャズシンガーとしてデビュー。  その後、ジャズにのめり込み何年か経った頃、NHKのオーディションを受けて合格。  NHK-FMでポップス&ジャズ番組のDJ・構成を’80年代に3年間と’96年から2005年3月まで足掛け10年勤めさせていただき、現在も民放FM局で『美加のNice’N’Easyタイム』という番組を持っています。

E:NHK-FM番組終了時、リスナーの反応は?
M:同じ時間帯、曜日別にDJをしていたのは、作曲家の服部克久さんや音楽評論家の萩原健太さんら、紅一点は私だけ。  局側から『終了を言ってはいけない』と言われていたので、終わる2週間前に番組で発表したら、『終了するなら今後聴取料金払わない』、『絶対やめないでくれ!』とか、凄い反響が届きました。  オンエア中から、入院している方を始め熱心なリスナーが多く、嬉しいお便りをたくさんいただきました。  終了後膨大なファンレターを捨てられず、やっと最近8年目にして、自宅に留学生を迎え入れるスペースのため、泣く泣く処分したのです。

宮島

E:興味深いお話ですね。  確かに私も手紙を受け取ると大変嬉しく、今のメールとは、違う味わい、アナログの良さがあります。  しかし、NHK-FMでも貴重な経験をされた美加さんにとってジャズの魅力とは?
M:私が歌うのは、1920年代から40年代に作られたジョージ・ガーシュインとかコール・ポーターなどのスタンダードナンバーがほとんど、それ以降の曲と言えば、1954年にバート・ハワードが作った『Fly me to the moon』ぐらい。

E:確かに古い作品ばかりですが、私も好きな曲もかなり重なります。  でも、何故、美加さんはその時代の曲を好むのですか?
M:ひとつには、あの時代の曲には、『ヴァース』が入っているからです。

E:『ヴァース』?
M:『ヴァース』を日本語にすると『導入詞』かな。  本体のコーラス部分に入る前に歌詞の内容状況を説明するパートと考えれば、分かりやすいと思います。

E:何故、ヴァースのある曲が生まれたのですか?
M:ニューヨークのマンハッタンに楽譜屋さんが集中するティンパン・アリーという区画があったのです。  そこで、ガーシュインやコール・ポーター、リチャード・ロジャーズなど、のちに『アメリカン・グレイト・コンポーザー』と、呼ばれるようになる人たちが自作曲を自らピアノで弾き、通りの客たちが足を止めて『いい曲だなあ』と思い楽譜を購入するという仕組みだったのです。  当時はブロードウェイ・ミュージカルで使われてヒットするという流れでしたから、役者が台詞がわりにヴァースで芝居の内容を説明する必要があったのだと思います。

Jazz Club signboard

E:生演奏の販売活動ですね?
M:当時は、今と違いメロディーと歌詞しか頼るものはありません。  映画で言うなら、CGや3Dに頼らず、役者のうまさと脚本の面白さだけで勝負するようなものですね。

E:でも、曲がブロードウェイ・ミュージカルで話題なり、それぞれが楽譜を購入して歌えば、全てがオリジナルになり得た訳ですね。  今では、想像できませんが、それはそれで楽しく素敵な状況だったと思います。
M:メロディーと歌詞に力があるから何度歌っても飽きない。  ジャズヴォーカルの醍醐味は、音を変えるフェイクと、切ったり繋いだりしてタイミングを変えるシンコペーションです。  私は70年代が10代。  その時代に聴いた音楽、クィーンとかロバータ・フラックに一番影響されているはずですが、彼らの曲は、オリジナルで完成しているので、次の名ヴァージョンが生まれる可能性が少ない。  歌曲そのものより、アレンジなどに凝って曲のイメージを固定させる表現方法になってきたからでしょうね。  例えば、『やさしく歌って』も良い曲ですが、やはり、ロバータ・フラックの歌が一番。  それと比較して‘20〜‘40年代の歌曲はメロディーとシンプルな歌詞だけ。  味付けは各人各様ができ、演者次第でどんどん個性的なヴァージョンが生まれる可能性が高いわけです。  例えば『Fly me To The Moon』は、1954年に作られたのでブロードウェイ・ミュージカルのための曲ではありませんが、ヴァースがあるので古い作風を継承、ふたつの時代の架け橋と言える名曲です。  現在私には生徒が20人ほどいて、全員が、『Fly me ~』を歌っているので、20通りの歌い方を教えたことになります。

大橋美加さんと宮島

E:なるほど、今のお話で歌う人が、エッセンスを加味することのできるスタンダードナンバーの魅力が垣間見た気がします。  つまり、誰もがオリジナルを歌えるのですね。
M:それが、『永遠のスタンダードナンバー』と言われる所以。  その思いを、生徒を含めた次の若い世代に伝えて行きたいのです。

E:12月5日発売の新しいアルバムにもその気持ちは、入っていますか?
M:アメリカでは、何らかのテーマを決めて作っているアルバムが主流です。  私もその姿勢を大切にして、これまでコンセプト・アルバムを作ってきましたが、今回は、『By Special Request』*として、近年お客様やミュージシャン仲間からいただいたリクエスト曲を集めました。  結果的に皆が良く知っている曲から、日本人で歌っているのは私だけと言う曲まで入っています。  リクエストが色々だから、歌も色々。  ヴァラエティに富んだ楽しいアルバムになりました。  私も宮島さんへのリクエストが、ひとつあります。

Twilight

E:何でしょう?
M:俯瞰から見た宮島さんのお弁当の作品が大好き。  そして、お弁当文化は日本だけ。  だから、宮島さんに全国を巡ってもらい各地のお弁当を見て、良いイメージに出会ったら、携帯のストラップ等、可愛いグッズシリーズを作って欲しいです。  合羽橋の食品サンプル好きな私の願いです(笑)。

E:それ楽しいアイディア。  小田原の鯛飯も東北帰りに食べたイクラ弁当も候補になります。  面白いヒントになりました(笑)。  加えて、美加さんとはジャズとアートのコラボも考えられます。  これからも宜しくお願いいたします。

今日は長時間ありがとうございました。

 

大橋美加さんニューアルバム『By Special Request』

12月5日発売♪
大橋美加さんニューアルバム 『By Special Request』*
『beautiful love』を始め全10曲。
販売元:スペースシャワーネットワーク
発売元:グ・ルーヴ  商品番号:WNCS-5132
JAN:4523177551329
定価:2,800円(税込み)。

 

写真 / 文  関 幸貴
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