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☆ 名言迷路 卍 迷言名路 ☆     文 宮島永太良

このページでは、私が今までに聞いて興味をもったワンフレーズを紹介し、
それを考察しようというものです。
史上言い継がれてきた諺、偉人の言葉から、
著者の周り近所の人が発した言葉まで様々ですが、どれもこの世の中に暮らす人にとって、
何らかのヒントになるのではないかというものを挙げています。

〇 貧乏人は、人に好かれるしかない

 これは私の親しい友人が、自分にあてはまる言葉として言っていたものである。 
決して古事諺ではない。

上海夜景

 この言葉を言った人は普通にサラリーマンをしていて普通の生活をしているので、貧乏人というのは謙遜もあるかもしれないだろう。  しかし「人に好かれる」というのは実行している人である。「人に好かれる」ことを実行と言っても、少し変かもしれないが、それがどういうことかを考えるのに、いったん「お金」というものの重要性から目を離してみる必要があるだろう。

 人に食わしてやる方が偉く、食わしてもらう方が下だというのは、お金を最重要に置いている考え方といえるのではないだろうか。 「お金」というものはいつの場合でも最重要のものと考えられがちだが、果たして本当にそうだろうか。

  経済活動を見てもわかる通り、人はサービスに対して報酬を払うことがある。 (サービス業というと狭い意味で報酬を払うことになるが)たとえばクリーニング屋に「こんなに綺麗にしてくれたのだから、このくらいの料金は当然払いましょう」と思えた時、その時はそのクリーニングというサービスと、客の払う代金が等価のものとなる。

ドル

 転じて、お金をもらわなくとも、人に親切にしてあげる、無償で何かを手伝ってあげる、相談相手になってあげる、ということは、相手にも「これだけ尽くしてくれたのだから、この人のためなら何でもしてあげよう、金に困ったら食わしてあげてもいい」と思ってもらえることにつながり、その施しの精神とその人に対する投資は等価となる。

 逆に考え直すと、商売をする上でも、この施しの精神は意外に基本になっているのではないだろうか。  日本の商売人はよく順番を間違える人も多いようである。 以前、訪問してきていきなり食券を買ってくれと言った新開店のラーメン屋があった。 しかしどうだろうか。 食べたこともない、美味しいかどうかもわからないラーメンの食券を買えるだろうか。  一度食べて「これは旨い。また食べに来よう」と思うのが、本当にサービス(美味しいラーメンを食べさせてもらった)に対する代償だと思うのだ。

 「貧乏人は、人に好かれるしかない」貧乏の度合というのは計れないが(それは金持ちも一緒)今一度、貧乏の自覚がない人でも、貧乏人になったつもりで、人に施すことを試みるのも必要なのかしれない。

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