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善通寺市と琴平町を訪ねて♪

 四国といえば八十八ヶ所の巡礼や金毘羅参りなど、寺社へのお参りのイメージがある。  いつか行ってみたいとは思っていた宮島永太良だが、ついに香川県の善通寺市と琴平町を訪れることができた。  宮島にとっては初めての四国である。

マルタ

 善通寺市はその名の通り、空海ゆかりの寺院・善通寺がある場所だ。  真言宗善通寺派の総本山であり、平安時代初期に空海の父・佐伯善通が創建した寺院である。  空海もこの寺の西院で誕生したと言われている。  また八十八ヶ所の寺の一つとしても知られている。

 空海といえば高野山金剛峰寺を本山とする真言宗の開祖であるが、達筆であり、「いろは歌」の作者としても知られている。  思えば、かつて宮島も「いろは歌」を題材とした絵画を描いたことがあった。

 宮島は最初にこの寺に来た時、以前から何回か行っている高野山のことを思い出したという。  高野山は大阪市内から行けるが、その頂上に着くまでは電車、ケーブルカー、バスを乗り継いで約2時間かかる。  しかし、頂上に着いた時の感動は、何度行っても衰えることがない。  その荘厳な空気に接した時は「やはり縁があってこの場所に来たのだ」ということを切に感じたそうだ。  来ようと思わなければ一生来なかったかもしれない。  しかし行ってみようという選択をしたからこそ、こんな素晴らしい場所に来ることができた。  これも縁によるものだ、そう思うと嬉し涙が出そうだったそうだ。

宮島永太良と善通寺三文字屋久保井茶舗

 今回来た善通寺は山の上ではなく平坦な街中だが、その荘厳さはひけを取っていないという。  特筆すべきは「戒壇めぐり」である。  御影堂の階段を下り、地下へ行くと、そこには何も見えない真っ暗な空間がある。  壁に手を当てながら、手の感触だけを頼りに先に進む。  「世の中には『光』があるから行動しやすい」ということをあらためて感じた瞬間だった。  光がなければこのように視覚以外の感覚を生かして行動する他ないのである。  そしてゆっくりとした足取りで進むと、仄かな明かりが目に入ってきた。  中央の礼拝堂に着いたのだ。 そこには空海の生前の言葉が残っている。

商店街 階段

 「今日も参拝者の方々とお会いできるのは、仏縁によるもの」という内容で、現代へのメッセージとも取れるものだった。

 宮島は思わず、最初に高野山に行った時感じた「縁」を思い出してしまった。もしかしたら高野山全体に、空海の言う「仏縁」が浸透していたのだろうか。  この寺にはまた「一字一仏法華経序品」という国宝もある。  経文の一字一字が、一仏の絵と対比されながら書かれているもので、非常に珍しい表現と言われている。

 善通寺から車で10分ほど行くと、金刀比羅宮のある琴平町に到着する。  金刀比羅宮は「こんぴらさん」の愛称でもおなじみだ。  江戸時代までは神仏ともに鎮座する寺院であったが、明治初期の神仏分離令により、今は「大物主神」という神を祭った神社となっている。  江戸時代後期からは全国に金毘羅参りが浸透し、参拝客も多く集まるようになった。

金刀比羅宮参道

 今回宮島は、神社ふもとにある老舗の温泉宿に泊まる機会を得た。  ここもかなりの昔から、金毘羅参りの客に重宝されていたのだろう。 昔はお参りと温泉がセットで皆のレジャーともなっていたようだ。  今でいえば「舞台を見た後のディナー」とか「ディズニーランドの後に豪華ホテルで一泊」とか、旅行会社が盛んに売り出す方法だろうか。  しかし今と違うのは、昔は心身のケアを意味していたのではないかと思う。  温泉は言うまでもなく体に効用がある。  そして神に参拝することは、心に効用があるはずだ。  昔の人は体をいたわることのみならず、心をいたわることも自然に知っていたのではないか。  そしてどちらにも「神」が存在し、その「神」に会いに行くことがレジャーにもなり得たのではないかという気がする。  ミッキーマウスに会いにディズニーランドに行く現代の人たちと、同じ心境といえば言えるであろう。

金刀比羅宮

 翌日、いよいよ金刀比羅宮へ参拝に出向く。  出発は朝6時、周りにはまだほとんど人がいない。  旅館で杖を借り、階段をゆっくりと登る。 杖を持っていると、一番上まで登れる自信がついてくるから不思議だ。  途中、白い傘の下で物売りをしている人たちに出会うが、これは金毘羅境内で商いをすることを唯一認められている「五人百姓」という飴屋さんであった。  売られている「加美代飴」は、べっこう飴の一種で、小さなハンマーで割って食べるのが特徴的だ。

 それから、また長い長い階段を上り、ついに御本宮へ着いた。 785段を上りきったことになる。  金毘羅さんは昔から海洋を守る神様ということで、この山からも遥かなる海が望める。  この日は少し雲が出ていたが、かえってそれが、頂上からの眺めをより幻想的なものにしていた。

 宮島は、手前の善通寺市を見下ろしながら、やはり香川にやってきた「縁」を感じずにはいられなかった。

宮島永太良
 

(文・写真 宮島永太良)

 
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