Story : 詩と作品
連載32回目 限られた…
時
「時間がないので早く来て下さい」
今日もそんな言葉に揺り動かされ、
しぶしぶと列車に乗る。
時間がないとはいっても、
向こうに着くまではかなりかかる。
退屈しのぎに音楽を聴く。
いい曲だ。しかしあっという間に終わってしまった。
次の曲を聴く。またすぐに終わってしまった。
「こんなにいい曲なら、ずっと演奏してくれたらいのに」
そうはいっても演奏時間には限りがある。
どこかでさよならしなければいけない。
人の一生も、みな限られた時間しか与えられていない。
そんな中、どのような素晴らしい演目を、
自分らしい舞台を披露できるのだろうか。
今はアレグロの時かもしれない。
しかしその後にはアンダンテもきっと来る。
あわただしく進む時があれば、ゆっくり進む時もある。
あわただしく進む人がいれば、ゆっくり進む人もいる。
それが人生なのだろう。それが世界なのだろう。
そう思っている間にも、
腕の時計は普遍的な時間を淡々と刻んでいた。
「Take The “A” Train」
宮島永太良