TOPTalk : 対談

特別企画「健康をめざすアート公募展」を振り返る

 

宮島永太良からのご挨拶と選考委員全員の総評

◇ご挨拶「健康をめざすアート公募展」第1回を終えて
このたび「健康とアートを結ぶ会」主催による「健康をめざすアート公募展」を、無事開催することができました。「健康とアート」とは、これまであまり考えて来られなかった組み合わせかもしれません。当会「健康とアートを結ぶ会」が、今回その本題をアピールする意味で開催したのがこの公募展でしたが、何ゆえ初めての試みだったので「どんな作品が集まって来るのか」「どれだけの人たちに応募してもらえるか」等、ほぼ全てが未知数でした。しかし結果的には、全国から43名の作家さんによる55点の作品が応募され、なおかつその作品の質の高さから、審査員の一人の私としては悩みに悩むという嬉しい悲鳴までプレゼントしていただきました。会期中にも、応募・出展者の方の何名かともお話させていただきましたが、志の高い方ばかりで、当会主宰の私としても頼もしい限りでした。
思い起こせば以前より私の周辺の作家の皆さんに「健康のために作品を役立たせたいですか」と問うたところ、ほぼ全員が「YES」の答えでした。やはり同じ考えをお持ちの作家の皆さんがまだまだいらっしゃることを痛感しました。またテーマもまさに十人十色で、「自然の生命力の再現」「色彩の力の引用」「病気の経験から健康を考える」「自分の肉体を見直す」など、実に様々な制作動機があることも、あらためて教えられました。
今後も同じコンセプトの公募展を開きたいと切に願っております。
どうぞ当会の活動を見守っていただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。

一般財団法人 健康とアートを結ぶ会   代表理事 宮島永太良

 
 

最優秀賞 吉澤幸子さん作品「火傷」

 

◇審査員総評
・多くの力作を目の当たりにし、5つの作品を選べるのか躊躇するところがありました。そこで今回は「健康をめざす」方が向かうところの一つである病院やクリニックなどの医療機関に飾られたらいいな、という観点から選ばせていただくことにしました。その結果、気持ちが前向きになる明るいイメージや、ちょっとドキッとして通り過ぎてからもう一度見たくなるようなモチーフの作品を選びました。一方内臓や血液を想起するものは素晴らしい作品でも選びませんでした。

 細井孝之  [健康院クリニック院長]


・健康をめざすアート公募展審査を終えて55点におよぶ作品の中には、作家それぞれが経てきた心身の格闘が滲み出ていて、プロフェッショナルの作家がとかく陥るアルチザン的作品より卓越した独自の作品が少なからずありました。健康とは不健康の対語ではなく、現実に立ち向かいながら生きることの葛藤と、苦悶する心身のあり様が顕現する状態です。ケミカルでメカニックな高度な医療を以てしても治療し得ない心身の悶えにとって、アートの潜勢力がどれほど有効であるかを、受賞作家の方々が力強い作品の力で示してくれたのだと思います。なかでも、ある入賞者の作品は秀逸で、アートの可能性が宇宙に連なる生命の自己組織化にまで到達し得ることを描いていました。

 内海信彦  [アーティスト/早稲田大学研究員]


・応募作品群は美術教育を受ける受けないに関係なく、優しく、他者を慮り、自己の経験に基づいていて、私の胸は見ていて熱くなった。それでも順位をつけなければならないのは心苦しいが、私は「喜びと悲しみが共に含まれている」作品を選出した。悲しい気持ち
で見ると悲しく、楽しい気分で接すれば楽しくなるという作品。感情は二項対立ではなく、複雑だ。その複雑さが含意されているのが、選ばれた作品群である。この公募には、他人の気持ちになる機運が齎されている。自分の事ばかりの今日、最も大切な人間としての証が必要とされているのである。来年も、奮って応募して頂きたい。多くの方々の笑顏が、作品を待ち望んでいる。

 宮田徹也  [日本近代美術思想史研究]


・アートコンプレックスセンターを長年続けていますが、「健康」を題材にしたコンペティションは初めてです。どんな作品が集まるのか期待して審査に臨みました。この公募展は画力だけでなく、発想力、表現力に重きを置き、それに値する作品が受賞作品に選出されています。今回が初開催の公募展ですが、作家それぞれの体験に基づき健康を表現する、みなさんの姿勢に感動を覚えています。より心を豊かに、そして未来を明るくするような作品作りを続けてください。

 式田 譲  [The Artcomplex Center of Tokyo 館長]


・今回は全国から43名もの方からの応募があったと聞き、それらの作品に会えることを楽しみにしていた。しかし会場に入った瞬間「どうしよう?!」と困惑してしまった。それぞれが大変個性のある作品で、かつ優劣がつけ難いととっさに感じたのだ。審査員としてこれほど悩むことはない。しかし審査員が悩める公募展ほど、また興味深いものはない。作品を拝見し、応募動機も読ませていただくと、それはまた多方面からの「健康」へのアプローチがあった。「健康とアートを結ぶ会」を結成して5年、まだまだ知らないドラマはいっぱいある。ぜひ応募者の皆さんも、アートを健康への架け橋とできる、希望のアーティストとなっていただきたいと思う。

 宮島永太良 [一般財団法人 健康とアートを結ぶ会 代表理事]

 
 
 
 
 
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