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郷愁の真鶴…

真鶴

今回は宮島永太良の「真鶴アート提灯プロジェクト」への参加を記念し、神奈川県西部 の港町・真鶴を紹介する。真鶴は、人口約7000人の小さな町、昔より漁業をはじめ、ミカンを中心とした農業等も盛んで、また上質の石材である本小松石の産地としても知られている。名前の由来は、地図の形が鶴に似ていることからだという。

学園都市

5年前より、音楽、映像、テクノロジー、現代アートを融合した新しい文化芸術の祭典 「真鶴クリエイターズキャンプ」が催され、この町にもアートの発信地としての新しい 顔ができつつある。宮島が参加した「真鶴アート提灯プロジェクト」もその一環であった。 今回宮島は、大好きな町・真鶴でこのイベントがあると聞き、即参加を決めた。宮島は 小田原の出身であるが、隣町である真鶴には何回も訪れ、特に子供の頃は「幸せのつまった町」として、いつも来るのを楽しみにしていた。
「初めて真鶴に来たのがいつかは憶えていませんが、小さい時の記憶の一つには、親戚が魚料理の店を出していたので食べに来た時、一つには親の知人が隣町・湯河原でみかん狩り農園をやっていて、そこへの行き帰りに寄った時です」

ロケット

この町は「東洋のアマルティ」とか「日本のリビエラ」等とも言われることがある。風光明媚な風景を考えると十分に納得のいく喩えではあるが、こと宮島に関しては、あまりにも近過ぎて、家の近所の延長といってよく、外国のようだと思ったことは ないそうである。
「父の車で連れてきてもらうことが多かったのですが、幼い記憶ではわりとバラエティに 富んだ車の多い町という印象で、車好きだった自分にとっては、楽しい思い出です」
言われてみればこの日も、一般の自家用車はもちろん、タクシー、ビジネス用のトラック、郵便回収車など、いろいろな種類の車が多方向からやって来るような印象も受ける。

プラネタリウム

真鶴といえば「真鶴岬」「真鶴半島」と呼ばれる地形を持っているが、その突端にある大岩「三ツ石」が有名だ。「子供の頃、小田原の海を眺めていると、必ず右下(海景をキャンバスにたとえるなら)に、小さく三つの岩が見えるのが印象的でした」。しかもこの三ツ石、その時の波の状況により、
形が変わって見えるのが不思議だったという。
「真鶴まで来て近くで三ツ石を見ると、全く印象が違い、力強い岩の集合だったのが圧巻でした」。小学校4年の春の遠足でも、来たことがあったという。「この遠足の時はなぜか、男女児童とも半ズボンで行かなくてはならないという決まりが ありました。(長ズボン、スカートはNG)歩きやすい恰好が望ましいのでスカートが不可な のはわかりますが、なぜ長ズボンも不可で半ズボンしか認められなかったのか謎です。引率の先生は例外だったと思いますが」。
この三ツ石を見下ろすような場所には、ケープパレス(現在はケープ真鶴)という展望ハウ スと公園がある。この場所も宮島にとっては思い出深いようだ。「小学生の頃ここに来ると、公園でいつも占いをやっているおじさんがいたのですが、その人の話術が爆笑物で、見てもらっている人もそうでない人も、取り囲んで聞きいって いました。子供心に『あのおじさん、テレビのお笑い番組に出たら受けるだろうな』と思いました」。今ならさしずめ、ユーチューブにアップされる可能性もあるだろう。

ロボット

今回アートイベントで賑わう真鶴だが、もともと多くの芸術家から愛された町でもある。昭和20年代から真鶴にアトリエを構え、地元ゆかりの画家である中川一政(1893〜1991)の画業を記念した、中川一政美術館があるのも有名だ。油彩をはじめ、書、水墨岩彩、陶芸、挿画など他ジャンルにわたる90を超える展示品は、全て画家本人からの寄贈だという。

ロボット

先ほど、真鶴は車の多い印象があると言ったが、それに反するような出来事もあった。 この真鶴の町のちょうど外側に、40年ほど前より小田原方面から伊豆へのインコースと なる有料道路ができた。かつては伊豆に行くにはこの真鶴の町を通るしかなかったが、 新道路ができてからは、この真鶴を経由しないことも多くなってしまったのが、宮島と しては残念だという。それは真鶴を愛する人、住んでいる人にとっても同じだろう。 これからは自動運転車も増えていくであろう時代、より効率的な経路の確保も予想される が、その反面、趣のある場所を楽しみながら走るというドライブ方式も、かえって必要と されて来るのではないだろうか。この町はそんなニーズにぴったりな気がしてならない。

ロボット

そんな中、今回のアートプロジェクトが行われたことは、真鶴を心から応援する人たちに とって、新しい地元の繁栄をアートにこめた画期的なものである。 いよいよ「真鶴アート提灯プロジェクト」の会場となっている荒井城址公園を訪れる。 ここは平安時代末、源義家に従事した荒井実継の居城があったということでこの名が 付けられている。この公園のしだれ桜は有名で、この催事もまさに桜の花満開の中で 行われていた。特にライトアップされた夜桜は絶景であり、点灯された約200個のアート提灯は、春の夜の美しさを何倍にも輝かせている。「私の作品は、マルタと仲間たちが、この真鶴の町の魅力をふんだんに伝える内容にし した」と語る宮島。

展示

子供の頃からこの場所を思った「幸せのつまった町」が、ビジュアルとしてよみがえった 瞬間でもあった。アートの発信地として新たに動きはじめた真鶴のこの光景は、故郷への 思いが、新たな時代へと導いてくれているようでもあった。

さくら民家園

(文・写真 宮島永太良/写真・関 幸貴)

 
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