Story : 詩と作品
連載54回 窓の外…
窓の外にはいつもの風景が
もう何時間飛んだのだろうか。
いつの間にか、懐かしい場所に帰ってきていた。
発った時のこと、なんとなく憶えている。
しかし、それからさまざまな記憶が
頭の中を巡っていた。
今まで自分はどこでどうしていたのか。
気がつけば、小さな部屋の中。窓の外には
どこかで見たような景色が、虹とともに輝いている。
そして隣にはあの人の姿が。
もう何年会っていなかっただろうか。
涙が止まらなかった。
決して忘れたことのなかったその姿。
「涙を流すまでよく頑張った」
その人は言ってくれた。
目が覚めると、同じような小さな部屋の中。
窓の外にはいつもの景色が。
今年もまた桜が咲き始めている。
あの人の記憶をよみがえらせるように。
「仄めく色」
宮島永太良