Story : 詩と作品
連載第28回 旅立ち…
DEPARTURE
「青の国」と呼ばれる、畑作の豊かな場所があった。
その地に生まれ育った青年は、
幼い頃から恵まれていた。
今年も例年にもれず豊作だ。
しかし彼は思う。
「何かが足りない」と。
作物は豊富にあるはずだが、
「人の心」が見えない。
青年はかねてより「赤の国」の噂を聞いていた。
作物こそ、この場所に劣るものの、
そこで暮らす人々は、
希望にあふれているという。
今の場所では希望は沸いてこない。
自分は赤の国に行って来よう。
もちろん赤の国に行くには、
茨の道を通らねばならないことは知っている。
今のような贅沢も到底できない。
しかし赤の国から活気と希望を
持ち帰って来ることができたら、
この国の豊作は本当のものになるだろう。
来年も豊作になることを祈って、
その時、望みあふれる「心」を持ち帰ろう。
「DEPARTURE」
宮島永太良