Story : 詩と作品
連載第20回 稲妻が…
割れるような響きとともに稲妻が走る
天才詩人と呼ばれる男がいた。
彼の詩はかつて、多くの人々の心を捉えていた。
彼の新しい筆を期待する人が跡を絶たない。
そんな時代もあった。
やがて彼は筆から遠のきながらも、
その栄光だけにはこだわり続けていた。
ある夏の夜、雷雨が起こった。
雷が嫌いな彼は
内心怯えたかったが、
「この雷のパワーを詩にしてみよう」
久々にそんな意欲がこみ上げてきた。
ペンを持つ詩人。
しかし一行も書けないうちに、
割れるような響きとともに稲妻が走る。
恐る恐る見上げる彼の目に、またも眩しい稲妻が。
すべてのイマジネーションは凍結し、
ただうずくまるだけの詩人。
自然の脅威を前に、自称天才も
はったりだけでは勝てなかった。
「Broken Ball」
宮島永太良