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画家、倉藤紀子さんインタビュー


倉藤紀子さんと宮島

◎倉藤紀子(くらふじのりこ)さんプロフィール

倉藤紀子 さんspace
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1972年 東京生まれ
1994年 女子美術大学絵画科洋画専攻卒業 
1996年 女子美術大学大学院美術研究科絵画専攻修了

修了後、
医学系研究所に勤務しながらコンスタントに国内外で発表活動を続け、
絵画講師に転職ののち、現在はヨーロッパでの作家活動を主としている。


 

倉藤紀子さんは、語る…

宮島永太良(以後・M):
医学系研究所にお勤め頃は、どの様に制作活動や作品発表を行っていたのですか?  
また、医学系研究所とは普通の人々とは縁遠いと考えますが、そこで何か、制作のインスピレーションを受けたことはありましたか?
倉藤紀子さん(以後・K):
帰宅後時間がある時は夜に細々と描き、週末がくると、よしー!と制作モードに入ろうとし、コンディションが整った頃に月曜日がやってきてしまう、その繰り返しで、なかなか自分のペースをつかめないこともありました。  ですが、研究所で、臨床 研究をされるかたがたと接させていただいたのは、素晴らしいことでした。 遅くまで研究をされ、翌早朝にはもう病棟に向かわれ、学会での論文発表、研究打ち合わせ、出張、分野は違いますが、私はそこまでの制作仕事ができているのか、考えさせられました。  縁遠い場所とは感じずに過ごした、真綿に包まれたような学生時代のあとの社会生活でした。  医学系雑誌が身近にあり、細胞のサンプル写真など、未知な美しさは私の制作に何かを与えてくださったようにも感じています。

M :その後、絵画教師に転職されますが、絵を教えることで何か心の変化や作品制作に影響はありましたか?
K :ただ一生懸命でした。  「描きたい」というお気持ちを受け止められる講師に!と、私も学びながら、レッスンさせていただいていました。  現在も、いくつかのレッスンを続けさせていただいています。  描かれるときの笑顔の生徒様がたとの出会いは、初心を思い出させてくださいます。  講師をはじめました頃から、テレビ番組での絵画レッスンにも定期的に出演、「どなたにも世界に一枚だけの絵画の幸せを」と、情熱いっぱいに頑張りました。  音楽家や詩人とのコラボレーションの機会をいただきましたのも、社会との交流を模索しておりましたこの頃のこと、宮島様と初めてお会いしましたのも、この時期でした。 懐かしいです。


倉藤紀子作品「nagare-blooming-」
'nagare-blooming-' 162×162cm oil on canvas

M :話は一転、海外に飛びます。 ヨーロッパで作家活動を主とされているそうですが、 どの様に海外で作品発表をし始め、現在の様な発表活動ができる様になったと、お考えですか?
K :それは自然な流れで、作品が色々なご縁を頂戴して、私を色々な場所に引き合わせてくれたことと感じています。  極端なブレイクとは違い、作品はいつからか、静かに独り歩きを始めていました。  どこかで、どなたかが見てくださって、何かを感じてくださっている。  そして、いつも「描かせていただいている」と様々なかたのご厚意に感謝しながら居ります。  「これをしたからこうなった」ではなく、私の作品に共感してくださるかたのもとへ、作品が歩いていったと理解しています。  どの様に、とは、うまく説明できないのですが、よくしてくださるところに、絵を持って行き、あれもこれもと多くを望まないようにしました。  それがよかったのかまだ私にはわからないことです。  昔、ある展覧会で隅っこに飾られた絵が、別のステージで海外の美術館のパブリックコレクションにしていただいたことがありました。  歓迎されない場所で幸せになろうとしても無理です。  歓迎していただけるところでないと。  今でもコレクションにお力添えをくださったかたににとても感謝しております。  また、嫌なことをする人の近くにはいないようにしています。  以前、3.11翌年のヨーロッパで、「彼女の作品は放射能に汚染されている」と言う人がありました。  そういうかたとは何のご縁も有り得ないので、近くにいる必要はありませんよね。  仕事がいい加減な人、好意的でない人、お金を返さない人、の近くにはいないように、気をつけています。  困りますから。  それは当たり前のことかもしれません。

M :スタッフも含め、ヨーロッパの画廊の良さとは何ですか?
K :アジアだから、ヨーロッパだからこうだ、と断定できる程、多くの経験を積んでいるわけではないのですが、ご縁のあるギャラリストは、私の作品を深くあたたかく理解してくださるかたです。  私へ求めるものも明確で、描く事でした。 私の大切なパートナーです。

M :これから、どの様な発表活動をして行きたいとお考えですか?
K :作品を好意的に受け入れていただける場所で、一つ一つよくよくお話あいを重ね、常に自分らしさを失わず、丁寧な作品で応えられる状態を保てればと思います。  様々なアドバイスやご厚意をいただいて今あるのですが、思い起こせば感謝するばかりでお返しできていないように感じることもあります。  誠実な作品を創り続けこと、次の世代のかたへ何かをお伝えすること、ができたら、きっとお応えできたことになるのではないかと、これからも頑張ります!

倉藤紀子

おわり

(撮影協力:対馬ライフクリニック)
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