Story ：詩と作品

Story : 詩と作品

連載第11回　歩く…

今日もただ
　　　冷たい街の中を歩く

今日も一人、
また一人と歩いて行く。
冷たい風に色あせた街の中を
ただ目的に向かって進んで行く。

西へ行く人、東へ行く人。
北へ行く人、南へ行く人。
速い人。遅い人。

ふと建物の陰に目をやれば、
小さな虫たちも
ただ一心に進んでいる。
もし自分が虫だったら
いったいどこから来て、
どこに行くことになったのだろうか。

人として居ることが
あまりに当然な毎日、
ふと自分の行く先が謎めいてくる。

毎日毎日、何百年歩んで行った先には
虫になった自分がいるのだろうか。
またはこの虫たちは、
過去の自分の姿なのだろうか。
その答えは誰にもわからない。
今日もただ冷たい街の中を歩く。
その先に春が待っていることを。