TOPTalk : 対談

コロナ禍、横田三良さんと日本の農を考えた…   後編

横田三良(よこたみつよし)さん
 

横田三良(よこたみつよし)さんプロフィール

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米農家、クレーンオペレーター
1964年 茨城県取手市生まれ、蠍座。
1984年 東京デザイナー学院 インテリアデザイン科卒業。
取手市と龍ケ崎市に大小12ヶ所に点在する田んぼ(総面積
4町弱=東京ドーム約3個分)を営む米農家4代目。
アーティスト/シモン楽騎(アキラ)さんや宮島永太良とは
旧知の仲。トローリング(海釣り)、スキー、音楽美術鑑賞
から骨董品収集などアウトインを問わず多趣味の持ち主。
小型船舶1級免許所持。

 

これからの農と人との関わりを横田三良さんが語った!

横田三良さん


月刊宮島永太良通信編集部:
(以後M):前回からの続きです。これからを生きる私たち日本人は、農とどのように向き合っていったら良いと横田さんはお考えですか?
横田三良さん(以後Y):私としては、誰もがそれぞれ自給自足の生活を営んでいけるのが理想です。しかし、それはあまりに現実離れしているので実現不可能だと分かっていますが、とにかくもっと多くの方々に農業に関心を持ってもらいたいと思います。

M:どのようにですか?
Y:ウチは米農家だから米は言うに及ばず、野菜も母が作ったモノを食べていますが、多くの都市生活者は、それぞれの生産者がいるからこそ八百屋さんやスーパーで野菜などを手に入れることができるわけです。でも、それを当たり前と思わず、手近で農業体験をすることを私はオススメします。方法として好きな野菜を自宅やマンションのベランダ、近くの貸し農園で育ててみるのはいかがでしょう。米作りは難しいけれど野菜作りなら初心者でも案外大丈夫、失敗する確率は低く、そのうえ自分で作ったモノなら食べても安全だし味も格別だと思うし、小さな自然とも触れ合えます。

 
工具

M:自分で作物を育てるのですね。オトナや親として未来を支える今の子どもたちのことを考えたら、そうした土に接する行動は大切なことですね。
Y:そうです。異常気象、気候変動の影響もあり、かつては考えられなかった北海道産米が注目される現在、予測不可能なことも多々あります。だからこそ身をもって野菜作りで自然に触れ、日常的に農と関わることが大事だし、そこにはお金で買えない大事なものが潜んでいるはずです。また、そうした些細なことから未来を窺い知ることができるかもしれません。

M:横田さんのお知り合いで、そうした農的なことを実践している方はいらっしゃいますか?
Y:極端な例かもしれませんが、まず、コロナ禍で知り合いの若い家族が将来の自給自足を視野に入れ、最近、首都圏から地方に移住したと聞きました。そして、それに続く方々も出てきそうです。あと、私が直接お付き合いしている東京の青山で有名人も懇意にする専門店を営んでいる60代前半のオヤジさんが、コロナで商売にならないと一旦店を閉め、やはり農好きだった先代から受け継いだ山梨県の白州で農業や鶏を飼って暮らしているそうです。昔に比べ、交通の便が良くなった今では、そうした二地域居住も可能。また、都会と田舎の捉え方が時代によって大きく変化したようです。

 
田んぼにて

*2019年8月撮影

M:知らないところで様々な変化が起きていますね。コロナ禍で生活を見直す時期ですが、確かに人が生きるため基本「食」に直接繋がる農についても皆が考える時ですね。
Y:全く同感です。農は食に繋がり、食は健康の源、だからこそ疎かにはできません。現時点で後継者も含めて農業には農薬、遺伝子組み換え等様々な問題があります。だからこそ日常的に食べるモノに対して皆が関心を常に持っていてほしいです。そうでなければ未来がどうなるのか分かりません。

M:これまでのお話で気候変動、虫害等、農業分野は問題山積です。そこで改めて最後に横田さんに伺いますが、これからどのように農業と向かい合って行きますか?
Y:私の意地もあり、これまで淡々と米作りを行ってきましたが、これからも迷うことなく続けて行きます。だって自分で作って食べるのが私にとっては基本だし、とにかく自分で作ったものが安心して食べられるのが何よりです。ただ、米を作っていても経済的には赤字で大変だから本当は逃げ出したい。加えて歳も歳だけど、健康に気をつけながらやれるところまでやりたいと思っています。だって、なんだかんだといっても私は米作りが好きなんです(笑)。

 
時計のコレクション

M:好きと言えば、お話を伺っている部屋を見回すと古時計、旧タイプのラジオから絵画やレコード、それに伴うオーディオを数多くお持ちのようですね。次の機会には、農の話題から少し離れて、横田さんのコレクションについて語っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか?
Y:それはまた面白そうですね。次にお会いする日を楽しみにしています。ありがとうございました。

M:こちらこそ、今日はありがとうございました。

 
横田三良さん
 

おわり

  

*2021年1月10日取材

 

(構成・写真 関 幸貴)

 
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