アートが気になるインタビュアーが宮島永太良を探る!
「宮島永太良研究」第15回 「形」と「文字」
Q=アートが気になるインタビュアー/A=宮島永太良
Q:前回は宮島さんが制作の上、あるいはアートを見る上で考える「形」について語っていただきました。ところで文字も形、というところまでお話されましたが、文字に対しても思い入れはあるのでしょうか。
A:そうですね。特に幼少の頃は、文字も絵もそんなに違いは感じていなかったと思います。
Q:それはどんな点で?
A:多くの方の幼少期、また今の子供さんもそうかもしれませんが、たとえば平仮名の「あ」とか、アルファベットの「A」とか、絵のように覚えた記憶があります。
Q:そうかもしれませんね。
A:アルファベットに関しては詳しく知りませんが、平仮名、片仮名は漢字がもとになってできました。その漢字も一番最初は絵として記号化された「象形文字」だったわけですから、字が絵と同じ性質を持つのは自然なことかもしれません。
Q:「山」や「川」などの漢字も、もともと絵記号から発していますよね。
A:余談ですが幼少の頃は、今ほど固定観念がない分、漢字、平仮名、片仮名、アルファベットを混同していたように思います。たとえば平仮名の「し」とアルファベットの「J」を勘違いしていたり、片仮名の「ヨ」とアルファベットの「E」を勘違いしていた記憶があります。
Q:そういえばちょうど反転になっていますね。大まかに言えばですが。
A:また平仮名と片仮名で似た文字がある。「う」と「ウ」、「か」と「カ」、「や」と「ヤ」、「へ」と「ヘ」等です。同じ漢字をもとにしている場合もあるから不思議ではないかもしれませんが。しかし全く関係のない仮名と漢字が似ていると思うこともありました。
Q:確かに漢字の中には仮名と同じ形のものもありますよね。
A:たとえば次の問題の答えはわかるでしょうか。以前、何かの本に出ていたのですが。次の二つの単語の共通点は?
「トーマス・エジソン」「電子工学」
Q:普通に考える「科学に関するもの」とかになってしまいそうですが。
A:答えはどちらも「エ」の形の文字があることです。
Q:なるほど!これなどは子供ならすぐわかるかもしれませんね。
A:大人になるほど、こうした文字の形の類似性は、次第に気づかなくなってしまいがちですね。文字はまた立体を考える上でも面白いものなのが分かります。置ける文字と置けない文字があるからです。
Q:それはどういうことですか?
A:文字に奥行きをつけて立体にした場合、例えばひらがな「あ」なら置ける。「い」も左右分ければ置けます。でも「う」は上の部分が離れてしまって文字の通り置くことができません。ただし「座りが悪い」などの細かい状況は無視してですが。
Q:これは看板などを作る際に関係してきませんか?
A:実は私も、子供の頃「字が置いてある」タイプの看板を見てそう思ったのです。
Q:やはり宮島さんの場合、文字も一つの造形物として見えるのでしょうか?
A:そういうことは多いと思います。もちろん読み書きしているとき常にそう感じるわけではありませんが。
Q:絵画作品の中に文字を入れることはありますか?
A:はい、何点かそういう作品もありました。また、昨年の個展でも出したのですが、中国古典詩の「千字文」をモチーフに、文字そのものをデザイン化した作品もありました。これなどは漢字の意味はともかく、その造形の不思議さを自分なりにアレンジしたものでした。
Q:以前は人の名前の文字をデザイン化した作品もありましたよね。
A:はい。あれもやはりそれぞれの文字が持つ特徴を、その人の特徴とかぶせて表現したものでした。
Q:今回のお話から、文字をはじめとして、宮島さんの作品に登場するモチーフが気になってきましたが、次回よりそのあたりのお話をお聞きできればと思います。