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アートが気になるインタビュアーが宮島永太良を探る!

 

「宮島永太良研究」第9回

=アートが気になるインタビュアー/A=宮島永太良

:前回は影響を受けた作品、アーティストについて語っていただきました。ところで、マルタはどのように出てきたのでしょうか。
:最もよく聞かれる質問の一つですが、不思議な人は不思議なようなのです。以前「なぜアートをやっていた人がキャラクターを作ったのか?」という質問を受けたこともあります。キャラクターとアートは違うもの、と捉えられている考え方から来るのだと思いますが、そもそもどうなのでしょうか。私がキャラクターも含めた広い範囲でアートを捉えていることは、インタビュアーさんならもうご存じのことと思います。

宮島永太良を囲む

:もちろんです。
:結果から言ってしまえば、キャラクターは私にとってはアートそのものであり、絵を描いている人間として自然に出てきました。あれは2009年頃ですが、中国の人たちと関東を旅行していた時、あるお土産屋さんに寄りました。すると仲間の中国人の女性が、あまり知らないであろう日本のキャラクターのストラップのようなものを喜んで買っていったのです。それを見て、やはりキャラクターの魅力は絶大だと感じました。愛らしいぬくもり、癒される感覚などは、国を超えて受け入れられるのだと。

:宮島さんとしては「これだ!」と思ったのですね。
:はい。私もこの頃すでにキャラクターは描いていましたが、それを機に「十二支の動物のキャラクター」をあらためて作ってみようと思ったのです。特に水色のウサギは以前から時々描き、手作りの絵本にしたこともあるので、ウサギを主人公にした十二支の動物の構成が、この時すでに出来ていました。(私自身は巳年なのですが) そしていろいろ精査した末、十二支の中のいくつかの動物キャラが残り、あらたに十二支以外のものも加えて、現在の「マルタの冒険」のキャラクター群が完成したのです。

:これは宮島さんらしいエピソードですね。アートをより広くとらえている点で、見逃せない選択だったといえるでしょう。
:そうですね。アートといっても、絵とか彫刻とか、そういう狭い意味のジャンル内で完結するのではなく「アート的である」というのも、人々には必要な感覚です。

:先ほど言われた、キャラクターに触れた気持ち良い感覚、癒される感覚などもアート的であるということですね。
:近年、企業に勤務する人たちの間でも、アート的な感覚が必要であるとにわかにささやかれ始め、美術館研修なども行われているようです。これまでの日本のビジネスマンは、合理性とか調査力とかばかりが重視されてきたが、それではやがて行き詰ってしまう。アート的な感覚、つまり直観で何かを引き出せる感覚を養うのことこそ、これからの時代のビジネスの基礎だと説く研究者も複数います。

  

:キャラクターもそうした感覚に慣れていただくためにも重要なファクターということができますね。ところで、そうしたキャラクターの世界の人で、影響を受けたアーティスト、作品などもあったのでしょうか。
:前回、影響受けたアーティストを挙げましたが、そこにもう一人、藤城清治さんを加えたいと思います。影絵作家の大御所として内外で認められている存在の藤城さんですが、私は幼少の頃、氏のキャラクターに夢中で、今でもその感動は覚えています。キャラクターを中心にした人形劇は、歌、踊りとともに展開され、子供を中心に、大人も楽しめるまさに「アートの心」がそこにあったように思います。マルタも今、そんなものを目指しているのです。

:そうした藤城さんの作品を、幼い頃の宮島さんはよく描き写したんじゃないですか。
:その記憶はかなりあります。いつもテレビで観察しては、後で描いていましたね。藤城さんはキャラクターストーリーの中で、自身が大好きな車を取り入れていたのも覚えていますが、その影響か、車の絵もよく描きました。そして車だって、ただの機械じゃないアートの要素が多大にあります。車を作る側からすれば、その車が人を乗せて走るさまざまな姿を思い浮かべている製作者(技術者、デザイナー等)の仕事があります。車に乗る側からしても、それこそ「あんな所を走りたい。こんな走り方をしたい」という夢、まさにアート的な夢があるのです。余談ですが、仮に自動運転車が多くを占める時代が来ても、レースやラリーというのは人の運転の楽しみとして残るでしょう。

宮島永太良とマルタ
(写真:関 幸貴) 
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