TOPTalk : 対談

<特別企画>米農家から作ることを考える!
農林水産省よると2018年度の日本の国内自給率はカロリーベースで37%。
その中で米の自給率は98%の優等生、だが米農家は前途多難だと言う。
米作りの今を茨城県取手市の米農家4代目、横田三良さんが語った!

 
 
横田三良さん
 

◇横田三良(よこたみつよし)さんプロフィール

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米農家、クレーンオペレーター。
1964年 茨城県取手市生まれ、蠍座、AB型。
1984年 東京デザイナー学院 インテリアデザイン科卒業。
シモン楽騎(アキラ)さんや宮島永太良とは旧知の仲。
トローリング(海釣り)、スキーから音楽美術鑑賞まで
アウトイン問わず多趣味。
小型船舶1級免許所持。    






☆青々と実った田んぼを見ながら横田三良さんが米作りの今を語った! 後編

月刊宮島永太良通信編集部(以後M):横田さんの家庭経済から考えるとマイナス面が強く見えるうえ、オンシーズンは、細かい作業の積み重ねで大変な米作りを横田さんが続けている理由はなんでしょう?
横田三良さん(以後Y):自然と共生した仕事なので天候等、今年の7月の多雨の様に読めない状況が多々ありますが、やはり自分で食べ物を作っていることは精神的に安心感があり、やりがいを感じています。それにウチは4代続いている米農家、田んぼが荒れるのはもったいないし、出来るだけ美味しい米を私が作りたいと思っているからです。

横田三良さん

M:美味しいお米を作る?
Y:同じコシヒカリでも、育つ場所で味の違い、良し悪しがあります。例えば、ウチを例にすると12ヶ所の田んぼの中でも川に近い方が格段に美味しいです。と言うのも、近所を流れる小貝川は、昔はよく氾濫を起こし、その時に流れ込んだ土が良い栄養分をもたらし地味が上がったと言われるからです。土と水は米作りにとって重要な存在、一般的に評判の高い米の産地は良い水があると言われていますが、私が丹精を込めて作った米は、新潟の魚沼産と比較しても遜色ないと自負しています。それに米は、毎年同じ様に出来るわけではありません。だからこそ、年に一度しかできない米への思い入れがあり、いつも一定の味を消費者の皆様に供給したいと考えています。

横田三良さん

M:肥料はどうするのですか?
Y:それが米の味の決め手の一つになるのでもちろん撒きますが、成長を見ながら7月の追肥時期を決めるのは、私より米作りをよく知っている母です。そして、それを行うと間違いなく収穫は増えます。私には、そのあたりがまだまだ分かりません。なんにしても学ぶことがたくさんあります。

M:米作りをしていて楽しいことはなんでしょう?
Y:幼い頃から米作りを見ていて、そのまま慣れでやっているけれど、自然の中で季節の風を感じながら稲の成長を見られるのは心地良いです。あとは、個人的になりますが…

横田三良さん

M:個人的?
Y:ガールフレンドに米をプレゼントできるのは嬉しいし、レストランの食べ歩きをしていて、私が米農家だと分かると、シェフが厨房の奥から出て来て色々と話してくれることぐらいですね。でも、そんな時には他では知り得ない農業情報を得ることもあり、貴重な出会いになります。

M:でも、やはり経済面から考えると米作りを続けて行くのはキツいですか?
Y:はい、前回も触れましたが、母のお陰でなんとかやっている現状です。ウチの面積の三分の一か四分の一で米作りをしている従兄弟は、学校の先生をしているからこそ続けられると言っています。近いうちに少し米価も上ると聞いていますが、それでも経済面のキツさはあまり変わらないでしょう。とにかく兼業でなければ、これからの米作りを続けるのは大変です。

稲穂

M:打開策は?
Y:まず、今の日本人の食料に対して持っている軽い認識を改めることが第一。そして、生産面の一つの方策としてはアメリカの様な大規模農業が考えられますが、平野が少なく山地の多い日本の地形では、それもかなり難しいでしょうね。

M:改めて横田さんに問います。そうした苦しい現状であるにも関わらず、米作りを続けている本音を教えてください。
Y:意地かな…

横田三良さん

M:意地?
Y:そうです。私は米作りが好きだから、お金をつぎ込んでやり続けたい。高い農業機械を購入するのは、カジキマグロを釣りに行くために1億円、2億円のクルーザーを買うのと同じ感覚、ある意味では趣味と言えるかもしれない。とにかく気持ちの上で、私、半分以上は意地でやっています。普通の人じゃ考えられないと思うけれど、決して利益じゃありません。そうした話題に近隣の米農家もあまり触れませんが、同じ思いは吹く風を通して伝わってきます。

時計

M:なんとも暗澹たる米作りの未来が想像されてしまいます。
Y:私はこれからも米作りを続けます。しかし、現時点では後継者はいません。だから、その先はまだ見えてきません。さて、日本の米作りは何処へ向かうのでしょう?

M:同感です。今日は貴重なお時間をありがとうございました。
 

*インタビューは、2019年8月15日に取手市で行いました。

 

終わり

 
(構成/関 幸貴 写真/世紀工房)
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