TOPInterview : インタビュー

アートが気になるインタビュアーが宮島永太良を探る!

 

「宮島永太良研究」第13回  「形」

=アートが気になるインタビュアー/A=宮島永太良

:前回までは、宮島さんの作品にまつわる様々な要素のうち「色」に関してかなり時間をとってうかがいました。
:色に関してはまだまだたくさん思いはありますが、きりが良いところで、次は「形」に関してお話しします。

:宮島さんにとって「形」とはどんなものですか。
:「形」は本質をいえば、0次元から三次元で成り立つものですが、やはり私にとっては二次元的なものが縁が多いように思います。

:一言でいえば普通に「平面」ですよね。
:はい。0次元は点、一次元は線、二次元は平面、三次元は立体です。

 



:それらに加え、四次元などともよく言われますよね。
:そうですね。よくSFなどでは四次元という言葉が出てきますが、私たちがいる世界(三次元世界)では収まらない要素が存在する、謎の次元なのでしょうね。しかしながら、三次元にいたるまでも、ちょっとした不思議な矛盾があるのです。

:不思議な矛盾ですか。
:逆から進みますが、二次元(平面)を重ねていくと三次元(立体)になる。一次元(線)を重ねていくと二次元(平面)になる。そして0次元(点)を重ねていくと一次元(線)になると言われます。しかしこの理論上での点の面積は0ということになっている。0はいくつ重ねたり足したりしても0ですから、永遠に一次元(線)にはならないはずなんですけどね。まあ現実世界では、点はいくら小さくても面積は必ずあるので、あくまで理論上の矛盾ですが。

:そう言われてみればおかしいですね。
:まあ、これもさまざまな議論があると思うので、門外漢である私は詳しいことは言えませんが。

:それにしても宮島永太良さんは「形」と聞くとこういう数学的な思考から入るのでしょうか。
:いいえ、特にそういうわけではありません。ただ形というものを考える場合、まず三次元から考えると分かりやすいと思います。先ほど私は二次元に縁があると言いましたが、それも三次元から考える方が良いかと思います。

 



:つまり立体ですね。
:はい、私たちは一応、三次元の世界に住んでいるとされています。一応というのは、これから四次元の世界に住む人が現れないとも限らないからです。デジタル、インターネットがこれだけ発達した世の中では、そこに四次元という世界への入り口がある可能性もないとは言えないからです。それはさておき、三次元と言えば、セザンヌが昔言った「自然を全て円錐、円柱、球からとらえよ」という言葉が印象的です。

:セザンヌも大胆な言い方をしましたね。
:あくまでも自然なので、人工のものは対象になってはいないと思いますが。セザンヌは画家だったので、やもすれば平面的になってしまいがちな絵に対して、立体の再現だということを後裔たちにわからせたいと考えたのかもしれません。その意味では前回お話しした自然の中の色を追い続けたモネとは性質が異なるといえます。

:宮島さんも絵を描く上で立体ということは気にされていますか。
:はい、ただ、セザンヌの時代と違い、その後、抽象絵画もできた今の世の中では、全てのモチーフを立体で捉えないといけないというわけではないと思います。私の場合、具体的なもの、例えば建物とか山とか描く場合は、やはり実際のものの向こう側はどうなっているのか、ということは考えることも多いです。しかし抽象的なものを書く場合は、完全な平面として考えることの方が多い。むしろ私の場合、絵の中のモチーフというよりも、絵そのものの立体性を考えることが多いです。

:「絵そのもの」ですか。
:はい、私の場合、パネルや張りキャンバスに絵を描くことが多いのですが、どうしても支持体(注)そのものを意識してしまうのです。みんなに見せるのは表面に描かれた絵であっても、結局パネルであれば横もあるし裏もある立体なんだと。

 



:宮島さんの絵画作品のほとんどがサイドペイントまでしてあるのはそうした理由なんですね。
:はい、よくそこまで見ていて下さいました。結果的に、みんなに見せる絵の部分しか意識しないままだと、作品が未完な感じがしてしまうのです。こうした考えは私のみならず、現代美術に携わっている多くの人に共通するでしょう。現代美術では、昔よりも平面と立体の差が近づいているように思うのです。大昔は絵画はあくまで平面の絵画、彫刻はあくまで立体の彫刻、といった観念だったと思うので。

:何が現代美術以降そうさせたんでしょうね。
:やはり、絵画が「絵画しかできないこと」を追って来た過程で自然にそうなっていったのではないかと思います。

(注)支持体(しじたい、Support):絵画の塗膜を支える面を構成する物質、絵の具を乗せるときの紙やキャンバスなどのこと。本来は塗装の用語であり、これは絵画が塗装の特殊な一形態であることを物語っている。  参考:Wikipedia 


  

 

  
Copyright © 2010- Eitaroh Miyajima. All Rights Reserved.