TOPTalk : 対談

<特別企画>米農家から作ることを考える!
農林水産省よると2018年度の日本の国内自給率はカロリーベースで37%。
その中で米の自給率は98%の優等生、だが米農家は前途多難だと言う。
米作りの今を茨城県取手市の米農家4代目、横田三良さんが語った!

 
 
シモン楽騎さん
 

◇横田三良(よこたみつよし)さんプロフィール

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村岡ケンイチさんspace
米農家、クレーンオペレーター。
1964年 茨城県取手市生まれ、蠍座、AB型。
1984年 東京デザイナー学院 インテリアデザイン科卒業。
シモン楽騎(アキラ)さんや宮島永太良とは旧知の仲。
トローリング(海釣り)、スキーから音楽美術鑑賞まで
アウトイン問わず多趣味。
小型船舶1級免許所持。    






☆取手の田んぼを見ながら横田三良さんが米作りの今を語った! 前編

月刊宮島永太良通信編集部(以後M):今日はよろしくお願いします。最初の質問です。横田さんはいつ頃から米作りに関わっていましたか?
横田三良さん(以後Y):私で米農家4代目ですから、子どもの頃から親の手伝いで農作業はしていました。今よりも人の力が必要だったので子ども戦力になり得たのです。でも、その頃、田んぼに入れば泥だらけの姿になり、その様子を通りすがりに好きな女の子に見られた時は恥ずかしかったですね。

シモン楽騎さんの作品

M:それ微妙な空気感ですね。で、子どもの頃から農業を継ぐつもりだったのですか?
Y:そうではありません。兄が一人いるのですが、色々あって家庭の事情で次男の私が継ぐことになりました。最初は抵抗がありましたが、自分自身で徐々に気持ちを農業に向かうように慣らしていきました。

M:では、専門学校を卒業してから、すぐに農業に従事したのですか?
Y:いいえ、学生時代も農作業の手伝いをしていましたが、卒業してからは、レストランやブティックの設計改装など店舗内装を行う会社に入り数年働きました。でも、しばらくすると…

M:しばらくして、どうしたのですか?
Y:インテリアや内装より自分にとっては、昔から好きで興味のあるヨットの仕事をしたくなり転職、愛知県豊橋市にある造船所などで働きました。その関連で技術的にヨットと関係したFRP(繊維強化プラスチック)で造形の仕事もするようになり、各地のテーマパーク、ハウステンボスの仕事のため長崎県佐世保市では2年間過ごしました。そんな感じで日本国内を動いていたので、小型船舶1級免許も取得。先日、下田で行われたトローリング大会には、静岡県の友人知人たちのグループに入って参加しました(笑)。

シモン楽騎さんの作品

M:クルーザーとは、稲作と縁遠い世界ですね。いつ頃、ここ取手の実家に戻ってきたのですか?
Y:1995〜96年、私が31〜32歳頃だったと思います。

M:帰郷して、まず最初に何をしましたか?
Y:大型クレーンオペレーターの免許を取得して、クレーン会社に就職しました。まず、経済的には農業だけでは食べていけないので就職したのです。それで、クレーン会社はある程度、仕事の進行の一定程度把握ができ予定が組みやすく、農作業をするうえで都合が良い職種なので、兼業の農業従事者の職場でもあるのです。

M:では、現実的な質問をさせていただきます。横田さんの田んぼの広さはどれくらいですか?
Y:取手市と龍ケ崎市に大小の田んぼが12ヶ所に分かれて点在、総面積は*4町弱(=東京ドーム約3個分)です。この辺りでは、やや大きい方ですが、それを母と私と二人で世話しています。

シモン楽騎さんと宮島

M:たった二人ですか?
Y:はい、不足分は農業機械で補っていますが、母との二人三脚でやっているので、残念ながら、未来はそう明るくはありません。

M:米作り農家の作業内容は?
Y:作っているのはコシヒカリです。それで、例年ゴールデンウィークの5月初旬に行う田植えと、9月の収穫が二つの大きな作業になります。それに加えて、日々の田の水管理、除草、7月に行う追肥、それ以外にも細かいことはありますが、田植えと稲刈りに関しては、点在する田んぼや天候の様子を見ながらタイミングを計って行い、長年の勘が必要になるのでそう簡単ではありません。

シモン楽騎さん

M:稲の収穫はどのくらいあるのですか?
Y:一般的に1町の10分の1になる1反で8俵(1俵=60kg)と言われています。そして、2018年の相対取引価格は全国平均は15,763円。だから、ウチの田んぼの広さから生産量を計算すれば、大雑把な売り上げが判ると思います。ただ全ての米を組合に出すわけではなく、多くはありませんが私がお客様に直売するケースもあります。

M:現状では、やはり米だけでは暮らしていけませんか?
Y:無理ですね。20年間使用する農業機械のランニングコストだけで年100万円、それに肥料、燃料、水利費等を合わせるとそれだけでも約200万円、他にも経費は色々かかりますからね。

M:昔はどうだったのですか?
Y:私が20代の頃は、1俵60kg=20,000円、今の感覚でいうと35,000円ぐらいだから、米だけで生活できたと思います。それが1995年の米の自由化で価値が半分になってしまったのです。だから、経済的に考えれば、今は米を作るより買った方が生活は楽だと思います(笑)。

M:想像以上に米農家の大変さが伝わって来ました。

  
宮島永太良

*1町 ≒ 9917.36 u 1反 ≒ 991.736 u
*写真は5月11日に横田さんの田んぼで初めて行われた体験田植えの様子。

 

後編へ続く…

 
(構成/関 幸貴 写真/世紀工房)
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