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原雅彦さんが「描く個人史」を語る!   後編

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原雅彦さん花まつり展で
 

◎原雅彦(はらまさひこ)さん プロフィール

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原雅彦さんspace
アクリル画家、建築模型製作者。
Meets Art Clubメンバー。
1958年1月3日、福岡県嘉穂郡生まれ、山羊座、O型。
1980年 成蹊大学工学部卒業。
*主な活動履歴
2013年 ぎゃらりー喫茶「なよたけ」で初個展。
2014年 「花まつり Vol.11」に参加。
2014年 NEKOISM・ネコイズム・猫主義 vol.1st 入選。
2016年 平成27年度「近美関東美術展」入選。
    「帆船(横濱)」奨励賞受賞。 
               
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原雅彦さん、脱サラ後の絵との関わりを語る♪

月刊宮島永太良通信編集部(以後M):2009年の退職後はどうしたのですか?
原雅彦さん(以後H):私は結婚が早く、二人の子どもも成人していたので、会社を辞めてから1年間は、失業保険をもらいながらの就職活動、建築模型製作者の通信教育や大型免許取得、加えて母の介護もあったので、それなりに忙しい日々を過ごしました。

M :では失業保険が終わって以後、アート関係以外の仕事は?
H :家内が幼稚園の給食を作る仕事をしているのですが、そこで現在は保冷車を使い給食を運ぶ仕事をパートでしています。

「花御堂」展示制作

M :幼稚園の給食を運ぶ?
H :その幼稚園は、横浜に4園、茅ヶ崎に3園、伊勢原に1園ある大きな学校法人です。  その8園分の給食1日約3000食を伊勢原の給食センターで作り、それを3台のハイエースの保冷車で、横浜2台、茅ヶ崎1台で運ぶのですが、2011年にドライバーさんの一人が定年を迎えたので、その時に声をかけていただきました。  今6年目ですが、当時は認知症とガンを患った母の介護もあり、フルタイムで働くのが難しく、パートは8時に出て昼に自宅に帰って母とご飯が食べられ、午後は弁当箱を回収して15時には帰宅できるので、私にとっても最適でした。2011年3月に3日間かけて引き継ぎを行なったのですが、真ん中の日が東日本大震災当日、東名高速を降りたら、グラグラしたのを今もよく覚えています。

M :その頃、絵は描いていましたか?
H :はい、部品メーカーの退職数年前から絵を再開しました。  2013年に葉書サイズのプチ絵の初個展を「なよたけ」で行いました。  その頃からお弁当運びをしながら、絵を描く仕事をしています。

M :絵を描く時間帯は?
H :毎日だいたい午前2時から4時まで描いています。  ただ寝坊して3時に起きることもあるし、外での付き合いで帰りが夜遅い場合は、サボることもあります。  そして、4時からは洗濯物を干し、6時半からは畑を耕し7時に帰宅して、8時に仕事に出ます。

原雅彦さん 花まつりの展示作品

M :忙しいですね?
H :私、自分を動いていないと死んじゃう魚のマグロと一緒だと思っています(笑)。

M :だいたい毎日が、そのサイクルですか?
H :昔は母の介護があったけれど、昨年の6月19日に亡くなったので、現在はその時間でオリジナル額の制作をしています。

M :額作りもしているのですね。  それは後でお聞きするとして、今のような横長の絵を描くようになったのは、いつからですか?
H :小さな横長ひまわりの絵を描き始めたのが2008年。  大きく描き始めたのは、割と最近で2014年ごろからです。

M :横長を描いていてどうですか?
H :たまには真四角も描きますが、広がりや奥行があるワイドな風景画が大好きです。  描いて気持ちいいし、横長じゃないと私らしくないとも言われ今日この頃(笑)。  ただ最近は、その作品を収める額を試行錯誤しています。

原雅彦さんの横長作品

M :額ですか?
H :以前はマットが入ったフラット額を用いていましたが、Meets Art Clubメンバーで画家の中西達彦さんの影響もあり、最近は「変わり額」に興味を覚えました。  キャンバスみたいな物に描き中に空間を作る「浮額装」。  「なよたけ」のマスター小高嘉照さんのトルコのカッパドキアを題材にした作品がそれにあたるし、他に横浜港の光景を、透明なアクリル額でオリジナル3D表現した作品も好評でした。

M :中西さんは刺激的ですね。
H :はい。  美術全般に博学な中西さんから学ぶことがたくさんあり、とてもありがたい存在です。

M :絵や額作りの手応えを感じる時は?
H :対外的には、私の作品を「欲しい!」と意思表示してくださる方がいた時。  そんな時は、「人に好まれる絵を描けるようになった」と思うし、制作時だと、2016年に中西さんのお陰でリキテックスのワークショップに参加し、使っていた画材の見直しができ、それを代えて描いたら、出来上がりのクオリティーが、上がったような気がした時に手応えを感じます。

M :画材関係も入ってくるとは、視点の違いを感じます。  ところで、原さんの作品はどんな方々の手に渡っているのですか?
H :パート仲間をはじめ近くの人たちです。  彼らから似顔絵、先生と園児の卒園祝い、古希の祝い、結婚式のウェルカムボード、「息子の友達が野球をやっていて卒業するけれど、それの記念に!」と絵を頼まれ、月一ぐらいの割で仕事が入るようになりました。  とてもありがたいことで、私は常日頃「カタチあるものは全て絵にします!」と言っています(笑)。

M :最近、アート関係は充実していますね。
H :はい、結構。  「なよたけ」のマスターも額の仕事を頼んでくれるし、知り合いの画家さんからの依頼もありました。

「花御堂」合作者 小山明久さん、中西さん、茶杓制作の青山恵世さんと

M :それは良かった。 では、これで最後の質問です。原さんの将来の夢は?
H :絵は基本なのでこれからも継続して行きます。  それとは全然違うけれど、中西さんが、青山恵世さんのために考案している「茶杓の入れ物」の基本になるカタチを私が作っているので、額も含めて、ちょっと違ったモノづくり、アートの世界に入っていければ楽しいかなと思っています。  そういえば、今春の「花まつり」で展示した小山明久さん、中西さん、私、3名合作「花御堂」も方向性のひとつかもしれませんね(笑)。

・今日はありがとうございました。

おわり

 
(構成・写真 関 幸貴)
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