TOPTalk : 対談

森下泰輔さん、「ガーリー」を語る♪


森下泰輔さんと宮島

◎森下泰輔(もりしたたいすけ)さんプロフィール

  静岡生まれ。
  武蔵野美術大学造形学部卒業。
  アーチストとしての表現活動に加えて展覧会の企画、
  ギャラリー運営、美術評論や講演も行う美術のスペシャリスト。
 

宮島永太良、森下泰輔さんに「ガーリー」を問う!

宮島永太良と森下泰輔さんが知り合ったのは1997年2月。  以来、二人はアートを介して親交を深めて来た。  そして、この6月17日から28日まで宮島が企画等で関係する「ミーツギャラリー」で、森下さんディレクションの「ガーリー展」が、開催されることが決まった。  今回は、間もなく始まる「ガーリー展」について、アメリカ / ニューオリンズ現代美術ギャラリー「The Front」グループ展 / ビデオ作品の発表会場「アートラボ・アキバ」で、宮島が森下さんにインタビューを行った。

宮島永太良(以後・M):
「ガーリー展」は、何回目になりますか?
森下泰輔さん(以後・T):
2010年7月に川崎市市民ミュージアムで、大きな企画展として初開催。  去年5月には、アートラボ・トーキョーで「Girly 2013 #1」を行い今年で3回目になりますが、定期的なイベントではありません。

M :考えていたより開催回数は少ないですね。  もっと見ていた気がしました。
T:「ガーリー展」に参加した作家さんたちが、今春も行われ、宮島さんにも参加してもらった「花見展」等のイベントにも出品しているので、そう思えるのかもしれません。  「ガーリー」に特化したのは3回目です。

森下泰輔さん

M :「ガーリー展」に参加できるは、女性作家なら良いと言うのではなく、何か作風に条件はありますか?
T :最初の川崎市市民ミュージアムでは、女性作家に絞ったワケではなく、コンセプトが「イメージにおけるガーリー」だったので男性作家も参加していました。  同時に1980年代から私が考える最初の「ガーリー」、その象徴的存在である戸川純さんにも、ビデオ作品で参加してもらったのは記憶に新しいですが、去年は女性だけ、今年も同様です。

M :ところで「ガーリー」とは、何でしょう?
T :簡単に言うと、「少女性」です。  つまり、少女性を表現の軸に持っている作風です。  少しカワイイに似ていますが、ファンシーのカワイイではありません。  どこか少女性からの主張が、作品の中から垣間見える作家さんになります。  だからと言って、厳密な線引きはありません。

M :かつて見た「ガーリー展」では、エロスやバイオレンスを感じる作品もありましたが…
T :それも少女性からの自己主張と考えられるし、作家が自己表現しようとする場合、単なるキレイゴトだけでは済みません。  まして「ガーリーアート」を作る女性作家は、ただ絵を描いているのではなく、多くがとても個性的です。  私の中では、その様にカテゴライズされています。  ただ、世界的な傾向ではありません。

M :海外では見られないですか?
T :似た様な主張をしている海外の女性作家もいますが、やはり「ガーリーアート」は日本独自の現象であり、世界に向けて発信できる日本生まれのアートではないのかと考えています。

森下泰輔さん

M :日本から発信するアートの新たなジャンルですね。
T :世界に発信する意味では、日本の風俗が含まれていることが望ましく、振り返って考えれば、その代表が浮世絵ですが、その中には「ガーリー」のエッセンスが含まれていたのでは、ないでしょうか。

M :既に浮世絵に?
T :浮世絵師はほとんどが男性でしたが、描く対象は女性美が大きくウェイトを占めていたので、自然の流れで「ガーリー」に通じていたと考えています。  しかし、あの「葛飾北斎」の末娘で結婚に破れ出戻ったお栄は、父親のアシスタントをしながら画業に励み、雅号「葛飾応為(かつしかおうい)」として、女性特有の目線で捉えた繊細さと光を考えた素晴らしい作品を数々残し、現在、注目を集めています。  今回も「ガーリー展」に参加する撫子凛(なでしこりん)さんは、応為を尊敬していると話してくれました。  ただ、江戸時代の女性は好きに生きられなかったので、応為は希有な存在。  それに比べて、現代の女性は自由です。  女性美を、少女性を抱き続ける女性が、色々なイメージや技を用いて独自表現をして発表するのが、「ガーリー展」と考えています。

M :「ガーリー」と、名付けたのは?
T :私です。  ただ、80年代には「女の子アート」と呼ばれた動きがありました。  その後、90年代なかばには写真評論家の飯沢耕太郎さんが、蜷川実花さんに代表される「ガーリーフォト」を語り始めました。  そして、私が「ガーリー」をひとつの表現領域だけでなく、アート全般に広げたのです。

M :6月のミーツギャラリーで行われる「ガーリー展」では、どこに注目したら良いのでしょう?
T :参加者は10名前後を考えていますが、作品展示以外、特別なパフォーマンスは考えていません。  ただ、21日夜のパーティにはマルタも登場する予定だとか(笑)。  それも含め、今回は「ガーリー」の現在をご自分の目で見て欲しいです。

森下泰輔さんと宮島

M :森下さん、ありがとうございました。 6月がより楽しみになりました。

by Sekikobo
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