Story : 詩と作品
連載49回 終わりと始まり…
それは終わりであると同時に、新たな始まりであった
世界にまたひとつ朝が来るころ、
人間社会からあふれ出した帆船がひとつ
標のない旅に立った。
思い起こせば厳しい毎日だった。
船は使われれば使われるほど、
本体は衰えてくる。
ならばいっそのこと、
誰にも拘束されない旅に出ようか。
その思いが本当のものになった時、
彼はたった一人になった。
何を目指して進んで行けばよいのか、
今は誰も教えてくれない。
太陽だけが、優しく自分を照らしてくれるだけ。
自分よりはるか先にも、
たった一人で航海している船がいるという。
彼は何を目指して進んでいるのだろう。
それを教えてもらうため、
いつか必ず会おう。
今までいた場所へ別れを告げての船出。
それは終わりであると同時に、
新たな始まりであった。
「暁の船出」
宮島永太良