Road : つれtakeロード
■ 好評連載!
宮島永太良、夜の横浜野毛を巡る!
第16回 野毛の夜を散策 「すきずき」編
横浜 / 野毛の歴史を振り返り考えると、最も存在感を示したのは終戦直後の闇市で賑わった頃。 太平洋戦争中、1945年5月29日の横浜大空襲で焦土と化した大岡川沿いの街には、露店がズラリと並び、“手に入らないはずのモノ”が何でも買え、闇市の時代が商業地としては全盛期で野毛が輝いた時代といわれる。 やがて統制経済が終わり、露店は撤収。 さらに横浜の他地域の復興が進むと、野毛は少しずつ衰退していった。 だが、紆余曲折を経て、近頃では大道芸、アート、ライブハウスなど、これまでとは一味違うカルチャーの光が野毛に集り始めているようだ。
野毛中央通りに面した立呑み居酒屋「ら×旺」を出た宮島永太良は、慣れた様子で明るい夜道を日ノ出町駅方面へ進む。 だが歩くこと数分で「すきずき〜下町の居酒屋〜」と書かれた電飾脇の階段を、軽快な足取りで上がり始めた。 「初めてこの店に来たのは、確か2012年10月でした。 目的は、当時、日ノ出町で思わぬ出会いをし、とても興味を惹かれた‘遠峰あこ’さんのライブを聴くために、ひとりで来ました。 『すきずき』では、ほぼ月1の割合で、あこさんの『飲んどこライブ』が行われているそうです。 それ以来、友人知人と訪れる機会が多くなりました。 多人数が集まりやすい広さも嬉しいです(笑)」。
店に入ると、いつも笑顔を絶やさない福田雄次店長に迎えられ、出入り口から見えるテーブル席とカウンターは、多くの人で賑わっていた。 さらに奥に進むと50席の座敷があり、純和風のホッとした空間を構成。 座敷席に着くと田舎の親類宅を訪ねた気分になり、腰が妙に落ち着く。 同席するほぼ初対面のシノブさんと挨拶を交わし、周囲を見渡すと、カップル、会社帰りのサラリーマンたち、そして、慣れた様子の外国人3人組が焼酎のボトルをセンターに置いて静かに談笑。 その情景からミナトヨコハマ独特の空気感が伝わって来た。
宮島の1杯目のグラスが空になる頃、純日本人の飲み友だち‘あるべると’さんがやって来て、4人の小宴が始まった。 飲み物はそれぞれ、つまみは皆で決め、注文したのは、ポテトサラダ、お刺身の盛り合わせ、焼きおにぎりなど。 「普通、焼きおにぎりは締めで食べますが、ここのは、立派な酒のつまみになるので、必ず来る度に注文します」と、宮島が楽しそうに笑った。 加えて、メニューを眺めていると、旬の食材をリーズナブルな価格で提供してくれるのも嬉しく、座の雰囲気も一気にヒートアップ!
そうこうしているうちに10時を過ぎ、お客さんが引き始める頃、福田店長が、座敷に顔を出し、「みなとみらい線の完成に伴い、東急東横線の桜木町駅がなくなる時、どの店も潰れてしまうんじゃないかと、野毛の危機感は半端じゃありませんでした。 でも、店もお客さんも野毛に対して愛があり、飲む人に優しく皆が筋を通すから、その状況を乗り越えられたと思います。 だから、野毛には大手のチェーン居酒屋が少ないんです」と熱く語った。 野毛で飲んでいると暖かさを感じるのは、その地域愛のせいかもしれない。
既に時計の針は11時を回った。まだまだ飲みたいけれど、上りの電車もソロソロ危ない。
宮島は少し重くなった腰をあげた…
・お店情報
居酒屋 横浜すきずき
〒231−0064
横浜市中区野毛町2-77-1 2F
tel: 045-231-0088
JR桜木町駅
京浜急行 /
日ノ出町駅
から徒歩5分