Road : つれtakeロード
都会のオアシス、日比谷公園…
今回宮島永太良は、皇居の近く、東京千代田区の日比谷公園を訪れた。
東京にも数々の公園が存在するが、ここは最も早くに作られた公園の一つだと言われている。
かつて「日比谷公園何個分」というのが、広さを示す一つの目安として言われていたほどで、その広さは特筆すべきものである。
今ならさしずめ「東京ドーム何個分」というところだろう。
芝公園、上野公園などと共に東京の代表的公園であるが、それらがもともと寺社境内を公園化したのに対し、日比谷公園は全くのゼロから公園として計画された最初のものである。
宮島はここに来ると、何年か前に行ったパリを思い出すという。 もちろんパリに行く前にも来たことがあるが、だとするとパリに行った時「大きな日比谷公園みたいだ」と思ったのか? あるいは帰国後、あらためてパリに似た要素を公園の中に多く見つけたのか? おそらく後者と思われるが、そのあたりは本人も分析不能とのことだ。
正面玄関的な位置にある日比谷門から入っていくと、まず、最初に目に入るのが大噴水である。 宮島は幼少の頃「こども百科事典」という書物で「ふんすい」という項目のページを見た時、大きな噴水の写真があり、これが何処なのだろうと、ずっと思っていた。 しかし最初にここを訪れた時、その謎が解けたそうだ。 その意味では日本を代表する噴水の一つといえるだろう。 水が何も出ていない時間帯を過ぎると、少しずつあふれ出し、最後にクライマックスを迎える水の演出は、今ではあちこちで見られるが、昔は斬新だったことだろう。
公園内に椅子やベンチがとても多いのも今回わかたことの一つだ。最近は公園と言えども、治安を意識してか座る場所が少ないことが多いが、ここの公園ほど座る所が多ければいつでも休息に来られる。 種類も豊富で、椅子・ベンチのデザイン観察だけでもここに来る意義がありそうだ。
南西方面の入り口・幸門の近くには日比谷公会堂があるが、2017年現在、老朽化による建て直しのため、閉鎖されている。 1929年(昭和4年)の建築というから、非常に貴重な建築物である。 宮島は子供の頃、実家のテレビで音楽番組などを見ていると「中継・日比谷公会堂」というテロップがよく出ていたのを覚えているという。 かつては東京で最も公開番組を多くやっていたホールの一つだったのだろう。
公園の魅力といえば何といっても、子供の遊ぶ所が充実していることだ。 日比谷公園内にも子供広場があり、小さな公園にもある滑り台やブランコはもちろんのこと、珍しい形の遊具もいくつかある。 この日もそれらを使って子供たちは楽しく遊んでいたが、中には休み時間と思われる社会人たちも遊具にぶら下がっていたのは目を引く。 子供広場のフェンスより外側なので、おそらく大人の体重に耐えられる機器のエリアだろう。
こうした公園の遊具のデザインや作製に、もっとアーティストが関わっても良いのではないかと宮島は以前から考えている。 日本にもっともっと面白い公園遊具ができることが間違いないと思うのだ。
迷路のような道をしばらく進んで行くと、老舗の洋食レストラン・松本楼が姿をあらわす。 南欧の建築物を模したような特徴あるデザインだ。 この日は冬なので、木の茂りもなく、いつもより窓からの見晴らしも良さそうだ。 今日も昼時は満員。 メニューを見ても、これぞ「日本の洋食」という感じである。 ステーキやフライと一緒にライスを食べること、またカレーライスやオムライスなど、ライスそのものが主役のメニュー。 これが「日本の洋食」の醍醐味である。 このタイプの食事は、欧米の飲食店に並べば今や「日本食」として扱われているかもしれない。 少なくとも数年前のパリでは、ラーメン、カレーライス、オムライス等は「日本食店」にあった。
こうして歩いてみると、日本で最も早く西洋風を具現化した場所が、この日比谷公園だったのではないかと思われる。 パリにあるテュイルリー庭園とも、非常に雰囲気が似ている。 おそらく、その昔日比谷公園の設計に関わった人たちも、パリまで参考に見に行っているのは間違いないだろう。 宮島が日比谷公園からパリを連想するのも偶然ではない気がしてくる。 しかしながら、より皇居に近いエリアに行くと、松の木などを中心にした、日本庭園スタイルの所もあらわれる。 もともと江戸城の堀の一部だった心字池(しんじいけ)には、松の木に雪吊がかぶせられおり、後楽園、偕楽園、兼六園などの純日本庭園にも同じような光景があるのを思い起こす。
また、この公園で最も標高の高い三笠山も、どこか日本の小山を思わせる雰囲気を持っていた。 この山からの眺めは、あらためてこの公園が都会のど真ん中にあるのだということを、俯瞰的に教えてくれる。
現代は高層ビルが多くなった。舗装道路もより増えた。 しかし、自然の草木にふんだんに触れられるオアシスがあることは、我々をいつも安心させてくれる。 そんなオアシスも、ビルや道路以上に増えてほしいものだ。
(文 / 宮島永太良・写真 / 関幸貴)