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Road : つれtakeロード

 

特別編 緊急事態宣言下の東京で考えたこと…

「本当に、生まれて以来初めての人類のピンチ。そんなふうにさえ感じました」新型コロナウィルスによる世界の震撼を、宮島永太良はこう語る。これまで毎年、新型のインフルエンザが出たりしても、宮島自身はその危険は感じながらも直接影響を受けることはなかったし、周囲の人たちに影響が出ることもなかった。また年代を遡ればエイズ、エボラ出血熱、サーズ、マーズ等の、生命の危険を伴う伝染病と闘ってきた人類だが、いざ日本で普通の生活をしている限りでは、どこか「他人事」で終わってしまっていた感は否めない。しかし今回ばかりは本当に「他人事」ではなくなった。

渋谷

「現時点、私は感染していませんが、いつ感染するかわからないという緊迫感、またそうならないために行っている外出自粛などは、今までにない経験です」
新型コロナウィルスが中国・武漢で発生し、初めての感染者が出たのは昨年12月。それからというもの中国全土から欧米に飛び、特にイタリア、スペイン、アメリカでは多大な感染者を出してしまった。

渋谷

日本でも横浜に寄港したダイヤモンドプリンセス号から感染者が多数出て、社会的驚異になってから、またたく間に日本全国を襲い始めた。
「思えば今年初頭、私が個展『さがしもの展』を銀座で開催している最中だったと思います。まずマスクが売り切れたという驚きのニュースからでした」
銀座のギャラリーで個展をやっていた宮島にとって、その場所は社会状況をそのまま写していた。

公園

これまではインバウンド需要と言われたように、主にアジアからの観光客が銀座に集中。特に中国の来客はその主役クラスだった。銀座も場所によっては「自分が中国に来たのではないか?」と錯覚する場合もあった。それが個展会期中から、徐々に中国の観光客の姿が減っていった。あれから3ヶ月ほど、今では外国からの観光客が全くいないどころか、日本人すらこの銀座には数えるほどしか姿が見えない。もちろんそれは、4月7日に発せられた「緊急事態宣言」によるものだろう。おりしもその日は宮島の誕生日であったが。

銀座

「この東京をはじめ、日本で緊急事態宣言等が出されるとは初めてのことであるし、想像もついていませんでした」
新型コロナウィルスは感染してから発症まで10日から2週間ほどだという。およそ2週間で感染者が減るかどうかというのが、緊急事態宣言の意味を語り、最初の登竜門となるだろう。

銀座

「新型コロナウィルス感染者を最も多く出しているアメリカではニューヨーク市でロックダウン(都市封鎖)が行われているといいます。一時は東京がロックダウンを行うのではないかという噂も広まりましたが、実際には日本の法律上のこともあり、アメリカのような規制はできないようです。しかし人出がこれだけ少なくなったということは、国民も今回かなりの危機意識を感じているのでしょう」
一方でまだ「自分は大丈夫、関係ない」または「罹って死んだっていい」というスタンスの人も多いと聞く。その人しか罹らない病気と違い、今回は伝染病である。決して自分の独断は通用しないのだという意識も必要ではないだろうか。しかしながら今回は、人の「命」のことをあらためて考えさせてくれたようにも思う。

地下鉄

「私たちは毎日、普通に家を出て車や電車に乗り、目的地に行ってはまた何事もなく帰宅するのが当たり前のように思っていないでしょうか。しかし朝起きてから寝るまで、事故にも遭わず生きて来られたのは、偶然でしかありません。ひとたび周りを見れば、日常には危険のもとがいっぱい潜んでいます」
今回の新型コロナウィルスは致死率こそ低いとは言え、やはり亡くなっている方のニュースも入ってくる。こうしたウイルスにさらされ、今まで以上に死の恐怖に直面した人も多いだろう。それはまた命の尊さをあらためて確認させられた時と言っても過言ではない。

新宿

「昨年の今ごろは『来年2020年は、我が国でオリンピック、パラリンピックも開催され、栄光の年となる』くらいに思われていたと考えます。しかしその東京オリンピック、パラリンピックも、この新型コロナウィルスの流行により延期となってしまいました。世の中全く何が起こるか計り知れない、というのが事実でしょう」

新宿

東京、そして全国から外出者が減り、すでに商業的にも打撃を受ける会社や店も多く出ている。それは日本の経済、世界の経済の不安にもつながってくる。しかしこのウイルスの治療薬、ワクチンは必ず出来るだろうし、そうなれば新型コロナウィルスも「普通の病気」と化し、私たちの日常も戻って来るであろう。今から一年後、この「ロード」はどのような風景につれて行ってくれるのか。決して悲観することはせず、未来に希望を持ちたい。

筍

(注)全ての写真は緊急事態宣言後の東京ですが、濃厚接触を避けるために早朝の電車や自転車で移動し撮影しました。

(文 宮島永太良/写真 関 幸貴)

 
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