Road : つれtakeロード
香港特別編!
2016年3月下旬、宮島永太良は「アート・バーゼル香港」を見学するため香港に旅立った。 この日は航空便がなかなかなく、行きは羽田発、帰りは成田着というあわただしい空の旅だった。 到着したのは香港国際空港。 ここからエアポートエクスプレスで中環駅まで行き、宿泊するホテルのある銅鑼まで地下鉄を使った。 ご存じのように、香港と呼ばれる地域はいくつかの島で構成されているが、エクスプレスから景色を眺めていると、そんな様子がわかる。 海を飛び越えている感じなのだ。また今回立ち寄れなかったが、香港ディズニーリゾートもこの沿線にある。
香港の中心エリアは香港島と呼ばれる大きな島と、九竜と呼ばれる大陸続きの半島の二つからなる。 ちょうど通勤帰りの人であふれる駅。 駅に人が殺到する風景は日本とさほど変わらない。 香港の街中は独特で、ヨーロッパっぽい街並みの場所と、中国っぽい街並みの場所がほんの数分歩くだけで交互にあらわれる。 イギリス統治から中国返還を経た場所として象徴的な姿である。 かつて上海とパリで作品発表した宮島にとっては両方を思い出す不思議な空間であった。 加えて中国っぽい街並みの場所は、横浜の中華街を大きくしたような印象の所もあって興味深い。
アートフェアの会場へ行く前に、現地の案内をしてくれた人に誘われ飲茶(やむちゃ)を食べに行った。 日本でもお馴染みの飲茶だが、やはり本場は種類が多い。 中華マンや焼売、餃子はもちろんのこと、肉団子や鶏肉の炒めなど、中華料理でもよく見るメニューが並び、飲茶は軽食と聞いていたが、これだけでも十分お腹いっぱいになった。 また飲茶をめぐって、店に連れてきてくれた現地の人が興味深い話をしてくれた。 「日本での良い経営者というのは、社員とともに汗水流して働く人というイメージがあるが、こちらでは経営者というのはゆっくり飲茶をしながら、他の経営者と情報交換するのがあるべき姿」なのだという。 文化の違いが食を通して垣間見られるのは面白い。
そしていよいよアートフェアの会場へ向かう。 アートフェアは1970年からスイスのバーゼルで行われている世界最大の現代アートを扱うものだが、その後「アート・バーゼル」の名称でアメリカのマイアミ・ビーチと香港 でも開催されるようになり、香港展は第4回目。
今回会場となったのはコンベンションセンターで香港島の最北端にあり、大陸から繋がっている九竜地区はもう海のすぐ向こうだ。 この時期 、このコンベンションセンターの海側は大規模な工事が行われていた。 九龍半島のシャーティン駅と香港島のアドミラルティ駅を結ぶ海底トンネルを作る工事と思われる。
「かつて上海に行った時も、上海万博の前年で、町中が工事していたのを思い出します」。 そんな外の工事の喧騒もよそに、会場は広大なスペースに世界のあらゆる国からコンテンポラリーアートがふんだんに出展されている。 世界35カ国・地域、239軒のギャラリーが出展、日本からもあり、宮島が顔なじみの画廊関係者にも何人かお会いした。 「いつも日本で会っている人が、2000キロ以上も離れた香港で会うのも不思議ですが、アートフェアという会場上、互いに別段会っても驚かないのも、逆にまた不思議。 これがなんでもない時に維多利亜公園(後述)あたりで会ったらびっくり仰天のはずですが」。
広い会場を一通り見終えた頃には日も沈み、外は夜の街並みとなる。 翌日、宮島は宿泊した銅鑼から近い「維多利亜公園」に行ってみた。 おそらく「いたりあこうえん」と読むのであろう。 日本にも某町に「イタリア広場」があるのを思い出す。 公園は近所の人が散歩したりマラソンしたりと、現地の日常が見てとれる、いわゆる「アットホーム」な空間を感じたという。 特徴的なのは、中国圏でこうした公園に朝来ると、必ずグループでカンフーのような運動をやっている人たちがいることだ。 以前上海に行った時も、あちこちでこうした人たちを見かけた。
スーパーにも入ってみた。 香港の旅行ガイドブックにも載っていたが、日本のメーカーのインスタント麺が香港でも売られており、こちら独特の味もあるので逆にお土産になるというのがよくわかった。 また「曲奇会」という店のクッキーは、欧米風の味でかなりの美味であった。香港に今や七店舗を構えるらしい。
今回は短い旅であったが、9年ぶりの香港はまた違った顔を見せた印象だ。
「次に来た時は海を渡って九竜に行ってみたいですね」…
(文・写真 宮島永太良)