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アートが気になるインタビュアーが宮島永太良を探る!

 

「宮島永太良研究」第12回

=アートが気になるインタビュアー/A=宮島永太良

:前回から、宮島さんの作品をそれぞれの要素に分解してお話しをお聞きしようという試みを始めました。「色」「形」「モチーフ」「タイトル」など、作品にはそれぞれ大事な要素がありますが、まず「色」のお話から入っていきました。宮島さんが幼少の頃、赤系の色を塗りたかったという話もうかがいましたが、特に赤系の色だけに魅せられたというわけではないとのお話でしたね。
:はい、そうです。よく「最も好きな色はなんですか」と質問されることがあるのですが、それは「いつ頃から絵を描き始めましたか」と言う質問と同じくらい難しい質問なのです。

:と言いますと?
:色には非常に大きく分けて、6つの色合いがあります。赤、橙、黄、緑、青、紫ですね。これらを専門用語で色相といいます。

:宮島さんはその全ての色相(色合い)が好きということすね。
:はい、そういうことになります。なので上記のような質問を受けた場合は「赤ではこんな赤が好きです」「緑ではこんな緑が好きです」という答えしかできないのです。

:それは答えとしてはユニークですね。色相の中にはまた様々な色がいますからね。ところで、白とか黒はどうなのでしょうか。
:あれらは色相とは別のものになります。より皆さんに理解いただくために、色の基本的なお話をしますと、まず色には有彩色と無彩色があるということです。まず有彩色からいいますと、先ほどの「色相」に加え「明度」「彩度」という要素も加わってきます。

:私も中学校の美術の時間で、「色相」「明度」「彩度」など習った覚えがあります。
:はい。色を学ぶ上での基本です。簡単に言えば、「色相」というのは先ほども言った色合いのこと、「明度」は明るさ、「彩度」は鮮やかさのことです。普段、絵具などでよく使う身近な色を使って表にしてみると分かりやすいと思います。

これらはあくまで目安的なものですが、「明度」「彩度」「色相」というのをなんとなくわかっていただけると思います。

:有彩色とは明度、彩度の高低に関係なく、色味を帯びたものと言えるでしょう。ではその反対に、色味がないのが無彩色ということですね。
:はいそうです。白からグレーを通して黒になって行く過程では「明度」しか存在しません。しかしながら白と黒の間は全てグレーであり、その濃淡によってグレーは限りない種類存在します。

:やはり宮島さんは無彩色も好きですか。
:そうですね。例えば黒と一口に言っても「この黒は本当にいい色だなぁ」と思うよなのもあります。白も同様です。

:美しいと思う色はその「血筋」に関係なく好きということでしょうかね。
:先ほどグレーは限りない種類存在すると言いましたが、では白および黒が一つしかないかというとそうではありません。色彩学では便宜上、一つしかないように扱われていますが、実際の外部風景では、明らかに見栄えの違う白や黒が存在します。墨汁の黒、海苔の黒、胡麻の黒、パトカーの下の部分の黒、懐かしの機関車の車体の黒など、全てが異なる黒といえるでしょう。

:そう考えると、色彩学で扱う色というのは仮のものなんでしょうか。
:それは言えます。色彩学のカラーバランス等、限られた色でしかない。実際には、この世に同じ色のものなど二つとない、とまで言えてしまうかもしれないのです。究極のところ、色というもの自体、確固とした存在ではないと思います。私たちは、可視光線の中で色を感じているだけであり、それはまた光によって変化するのです。

:可視光線というと、虹として見える色でも知られていますよね。
:そうです。要するに光によって色は違って見えるということであり、それを最初に作品として提示したのは印象派の画家たちでしょう。

:モネの「睡蓮」などはその代表でしょうかね。
:私もかつて、パリのオランジュリー美術館でモネの「睡蓮」の大作を見ましたが、時間によって刻々と異なる色を見せる睡蓮の表情が、感動的でもありました。明け方の光、昼間の光、夕方の光など、それぞれが違った色の見せ方をしています。

:「睡蓮」の作品にはなかったと思いますが、夜の場面を描いたらほぼ何も見えないですね。
:そうですね。たとえば草であれば、昼間は緑でも夜は黒く見える。普段私たちがイメージしている「物の色」は、太陽光のもとの色でしかないわけです。それがいわゆる「固有色」というものですが、果たして固有色が本当にその物の色なのか、時々疑問に思うことがあります。究極を言えば、固有色とは便宜上のもので、本当は、色というのはとてもうつろい易いものなのではないでしょうか。

:色に対してのとりあえずの結論が出たところで、次回は「形」に関してのお話を聞きたいと思います。


  

 

  
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