TOPTalk : 対談

今回は、藤間久子さんに元町の新事務所近くのカフェで
私的な写真について語っていただきました…

藤間久子さん


◇藤間久子(ふじまひさこ)さんプロフィール
フォトグラファー
(株)アマノスタジオ所属
JPS(日本写真家協会)所属
岡山県新見市生まれ
日本ジャーナリスト専門学校卒業
アマノスタジオHP https://www.amano-studio.co.jp/
https://www.facebook.com/profile.php?id=100009731647697

 

藤間久子さん写真生活を語る! 後編

藤間久子さん


☆先月からの続き…

月刊宮島永太良通信編集部
(以後Q):フォトグラファーとして様々なことを経験してきた藤間さんですが、仕事の上での今後の展開は?
藤間久子さん(以後A):写真の仕事を始めて約20年になりますが、最近になって、やっと自分に合っている仕事なのかなと思える様になりました。と言うのは、硬い仕事で、普段は写真にあまり縁のない方々を撮影した後、ディレクターを通して私が撮った写真が欲しいと言われることがあり、そんな時は「良い表情が撮れて気に入っていただけたのかな」と、やりがいを感じています。私自身、人物を撮るのは苦手かなと思っていたけれど、喜ばれることが多いので、実は人物撮影は合っているのかもしれません。これからも写真の仕事は続けて行きたいですね。

Q:仕事での人物撮影は特に難しい分野だと言われています。だからこその思いですね。では、ここで話題を変え、藤間さんの個人的な写真についてお聴きします。仕事以外では、どの様な被写体を追っていますか?
A:メインは植物がある風景、やはり自然を撮るのは好きです。自分自身ではライフワーク的に撮影していますが、そのことはあまりアピールしたことはありません。

藤間久子さんの作品 © 藤間久子

© 藤間久子

Q:植物を撮り始めたのはいつ頃からですか?
A:絵を描く感覚と同じで、カメラ「写るんです」を初めて持った頃だから、高校生の頃です。でも、植物好きは物心ついた頃からで、風景の中の植物が、私にとっては最大の魅力、その思いは今も変わりません。

Q:植物のある風景に惹かれた動機は?
A:私は岡山県の山の中で育ちました。幼い頃、父と一緒に冬の山中を歩いていて、振り返った時、白い雪の中にキラキラ光っている斜面に薮柑子(やぶこうじ)の赤い実を見た時、「なんて美しいモノがあるんだろう!」と一瞬で心を奪われました。

Q:それって就学前の幼い子の感性とは思えませんね。
A:そうかもしれません。でも、そのことを誰に言うでもなく、薮柑子への気持ちを人に話し始めたのはかなりオトナになってからです。あの日の経験がきっかけで知らぬ間に花とか植物の美しさを追う様になったのだと思います。そして、今までにたくさんの植物を撮ってきましたが、最初に雪の斜面で見た薮柑子を超えるものはありません。

「薮柑子」 © 藤間久子

「薮柑子」 © 藤間久子

Q:その心に残る薮柑子は、どんな感じでしたか?
A:白い雪の中から赤い頭をもたげる様にしていて、しかも雪の雫でキラキラ光っていて、宝石以上の美しさと野生ならではの力強さを感じました。そしてその後、山や野原などその場所でしか育たない草木があることを徐々に知り、私は絵や写真で植物を表す様になりました。とは言っても、強い自覚があるワケではないので、写真を撮り始めた高校生の頃は、妹や家族を撮っていて、歳を重ねるにつれて植物への道が見えてきたのだと思います。

Q:どんな時に植物を撮っていて手応えを感じますか?
A:私は野草を撮影することが多いのですが、人目にはつかないけれどよく見るとすごく素敵な造形をしていたり、厳しい環境の中で美しい色をして咲かせているのを見ると、自然界の力強さを感じます。それで、たまに野草と目が合い、「見て!」と言われ撮ると、別の野草からもアピール! こんなことを話すとおかしいかもしれませんが、勝手に私がそう感じているのだから仕方ありませんよね(笑)。

Q:野草を作品として撮り始めて何年ぐらいですか?
A:あまり考えずに撮っているので、どれくらいになるのか分かりません。でも、10年以上前にウチのボスの森と、知り合いのデザイナーから「個人的にどんなの撮っているの?」って聴かれ、見せたら「藤間らしい写真だね」と私的には嬉しい評価をいただきました。以降、人に見せることも視野に入れて撮るようになりました。それから仕事をしている雑誌に掲載の機会を得たり、2006年に馬車道で行った私の初個展でも発表しました。

藤間久子さん

        © 藤間久子

Q:写真展で野草の写真を観た人の反応は?
A:初個展は色々な写真を発表しましたが、「そこに藤間さんがいて、撮っている気がした」と言われた時は嬉しかったし、野草の写真に関しては「植物と対話しながら撮っている気がした」「花とちゃんと向き合っている感じがした」と何人かに言われた時は、植物への気持ちが純粋に表わせているのかな…という感触を得ました。

Q:作品から藤間さんが見えたのかも知れませんね?
A:そうだと嬉しいです。

Q:野草は今後も追い続けますか?
A:はい、これからも気張らずに撮り続けていきます。また写真集の話もあるので、まとめられたら本当に嬉しいです。

藤間久子さん

Q:さて最後の質問です。コロナ禍で写真の仕事に、どの様な影響がありましたか?
A:まず、多かったイベント関係の撮影がグッと減りました。あとレギュラーだった地方での小中学校の取材がなくなり、日本各地へ行けないのがもの凄く寂しいです。何故なら、往復の自由時間にその土地の風景と植物を撮るのが楽しみだったのに、それもできなくなってしまったからです。非日常で撮影する時って、いつもと全く違う環境で自分がどう反応し、どう撮るのか分からないので、自分自身にとっても楽しみでもあるのです。だから、それができないので今はムズムズしています(笑)。

Q:藤間さんが、地方へ行ける日々が戻ってくることを願っています。今日はありがとうございました。

 

終わり

取材日:2021年10月6日
*撮影時のみマスクを外しました。

(構成・撮影 関 幸貴)

 
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