Story : 詩と作品
連載第17回 咲き散る…
満開だった桜が
散り始めた。
満開だった桜が散りはじめた。
今日もまた散ってゆく。
もう間もなく無くなってしまうだろう。
花は行ってしまうのだろうか。
わずかながら香りを残しながら。
昔ある人が言っていた。
「私はこの桜の花のようで在りたい。
やるべきことは全部やった。
あとはここを去ることが自分に残された仕事だ」
去る時は潔く去りたい、
その人はかねてからそう心がけていた。
四年の月日が経った。
この桜の散りゆく姿は、
今日もその人を思い出させる。
今はどこでどうしているのだろう。
華やかに咲き誇った桜は、
その姿を惜しむ様子もなく、
今日も流れるように散ってゆく。
私は、また来年戻ってきておくれ、と
願うことしかできない。
「色は匂えど」
宮島永太良