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ピアニスト小倉まこさんがコロナ禍で考えていること…

小倉まこさん
 

小倉まこさんプロフィール

ピアニスト
7月29日横浜生まれ
洗足学園大学音楽学科教育学部卒業。
大学卒業と同時にピアノ、電子オルガン講師として活動を開始。
クラシックピアノを渡辺光子、佐々木和子、清田千津子各氏に師事。
ジャズピアノを市川秀男氏に師事。
ピアノ教室を主宰しながら数多くのライブコンサートやコンクール等に出場。
イベント等も手がけ、幅広い分野で音楽活動を行っている。
☆まこさんブログ&Facebook
http://makotopics.blog92.fc2.com
https://www.facebook.com/masako.ogura.1


8月上旬の横浜、長者町にあるまこさんのレッスンスタジオで、ソーシャルディスタンスを考え、マスクをしてインタビューを行いました。


月刊宮島永太良通信編集部
(以後Q):よろしくお願いします。コロナウィルス感染症の影響で全世界の動きが一変して半年以上が過ぎました。その間、感染者数は増え続け4月7日には日本でも緊急事態宣言が出され、5月25日に全国での宣言解除がされるなど様々な動きがあり現在も混迷状態が続いています。こうした今までには考えられない状況で、まこさんはどのようなことを考えていますか?
小倉まこさん(以後A):日を追うにつれ、とんでもなく難しい問題が起きてしまったなと感じています。

小倉まこさん

Q:難しい問題?
A:はい、まず最初に考えたのはピアノ教室の生徒さんの家庭事情でした。それぞれの保護者の皆さんは医療関係や観光業をはじめ職種は様々、生活基盤は違うし価値観も違います。その状況を考えると、医療関係に従事している方は感染リスクが高いことで悩むだろうし、観光業に携わっている方は激減した仕事を心配しているはず。個人個人の問題がそれぞれに切実だから、迂闊なことは言えないなと思いました。一方、ニュースもSNSも皆が色々な言葉や考えを発信し、私自身も落胆したり、悩んだりもしました。これはある意味、情報過多の弊害と言えるかもしれません。だから、余計なことを考えたくない時はただひたすらピアノを弾いていました。

Q:主宰しているピアノ教室はどうしたのですか?
A:まず、緊急事態宣言前の4月2日にはレッスンしている人たちに向けてラインで次のメッセージを送りました。
「皆さんこんにちは。小倉です。今日、千葉県でピアノ講師がコロナ感染というニュースを知りました。職種を出しているという事は感染を懸念しての事だと思います。学校再開も懸念されているこういう状況の中のニュースはとてもショックでした。今、来て下さっている生徒さんは、教室入ったら除菌スプレーで必ず除菌してからピアノに触れて下さい。ピアノも除菌します。マスク着用もお願い致します。少しでも体調悪かったらお休みお願い致します。振替は致します。心配な方はオンラインレッスンも検討中です。お休みされても構いません。個々に相談にのりますので心配な方は連絡下さい。早い収束を祈るばかりです。私は極力外出を控えます。公共機関は使いません。皆様もお体に気をつけて乗りきって下さい。よろしくお願い致します。」
*編集部注:メッセージは一部省略しました。

小倉まこさん

Q:メッセージを送ってからの反応は?
A:送った時点で2組がお休みをし、緊急事態宣言で約半分がお休みしました。お休みする生徒にはオンラインレッスンを提案し希望者に実施しました。でも、5月末の緊急事態宣言解除で全員が戻ってきました。

Q:その間のレッスンの様子を教えてください。
A:まず、通いの生徒さんは入口でアルコール消毒をしてもらい、教室のドアは開けっぱなし、自宅には2台グランドピアノが置いてありレッスン時は間隔があり接近しないので大丈夫でした。あと初めてオンラインでもレッスンを行いました。

Q:オンラインでのピアノレッスンですか?
A:はい、今の子どもは多くがスマホを持っているのでLINEを使って自宅でのレッスンの様子を動画で、わからない所は譜面を写メで送ってもらい、それを観て私がコメントや私の演奏動画等を返す方法で行いました。

Q:オンラインレッスンはいかがでしたか?
A:予想外だったのは、子どもたちがメチャメチャやる気があってLINEは鳴りっぱなし、とにかく嬉しい悲鳴でした。だから、練習曲ハノンは週一で送ってくださいと頼みましたよ(笑)。そして、LINEの向こう側で実際にレッスンを見てくれているお母様たちにも好評だったのは何よりでした。

 
まこさん

Q:これまでのレッスンとは違う手応えがあったのですね?
A:はい、加えて私がクラシックのピアニストで良かったことを実感しました。というのも、音大在学中から卒業後も音のアレンジの勉強をしていたお陰で音楽を論理的に説明するのは得意。オンラインレッスンは言葉で音を奏でた感じです。だから、生徒たちに対してここぞとばかりに、これまで語り切れていなかった作曲家のクセや聴いて欲しい楽曲等様々なことを伝えました。直接に会っていれば、手の動きについても感覚的にアドバイスはできますが、オンラインだと無理。だけど、違うパートでそれをカバーができたかなと思います。とにかく生徒とのやりとりは楽しかったです。

Q:それは新たな展開ですね。ところでピアノ教室以外のライブ活動はいかがですか?
A:他のライブでクラスターも発生していたので、私が主催のイベントはリスク回避もあったし、共演者にも肩身の狭い想いをして演奏してもらうのが嫌だったので全てとりやめにし、それ以外の依頼のライブは全部中止か延期になりました。それも大きなイベントから順になくなったので、ミュージシャン仲間は大変です。ただ、ライブハウスでも新しい動きが始まっています。

会場風景

Q:新しい動きとは?
A:ライブ配信です。横浜のエアジンでは、配信用に高価な機材をたくさん揃えたので音も映像も凄く良いです。だから、是非大きなモニターで良いスピーカーかヘッドホンを用いてライブ配信を聴いて欲しいと思います。

Q:既にまこさんは、ライブ配信は経験したのですか?
A:はい、私は恵まれたことに7月5日エアジン、7月26日にはゲーテ座の演奏がライブ配信されました。ライブ配信だと、日本だけじゃなく海外の人も見てくれるから、ミュージシャンにはマーケットが広がったと考えられるし、新しいチャプターがどんどん出てくるから感覚的にも楽しいです。

ライブ配信

Q:確かに新たな動きですね。そこからもコロナの影響で1年前とは全く違う生活スタイルが垣間見えます。この状況下、まこさんはこれからどのように歩んで行きたいと考えていますか?
A:4月に緊急事態宣言が出た頃は先の見えない不安でめちゃくちゃ落ち込みました。その後も様々なことがありましたが、新しい視野もなんとか開け、5月の終わり頃からは少しずつですが気持ちも上向きになってきたかなと思います。でも、決して油断しているわけではありません。コロナが収束するまではマスク、アルコール消毒、ソーシャルディスタンスを考え、不確実な情報に惑わされることなく、これまで同様しっかりピアノを弾き続けて行きたいと考えています。

まこさん

Q:暑い中、今日はありがとうございました。

*インタビュー時の背景の絵は、村田真さんの作品です。

 

(構成・撮影 関 幸貴)

 
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