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アートが気になるインタビュアーが宮島永太良を探る!

 

「宮島永太良研究」第11回

=アートが気になるインタビュアー/A=宮島永太良

:前回までは、宮島さんの幼少時代の出来事と、制作の源にかかわるお話をお聞きしてきましたが、今回からは、宮島さんのこれまでの作品の様々な要素について、個別にお話をしていただこうと思います。それは「色」であり「形」であり「モチーフ」であり「タイトル」でありと、様々に分解できるのですが、まずは色についてお願いしたいと思います。
:はい、まずは「すべては色から始まる」というのが持論です。

:それはどのような意味ですか?
:私自身のことだけでなく、一般的な話です。形はあっても、色がなければ認識されないでしょう。逆に虹のように形はなくても、色があれば認識されるのです。

:本当に色が無ければわかりませんよね。透明なコップは、透明という色がついているから認識されるんでしょうね。
:まさにそうです。私が絵を好きで書くようになったと思われる理由は、前回までもいろいろお話ししましたが、大きな理由の1つには「色が好きだった」ということがあります。

:「色」というと具体的には?
:やはり、少年時代に使っていた、教育用画材の影響は大きいです。ある程度の年齢になると、絵を描いている時、今塗っているのは何という名前の色なのかが気になるようになってきます。もちろん、赤、青、黄色など基本の色は幼い頃から知っていたのですが、朱色とか藍色とかいう色名が、クレパスなり絵具なり色鉛筆などに記してあることが興味深かったのです。

:そうですね。色数が多くなればなるほど、いろいろな色名がつけられますからね。
:はい。専門家が使う画材等では色名ではなく番号で色を記してあるものもあります。市販の色見本カード等と同じ方式ですが。また全てが洋色名で示されている商品もあります。しかし、日本人の学校の生徒が使うには、やはり日本語の具体的な和色名を用いたほうが理解しやすいので、そうしているのでしょう。

:宮島さんも和色名に一番愛着がありますか。
:はい。だいたいの画材は和色名とともに洋色名も併記してありますが、私も日本人なので、和色名の方が圧倒的に魅せられました。

:そうした感覚は、色そのものを楽しむというよりも、色を中心とした言葉の楽しみともいえるでしょう。
:その通りです。言葉は重要で、どこの国でも必ず色にはその国の言葉で名前が付けられているわけです。先ほど画材には和色名と洋色名が併記されていると言いましたが、それは正確に対比できるものではなく、近い色を当てはめているんだと思います。なぜなら各地域ではそれぞれ異なった色彩文化が存在しているからです。先ほど言った市販の色見本カードというのは「和」「中国」「欧州」などと地域別に分かれていて、それぞれが異なった色合いを見せています。

:そうなんですね。そういえば各国によって人の目の色も違いますね。
:それは大きいと思います。例えばよく月を「青い」と表現することがありますが、私たちが見ている月は決して青くはなく、どちらかと言えば黄色いはずです。かつて人に聞いたことがあるのですが、月を青と表すのは欧米の人(青い瞳の人)の表現が一般化したもののようなのです。地球から見える月の色というのは太陽光が反射した状態、つまり光を見ているわけです。光というのは固有色があるわけではないので、見る人の瞳の色に左右される。青い瞳の欧米人が見ると青っぽく、茶色い瞳の日本人が見ると黄色っぽく見えるらしいのです。アメリカに「ブルームーン」というタイトルの曲もありますが、それはまさしく欧米人が見た月のことを歌っているのでしょう。

:なるほど、それがそのまま日本に転用されると「月がとっても青いから」等となるわけですね。
:私も、日本語でのそうした歌詞を不思議に思っていました。話を戻すと、こうした一例からもわかるように、世界各地域での色の見え方、感じ方はおのずと違ってくるのです。

:では日本人としての宮島さんがインスピレーションを得た色はどんな色でしたか。
:子供の頃使った絵具に入っていた「スカーレット」という色に思い出があります。

  

題:Broken Ball

:それはまた洋色名ですね。
:はい、日本の画材は基本的に色名は日本語を用いていますが、色彩そのものは西洋色の流れを組んでいるようです。なので中にはどうしても日本語で表現できない色もあります。スカーレット(注1)もそんな一つですが、偶然この色を好きになり、何とかこの色を使った絵が描きたい。それで家の中に近い色の物を探したところ、こたつの布団がそんな感じだったので、喜んで描いたことがあります。

:絵に描きたいモチーフを描いたのでなく、逆に色を塗りたくてモチーフを選んだのですね。
:そうです。後で理解しましたが、この順番はフォーヴィズム(注2)と同じだったのです。ルオーやヴラマンクとかは、極彩色を絵に使いたいために、そんな色のモチーフを選んで描き、さらには空や地面でさえ、一般的に使われる色を無視して自分たち特有の激しい色を塗り続けました。

:歴史的な美術の世界でも、やはり同じ感覚を持つ人がいっぱいいたということですね。先ほどのお話からすると、宮島さんはやはり赤系の色に魅せられるのでしょうか。
:それがそうとも言えないんです。

:では次回はそのあたりを詳しくお聞きしましょう。


(注1)  スカーレット:日本語では「緋色」と訳すこともある。
 (注2)フォーヴィズム:20世紀初頭、フランスの反アカデミー派の画家たちによる、 革新的絵画運動。激しい色彩から「野獣派」とも呼ばれる。

続く… 

 

(写真:関 幸貴) 
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