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加藤力之輔さん、新作とコロナ禍の生活を語る…

加藤力之輔さん
 

加藤力之輔さんプロフィール

画家
1944年神奈川県横浜市生まれ、京都在住。
1972年からスペイン国立プラド美術館で4年間〈ティツィアーノ〉を模写研究。マドリードの美術研究所で人体デッサンの修練でモノの見方を学び続ける。 日本、スペインで個展多数開催。2004年より覚園寺(鎌倉)・新善光寺(京都)・梅上山光明寺(東京)で「異文化空間展」開催。同時代ギャラリー(京都)、印象社ギャラリー、文藝春秋画廊、小川美術館(東京)等で発表。
NHK日曜美術館にも出演。 現在もマドリード、京都で制作を行う。


新作とコロナ禍の生活について

今年3月に鎌倉のGalleryジタン館で予定されていた加藤力之輔個展「時の足跡 La huella del tiempo」がコロナウィルス禍の影響で延期され、6月24日(水)から7月6日(月)まで開催されました。その会場で加藤力之輔さんに新作と、コロナ禍での作品制作等について語っていただきました。なお、今回の作品展示は1階の画廊だけでなく2階の居室にまで及ぶと共に、加藤さんのご子息である大輔さん、Angelaさん夫妻の作品も展示されました。

加藤力之輔個展「時の足跡 La huella del tiempo」


月刊宮島永太良通信編集部
(以後Q):今日はよろしくお願いします。まず最初に今回ジタン館に展示した作品についてお話しください。
加藤力之輔さん(以後A):私の画業の根幹をなすのは、日々のデッサン(素描)です。特に人の姿(人体)は欠かすことのできない制作の主題で、対象をよく観察し描きとめる行為は、40年以上にわたり私の内に形態の量感や美しさを適格に捉える「物の見方」を育んできました。そこから生まれた作品のひとつであり、私の内なるエネルギーの集積と言えるのが群像画です。まず、それを若い人やアートをやっている方々に是非観てもらいたいと思い展示しました。

Q:加藤先生の力強い群像画にはいつも圧倒されます。それに加えて花を描いた作品が今回は多いように感じますが?
A:以前はもっと大きな花を描いていましたが、現在の展示作品は今年2020年に入ってから描いた新作ばかりです。

新作の花の絵

Q:生命力あふれる花々ですが、描き方は以前に比べて何か違いがありますか?
A:素描はものの見方なので世代や時代で違います。若い頃は花も隅々まで細かく観えましたが、歳を重ねるとそれもできなくなります。では、新作はどうしたかと言えば、「強く強く観る」その意識を持って描きました。ですから、遠くからではなく近くで私の花を観てもらうと力強い線で表現しているのが分かると思います。これはベラスケスに代表されるスペインリアリズムの系譜と言えるかもしれません。

Q:確かに離れて観るのと近くで観るのは印象が違います。かつて加藤先生がお描きなった花の作品と観比べたくなりますね。ところで、新作の花を描いていた頃は、世界各地でコロナウィルスが猛威をふるい始めた時期に重なりますが、京都での日常生活はいかがでしたか?
A:画家にも様々なタイプがあります。私はアトリエで描くタイプなのでコロナ禍にあってもそれ以前と変わらない生活を送り、ただただ毎日淡々と描いていました。

 
作品と並んで

Q:そうですか。では、3月のジタン館での個展も延期になり、作品制作以外の活動はされていましたか?
A:実は4月7日(火)から19日(日)まで、京都市中京区にある同時代ギャラリーで個展を催していました。

Q:緊急事態宣言も出て大変な時期だったと思いますが、個展はいかがでしたか?
A:同時代ギャラリーは、1階から2階に移り面積も倍になったのでソーシャルディスタンスの問題もなく、常に新鮮な空気を入れ換気を心がけていました。また来場者も1日平均10名前後、それもフリーのお客さんではなく、美術関係者や案内状を出した方々がほとんどで来場者は少なかったけれど、天候には恵まれました。とにかくあの状況下で開催できたのは良い経験でしたが、私の個展が終わるのと同時にギャラリーは休みに入りました。

Q:個展会期中、ご自宅からギャラリーまでの交通手段はどうしていたのですか?
A:バス移動ですが、観光客がほとんどいないのでバスも空いていました。その車窓から見ても、外から人が入って来ない京都には昔の風情や雰囲気が漂っていました。また、そうした静寂の古都で良い時間を味わった方々も少なからずいると思います。かく言う私も、いつもより静かに集中して制作を進められています。

会場風景

Q:お話を伺っていると加藤先生のアトリエでの姿が目に浮かびますが、この状況下の若いアーティストについてはどう考えますか?
A:私は古いタイプなので、描いた作品を観てもらうのであまり影響はありませんが、現代アートは、創作や表現でもライブペインティング等、アーティスト個人だけでなく他の方々との交わりもあるので、その関係性が絶たれて大変だと思います。

Q:これを機にアート面で新しい動きがありそうですか?
A:コロナ禍が始まってまだ時間的には短いのでなんとも言えませんが、早く収束すれば、また元の状態に戻ると思います。だから、私の場合はこれからも毎日毎日描いてこれまで通り普通に過ごして行きたいです。

Galleryジタン館

Q:最後の質問です。スペインのご家族との連絡はどうしているのでしょう?
A:もっぱらLINEを活用しています。便利ですよ(笑)。時々、家族がマドリードの写真を送ってくれるんですが、澄んだ青い空に白い建物の風景にほとんど変化はないけれど、人影はありません。お陰でマドリードの街の美しさも再認識しました。まぁ、なんにしても今はコロナ禍の速い収束を願い祈るしかありません…。

Q:今日はありがとうございました。

*インタビューは、鎌倉のGalleryジタン館で2020年7月1日に行いました。

 

(構成・撮影 関 幸貴)

 
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