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鎌倉良縁巡り 前編

 2016年2月11日、宮島永太良は実家の菩提寺でもある鎌倉の長勝寺を訪れた。  この日はこのお寺の年間最重要の催しである国祈会 (こくとうえ) が行われている。  また今回の国祈会は特別な意味がある。  一つは今年が80回目であるということ、もう一つは、宮島永太良がこの日、このお寺に絵画を納品するのだ。  このお寺の住職によると、今年は満月が重要な存在で、住職と旧知である宮島はその「満月」をテーマに今回発注を受けた。

長勝寺

 毎年2月11日、この国祈会には100人を超す参拝客が訪れる。  この日最も注目されているのは、百日間の修行を終えた僧侶がこの寺に集まって、修行後、初の加持祈祷を行うことだ 。  修行の場は千葉県市川市にある中山法華経寺で、修行僧は毎年11月1日から2月10日の百日にわたり、寒中での水浴び修行 (水行) に従事する。  この日も修行中と同じ水行を、参拝客に見せてくれた。  普通ならば一年で最も寒い時期、慣れていなければ卒倒してしまいそうだ。  しかし読経を行いながらの水行の姿からは、天にまで通じる神々しさが感じられる。

水行

 宮島はかつて修行中の僧侶に会った時のことを記憶する。  「その方は『こうして毎日修行を続けていると、やがて信者の皆さんの祈りとか願いとかが肌に伝わって来るのがわかってきます』と語っていたのは印象的でした」。  そして、水行を終えた僧の面々は住職と一緒に、帝釈堂と呼ばれる本堂で読経と加持祈祷に入る。  今回宮島の絵はこの本堂の祭壇に架けられた。  「こんな厳かな場所に置いていただけるとは、自分も身が引き締まる、否、引き締めなければならない思いです。」

帝釈堂祭壇

 心洗われた僧侶からの加持祈祷を受け、気持ちも新たに、宮島は鎌倉佐助にある「銭洗弁天」へと場所を移した。

鎌倉駅 銭洗弁財天宇賀福神社

 「この銭洗弁天は幼少から小学校にかけて、よく祖母や母に連れられてきました。 ある時期から全く来なくなってしまいましたが、今から30年くらい前、一度一人で懐かしくなって来たことがあります。 今回はさらにその時以来で、平成の時代になって初めて来たことになります。」  洞穴のようなトンネルを通り抜けて入るのが特徴で、この日も久々にくぐった。  このトンネルは宮島の夢にも時々登場するらしく、よほど脳裏に刻まれているのだろう。  境内に来てみると、いくらかコンパクトに感じた。

トンネル 銭洗弁天

 やはり子供の時に来たので実際以上に広く感じたのだろうか。  この日は参拝客でとても賑わっていて、中国からの観光客も多かった。  ここでお金 (紙幣も貨幣も) を洗うと、後々お金がたくさん入って来ると信じられており、特にこの不景気の中で、みなこの弁天様にすがいたいようだ。  残念なのは昔よく入った茶店が今はクローズしてしまっているようだった。  「蕎麦とか心太とか甘酒とか、よく参拝後に飲食したのを思い出します」 銭洗弁天に来て、個人的に「お金がもっと増えますように」とお祈りするのはもちろん良いことである。  しかしもっと大事なのは、祈りを通じてお金の大切さを知ること、さらには世間のお金のまわり方が良くなるように、そして自分にも良いまわり方でまわって来てもらうことまで考えることができたら、祈りも本物になるのではないか。  社会的にも金銭の恵みに乏しい平成時代初の銭洗弁天では、そんなことを感じてしまった。

宮島永太良
 

(文・写真 宮島永太良 写真 関幸貴)

 
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